レンズは欠陥をどれだけ鮮明に写すかを決め、照明は欠陥にコントラストがあるかを決める。 コントラストが無いものは、どんな高級レンズでも、どんな AI でも見えない。 外観検査でいちばん効く技能はここにある。
幾何(同軸/リング/ドーム/暗視野/バックライト)の数値的な選定は
optics/guides/optics_imaging.md の「照明設計」節が扱う(illumination_design /
defect_contrast / lighting_sweep が第一原理でコントラストを計算する)。
この文書はその外側 —— 機器と現場の実務 —— を書く教材である。
optics_imaging.md へ)| 欠陥・目的 | 効く照明 | 理屈 |
|---|---|---|
| 鏡面の凹凸・刻印 | 同軸 | 正反射をそのままカメラへ返し、傾いた面だけ暗くする |
| 一般的な表面 | 高角リング | 汎用。まずここから試す |
| 荒れた欠陥(欠け・ピット・微細傷)・異物 | 低角リング(暗視野) | 散乱成分だけを拾う。平面は暗く、荒れた所だけ光る |
| 光沢のある曲面・顔料の色 | ドーム | 全方位から照らして正反射のムラを消す |
| 輪郭・寸法・穴 | バックライト | 形だけを見る。表面の模様に邪魔されない |
| 方向性のあるテクスチャ | バー(斜め) | 影で凹凸を強調する |
注意: 「暗視野なら傷が光る」は荒れた側面を持つ傷の話。
なめらかに傾いただけの面(例: 10°)は暗視野では光らない —— 低い光をカメラの外へ
鏡面反射するだけだからである(defect_contrast が数で示す)。
| 方式 | 光量 | 使いどころ |
|---|---|---|
| 連続点灯 | 定格どおり | 静止物、単純な構成。熱が定常に達するまで明るさが動く(§6) |
| ストロボ(パルス) | 連続と同程度 | 動体ブレを止める。露光と同期して短く光らせる |
| オーバードライブ | 大きく増える(条件により定格の 10 倍程度) | 光量が足りない・高速搬送・偏光で暗い、を一度に解く |
オーバードライブの要点(一次情報は照明メーカーのアプリケーションノート):
inspection_dataset(intensity_jitter=...) に入れておく。ランプとランプシステムを 4 つのリスクグループに分類する規格。
| RG | 意味 | 目安 |
|---|---|---|
| RG0(免除) | 危険なし。長時間見ても害はない | 連続被ばく ~10,000 s まで |
| RG1(低リスク) | 限られた時間なら害はない | ~100 s |
| RG2(中リスク) | 瞬目反射など自然な回避反応があるため通常は傷害に至らないが、短時間でも不快 | ~0.25 s |
| RG3(高リスク) | 短時間でも危険。特に近距離 | — |
| 要素 | 今あるもの | 足りないもの |
|---|---|---|
| 幾何 | light_source / light_spec(ring / dome / bar / coaxial / backlight)、illumination_design |
— |
| 波長 | light_spec(wavelength_nm, bandwidth_nm)、light_wavelengths |
実分光分布、蛍光(励起 → 発光の波長変換) |
| 偏光 | light_spec(polarization=)、jones_* / mueller_* op |
照明 → 表面 → 受光の偏光を通したレンダリング |
| 点灯方式 | 無し | ストロボ/オーバードライブ、露光との同期ずれ |
| フリッカ | 無し | ラインスキャンのビート縞(実機の主要な故障モード) |
| 経時変化 | inspection_dataset(intensity_jitter=) で振れる |
熱による系統的なドリフト(ランダムでなく単調) |
| 安全 | 無し | リスクグループの計算 |
| レンダリング | illumdesign は点光源の和 |
多重反射・相互反射なし、異方性 BRDF 未対応 |
| 症状 | まず疑う | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 欠陥がまったく見えない | 照明の幾何が合っていない | illumination_design(surface, defect) で候補を出し、上位から実機で試す |
| 傷は見えるが平面もギラつく | 正反射がカメラに入っている | 偏光板を直交に入れる、または仰角を変える(lighting_sweep) |
| なめらかな傾き欠陥が暗視野で光らない | それは正常。暗視野は荒れに効く | defect_contrast の regime を見る。topographic なら暗視野は不適 |
| 画像に横縞が出る(ラインスキャン) | PWM 調光と外光のビート | 調光を定電流に、遮光、露光を周期の整数倍に |
| たまに暗い画像が混じる | ストロボとカメラ露光の同期ずれ | トリガ信号をオシロで見る。連続点灯にして再現するか確認 |
| 朝と夕方で判定が変わる | 外光の混入 | 遮光して再現するか。バンドパスフィルタを入れて比較 |
| 立ち上げ直後だけ合格率が高い | LED が熱定常に達していない | 電源投入から 60 分、10 分おきに標準板を撮って輝度を記録 |
| 数か月で徐々に閾値を外れる | LED の経時低下 | 標準板の輝度を履歴で見る。定期校正を運用に入れる |
| 露光を伸ばせず光量が足りない | 連続点灯の上限 | オーバードライブ対応の電源に替える(デューティ 10% 以内) |
| 作業者が眩しいと言う | リスクグループ | RG を確認し、覗き込み位置での被ばくを見直す |