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照明の実務知識 — 波長・偏光・点灯方式・外光・安全

レンズは欠陥をどれだけ鮮明に写すかを決め、照明は欠陥にコントラストがあるかを決める。 コントラストが無いものは、どんな高級レンズでも、どんな AI でも見えない。 外観検査でいちばん効く技能はここにある。

幾何(同軸/リング/ドーム/暗視野/バックライト)の数値的な選定optics/guides/optics_imaging.md の「照明設計」節が扱う(illumination_design / defect_contrast / lighting_sweep が第一原理でコントラストを計算する)。 この文書はその外側 —— 機器と現場の実務 —— を書く教材である。


1. 幾何の早見(詳細は optics_imaging.md へ)

欠陥・目的 効く照明 理屈
鏡面の凹凸・刻印 同軸 正反射をそのままカメラへ返し、傾いた面だけ暗くする
一般的な表面 高角リング 汎用。まずここから試す
荒れた欠陥(欠け・ピット・微細傷)・異物 低角リング(暗視野) 散乱成分だけを拾う。平面は暗く、荒れた所だけ光る
光沢のある曲面・顔料の色 ドーム 全方位から照らして正反射のムラを消す
輪郭・寸法・穴 バックライト 形だけを見る。表面の模様に邪魔されない
方向性のあるテクスチャ バー(斜め) 影で凹凸を強調する

注意: 「暗視野なら傷が光る」は荒れた側面を持つ傷の話。 なめらかに傾いただけの面(例: 10°)は暗視野では光らない —— 低い光をカメラの外へ 鏡面反射するだけだからである(defect_contrast が数で示す)。


2. 波長の選択 —— 実務でいちばん効く自由度


3. 偏光


4. 点灯方式 —— 連続 / ストロボ / オーバードライブ

方式 光量 使いどころ
連続点灯 定格どおり 静止物、単純な構成。熱が定常に達するまで明るさが動く(§6)
ストロボ(パルス) 連続と同程度 動体ブレを止める。露光と同期して短く光らせる
オーバードライブ 大きく増える(条件により定格の 10 倍程度) 光量が足りない・高速搬送・偏光で暗い、を一度に解く

オーバードライブの要点(一次情報は照明メーカーのアプリケーションノート):


5. フリッカとビート —— ラインスキャンで致命的


6. 経時変化と保守


7. 安全(IEC 62471)

ランプとランプシステムを 4 つのリスクグループに分類する規格。

RG 意味 目安
RG0(免除) 危険なし。長時間見ても害はない 連続被ばく ~10,000 s まで
RG1(低リスク) 限られた時間なら害はない ~100 s
RG2(中リスク) 瞬目反射など自然な回避反応があるため通常は傷害に至らないが、短時間でも不快 ~0.25 s
RG3(高リスク) 短時間でも危険。特に近距離

8. 外光と迷光の実務


9. fullseye での現在地(正直に)

要素 今あるもの 足りないもの
幾何 light_source / light_spec(ring / dome / bar / coaxial / backlight)、illumination_design
波長 light_spec(wavelength_nm, bandwidth_nm)light_wavelengths 実分光分布、蛍光(励起 → 発光の波長変換)
偏光 light_spec(polarization=)jones_* / mueller_* op 照明 → 表面 → 受光の偏光を通したレンダリング
点灯方式 無し ストロボ/オーバードライブ、露光との同期ずれ
フリッカ 無し ラインスキャンのビート縞(実機の主要な故障モード)
経時変化 inspection_dataset(intensity_jitter=) で振れる 熱による系統的なドリフト(ランダムでなく単調)
安全 無し リスクグループの計算
レンダリング illumdesign は点光源の和 多重反射・相互反射なし、異方性 BRDF 未対応

10. 診断表 —— 症状から原因へ

症状 まず疑う 確かめ方
欠陥がまったく見えない 照明の幾何が合っていない illumination_design(surface, defect) で候補を出し、上位から実機で試す
傷は見えるが平面もギラつく 正反射がカメラに入っている 偏光板を直交に入れる、または仰角を変える(lighting_sweep
なめらかな傾き欠陥が暗視野で光らない それは正常。暗視野は荒れに効く defect_contrastregime を見る。topographic なら暗視野は不適
画像に横縞が出る(ラインスキャン) PWM 調光と外光のビート 調光を定電流に、遮光、露光を周期の整数倍に
たまに暗い画像が混じる ストロボとカメラ露光の同期ずれ トリガ信号をオシロで見る。連続点灯にして再現するか確認
朝と夕方で判定が変わる 外光の混入 遮光して再現するか。バンドパスフィルタを入れて比較
立ち上げ直後だけ合格率が高い LED が熱定常に達していない 電源投入から 60 分、10 分おきに標準板を撮って輝度を記録
数か月で徐々に閾値を外れる LED の経時低下 標準板の輝度を履歴で見る。定期校正を運用に入れる
露光を伸ばせず光量が足りない 連続点灯の上限 オーバードライブ対応の電源に替える(デューティ 10% 以内)
作業者が眩しいと言う リスクグループ RG を確認し、覗き込み位置での被ばくを見直す

出典