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これは小惑星 25143 イトカワの実形状モデル(はやぶさ探査機の観測から作られた Gaskell 形状モデル、JAXA DARTS アーカイブ公開、49,152 面を間引かずそのまま)の周りを、本記事の主役 Fullseye の自作 3D レンダラのカメラと太陽が一周しているところです(位相角 45° 固定)。形状の読み込み、辺長 1.5 m への適応テッセレーション(幾何は不変)、波長ごとに帯域制限した起伏、べき則 D^-3.1 で撒いた角ばった岩、Hapke 反射則、太陽の視直径ぶんのレイキャスト影まで、すべて numpy の自前実装(環境光ゼロ、露出は全フレーム共通)。
↑ 同じ形状モデルの物理ベース版の静止画(位相角 55°)。上の GIF は Lambert 拡散 + 環境光 + 台座つきのスタジオ照明でしたが、こちらはレゴリスの測光にそろえました —— 反射則は Hapke(単一散乱アルベド 0.42、対向効果、平均傾斜角 26°。Lambert だと縁が暗く明暗境界がなだらかになるのに対し、小惑星の実画像は縁まで明るく平坦です)、影は太陽の視直径 0.53° でメッシュにレイを飛ばした硬い影(半影は幾何どおり数 cm)、環境光はゼロ(宇宙に空光は無いので影の底は地形の一回反射だけ)。凹凸が見えるように作り直した版(2026-09-03): 元の 49,152 面は辺長が 2.6〜14 m と不揃いなので、まず mesh_subdivide で幾何を一切変えずに(面積・体積の相対誤差 0)辺長 1.5 m 目標の適応テッセレーション(432,550 面)にし、起伏は mesh_displace_spectrum で波長ごとに帯域制限(その場所の面サイズの 2 倍より短い波長は変位せず bump_normals_fbm の法線側へ回す ——粗い所に細かい起伏を刻んでも面のノイズになるだけなので)、岩は mesh_scatter_boulders(shape='hull') の角ばった凸包 2,909 個(N(>D) ∝ D^-3.1、Michikami et al. 2008、30〜60 % 埋没、首の「海」には撒かない)、露出は照らされた面の中央値を 0.45 に(前の版は 0.74 で飛び気味)。起伏コントラストは 0.034 → 0.081(AMICA 円盤尺度で 0.090。AMICA 実画像の 0.037 は位相角 8.8° なので厳密な比較ではありません)。すべて fullseye の op mesh_subdivide → mesh_displace_spectrum → terrain_region_mask → mesh_scatter_boulders → render_regolith の連鎖で、examples_3d/itokawa_regolith_hero.py が GT つきで再生成します。この「目」をどう作ってきたかの話をします。
この記事は「完成した自慢」ではありません。なぜこの形にしたのか・どこがまだ弱いのかを、追試できる粒度で残すものです。数字はすべて実測、限界は隠さず書きます。
まず1枚。これは Fullseye の 3D レンダラ(もちろん numpy 自前実装)が、SDF で作った形状に環境光遮蔽・ソフトシャドウ・ACES トーンマップまでかけて焼いた出力です:
絵そのものは差別化ではありません(この程度は DirectX で昔からできる)。違いは、同じシーンから depth・法線・AO・影が numpy 配列で返り、同じツールキットの op で真値つきに採点できること ―― ゲームエンジンではなく計測器です:
ここから先は、同じ静物・同じライブラリでできることを画像処理の分類順に並べます。順番は「作った日付」ではなく 光と形の関係の種類です。どれも真値つきで採点した実測値を付けてあります。
| 分類 | やっていること | 実測 |
|---|---|---|
| ① 合成と計測チャンネル | 描いた絵から depth・法線・AO・影を numpy 配列として取り出す | 境界で内部の 21 倍(sobel_mag(depth)) |
| ② 受動計測(光を当てて解く) | 複数照明の陰影から法線とアルベドを解く | 角度誤差 0.000°、再照明も 0.000° |
| ③ 能動計測(光を投げて測る) | 縞と符号を投影し、位相から三角測量する | RMSE 0.036 mm(奥行き 102 mm) |
| ④ 断層(中を見る) | 投影 → フィルタ逆投影で内部の減衰係数を戻す | Dice 0.882、μ 誤差 4.3〜16.6% |
| ⑤ 材質の見え方(構造色) | 回折・干渉・微小面から波長ごとの反射を作る | 薄膜は解析値と厳密一致、白は (1,1,1) |
| ⑥ 作り込みの過程 | 低品質だった hero をどう直したか | 5 段の改善履歴 |

(右下: depth を sobel_mag に通すと、レンダラ自身のシルエット境界で内部の 21 倍。op の出力を真値で採点する閉ループの最小例)
同じシーンを 6 方向の光で撮り(render_beauty)、photometric_stereo で法線を復元し、真値法線との角度誤差で採点 ―― 撮影・復元・採点が全部 Fullseye の op です:

さらに、復元した法線とアルベドだけで光を動かせます(左=復元のみ / 右=真値法線。ほぼ区別がつかない=中央値 0.000°):

(素朴な最小二乗は付着影で 4.5° 偏り、影+AO ありでは 16°。RANSAC 版は 0.000° / 影ありでも 0.04°)
そしてこの静物へ、構造化光スキャナを当てられます。投影機から相補 Gray code 20 枚 + 位相シフト 4 枚を投げた「撮影」を合成し、wrapped_phase(精密だが 2π 不定)と graycode_decode(粗いが絶対)を新しい absolute_phase で合流させて絶対位相にし、triangulate_column で視線と投影機コラム平面の交点を閉じた式で解いて深度に戻します ―― 撮影から復号・三角測量まで全部 Fullseye の op です:

ここが「絵」との分かれ目です。真値深度はレンダラ自身が z-buffer で持っているので、復元した深度を mm で突き合わせられます ―― 奥行き 102 mm のシーンで RMSE 0.036 mm・中央値 0.017 mm、Gray 復号の誤りは 36,011 画素中 0。零点も同じ撮影から測っています:Gray の整数コラムだけだと 0.073 mm(量子化で 2 倍悪い)、位相だけだと 2π 不定性で桁違いに壊れます。
実行できるサンプルは examples_3d/structured_light_scan.py(球+段差箱+床、22 枚)。奥行き 287 mm を RMSE 0.233 mm(0.081%)で復元し、Gray のみ 0.548 mm・位相のみ 209.8 mm の 2 つの零点を判別的に上回ることを assert しています。
最初の実行は RMSE 78 mm でした。
look_atが gluLookAt 規約(カメラは −Z を向く)で姿勢を作るのに対し、render_meshはそれを (x, −y, −z) に直してから K を掛ける(= CV 規約)。この差を飛ばすと投影機がカメラの背後を向き、深度は「もっともらしい大きさ」のまま全部間違う。零点(Gray のみ 79 mm)と数字が並んで初めて気づきました ―― 零点を一緒に測っていなかったら、たぶん通していました。
表面を測ったなら、次は中です。同じ静物をX 線 CT にかけます。SDF から中身の詰まった減衰係数ボリューム(材質 3 種)を作り、スライスごとに radon_transform で平行ビーム投影 → 光子数のポアソンノイズを載せる → filtered_backprojection で再構成 → 真値と突き合わせます:

横幅 30 mm・体素 0.210 mm・74 スライス × 180 ビュー。Dice 0.882(適合率 0.79 / 再現率 1.00)、μ の復元誤差は Ti 4.3% / PMMA 6.3% / Al 16.6%。零点はランプフィルタ無しの単純逆投影 0.492(その手法に最も有利なしきい値で採点)、24 ビュー FBP 0.452 で、実手法が 1.8〜2.0 倍上回ります。
正直な内訳を 2 つ: (1) 取りこぼしはほぼゼロ(再現率 1.00)で、Dice を下げているのは拾いすぎ(適合率 0.79)です。二値化しきい値を最も薄い材質 PMMA の半分に置くので、再構成ノイズも一緒に拾います。(2) Al だけ μ が 16.6% 低いのは、格子球の殻が局所肉厚 2.0 体素しかないから ―― 部分体積効果であってバグではありません(Ti は 4.9 体素で 4.3%、PMMA は 4.0 体素で 6.3%)。
ここでも一度転びました。最初は μ を 0.55〜1.0「/画素」で置いてしまい、線積分 p が 30 に達して exp(−p) が光子 1 個を割り、対数が飽和(photon starvation)。復元 μ が 50〜84% 低く出て、零点の単純逆投影の方が Dice で勝ってしまった(0.63 対 0.43)。零点が実手法に勝ったら、まず自分の物理を疑う ―― μ を実材質の値(1/cm)と体素の物理サイズから決め直したら最大 p は 1.46 に収まりました。
かつてこの節の末尾には「鏡面・ガラス・CD の虹・ヘアラインはまだ出せません」と書いていました。そのうち 光線追跡を必要としない 3 つ(回折・干渉・異方性)は出せるようになったので、ここに入れます。鏡とガラスの屈折だけが残り(ラスタライザにレイトレーサを足す話)です。

色は塗っていません。 回折・干渉・微小面の統計から波長ごとの反射率を作り、CIE 1931 等色関数で XYZ に積分してから線形 sRGB に落としています(新モジュール matappear、7 op)。だから角度を変えれば色が動き、格子ピッチや膜厚を変えれば色そのものが変わります。
検算は下段の 3 枚です。(1) 薄膜は膜厚 0 で基板単体のフレネル反射に厳密一致(n=1.5 で 0.040000)、λ/4 で解析値 0.077113 に一致、λ/2 は「無いのと同じ」(absentee layer)。(2) 回折は格子の式 d(sinθ_out − sinθ_in) = mλ をそのまま解いていて、CD 1.6 µm・Δsin 0.35 で 1 次が 560 nm。(3) 異方性ローブの伸び比は αx/αy に従います。等色関数側も、平坦な反射率 1 が sRGB の白 (1.000, 1.000, 1.000) に、0.5 が 0.5 に落ちることを確認済み。
ここでも 2 回転びました。(a) 溝と同じ向きに光源をずらしても分散は起きません(λ = d·Δsin が ±100 nm にしかならず不可視)。「色が出ない」の大半はバグではなく配置ミスです。(b) 実際の格子は両側に回折するのに +m しか計算しておらず、解が全部負になって全部フィルタで落ち、真っ黒になっていました。CD を溝に直交して照らしたときの本命は m = −2 の 440 nm です。
この 1 枚も一発では出ていません。 改善の過程をそのまま載せます(作っている感が伝わるように):

| 等値面の法線は定義から ∇f/ | ∇f | なので、SDF の勾配を頂点でサンプルして法線にしたら消えました(③)。render_beauty(vertex_normals=) はこのとき生えた注入口です。 |
vertex_albedo=(頂点色)で付けています。立体なので回しておきます:

所要時間の目安は 20 分ほど。長いので、目次から興味のある層に飛んでもらって構いません。
長い記事なので、どの主張がどの段階にあるのかを最初に仕分けておきます。該当する章の冒頭にも同じ Status ラベルを置きました。
| 階層 | Status ラベル | 本記事での中身 |
|---|---|---|
| 実装済み・再現可能 | Production-ready / Verified |
2D 877 + 3D 346 の op、型契約と統一インターフェース、Studio、PyPI 配布、テスト 10982 件、HALCON 対応 981/2313 の機械集計、展示・デモの実出力 |
| 実証途上 | PoC / Research prototype |
進化によるパイプライン設計(hold-out 評価つき・限定条件)、RAG 経由の自然言語→パイプライン生成、Physical AI 知覚スタック(シミュレーション実証。実機投入・Sim-to-Real は未着手) |
| 将来構想 | Roadmap / Design proposal |
ロボット向けの包括的な op 基盤、AI が約 1000 op を選んで自律実行する運用、産業検査と Physical AI の共通知覚基盤 |
数字はすべて実測です。この仕分け自体も「盛らない」ための仕組みのひとつです。
読みながら手元で試したい人のために、導入を先に。公開リポジトリ(GitHub)と PyPI から入れられます。numpy + scipy だけでコアが動くので、まず素で入れて、必要になったら extras(オプションの追加依存)を足すのがおすすめです。
# ① まず動かす(コアは numpy + scipy のみ)
pip install fullseye
# ② Studio(IDE)や重い op も使うなら extras を足す
pip install "fullseye[gui]" # PySide6 の IDE だけ
pip install "fullseye[all]" # OpenCV / torch / GUI / 動画など全部入り
# ③ Studio を起動
fullseye-studio
①のコマンドだけで何が起きるか、少し具体的に書いておきます。pip install fullseye は、依存として numpy と scipy だけを引っ張ってきます(OpenCV も torch も PySide6 も入りません)。この状態でも import fullseye は通り、500種類以上の op がすぐに使える状態になっています。「性能の正直な話(GPU)」や「公開前夜」の章で触れる通り、この「素のインストールで最低限が動く」という主張自体が、CI の中で毎回実行して確かめられているもので、口約束ではありません。②の extras は、必要になったときに足す後乗せの選択肢という位置づけです。
そして いちばんおすすめの使い方が、AI コーディングアシスタント(Claude Code など)の RAG(検索拡張生成)知識ベースにすることです。同梱のセットアップスクリプトが1コマンドでスキルを配置します:
fullseye-rag # op カタログを Claude Code のスキルとして登録
fullseye-rag --uninstall # きれいに外す
これで「この画像から傷を検出して」と AI に話しかけるだけで、AI が約1000個の op から適切なパイプラインを組んで実行してくれるようになります(何がどこまで出来るかは後述の RAG の節で)。Claude Code をまだ使っていない方は、こちらの紹介リンクから始めてもらえると、作者の開発費(お財布)がちょっと助かります。
ソースから入れる場合(op ドキュメント約1000枚のフルコーパスを RAG に使いたい人向け):
git clone https://github.com/furuse-kazufumi/fullseye && cd fullseye
pip install -e ".[all]"
py -3.11 tools/update_fullseye.py --check # 以後の更新は安全アップデータで
アップデータは環境をつぶさない方針で作ってあります(未コミットの変更があれば拒否・--ff-only のみ・RAG スキルはバックアップしてから更新・Studio の設定には触れない)。使い方の詳細は、リポジトリの README.md と docs/AI_RAG_GUIDE.md(RAG 化手順)、docs/STUDIO_GUIDE.md(IDE ガイド)にまとまっています。
ここで挙げた4つの制約(未コミット拒否・fast-forward のみ・バックアップしてから更新・Studio 設定に触れない)は、どれも単体では地味な工夫です。それでも並べて書いたのは、「AI 用の下地を育てるための更新スクリプト」自体が、人間の作業を壊す加害者になり得るという自覚があるからです。RAG 化のスクリプトも、Studio のセットアップも、開発を助けるはずの道具が、うっかり未保存の変更を消したり、手で調整した設定を上書きしたりすれば、本末転倒です。この後の節で紹介する fail-closed の設計も、突き詰めれば同じ発想の繰り返しです。
全体像を先に掴みたい人向けのリンク集(すべて GitHub 上でそのまま読めます):
| 見たいもの | リンク |
|---|---|
| 約1,200 op のヘルプ総目次(2D / 3D) | docs/ops/INDEX.md |
| 全 op の一枚カタログ(型契約つき) | docs/OP_CATALOG.md |
| 処理結果ギャラリー(本記事の図版のフルサイズ+解説) | docs/GALLERY.md |
| サンプルデータの入手先カタログ(実 DL URL・ライセンスつき) | docs/ops/SAMPLES.md |
頻出する4語だけ先に。それ以外の用語は、本文の初出時にその場でかみくだいて説明しますので、覚えなくて大丈夫です。
| 用語 | ざっくり言うと |
|---|---|
| Fullseye(フルズアイ) | この記事の主役。画像処理・幾何ビジョンの自作オペレータ・ライブラリ。名前は Bullseye(ブルズアイ=射的の的のど真ん中)のもじり(詳細は下の「名前の話」)。開発リポジトリ名は imgevolve。 |
| オペレータ(operator, op) | 「1つの画像処理関数」。例:ガウスぼかし、大津の二値化、Sobel エッジ。Fullseye では約1000個。 |
| HALCON(ハルコン) | 独 MVTec 社の産業用マシンビジョンの定番ソフト。2313 個の operator を持つ巨人。Fullseye はこれを「どこまで自作でカバーできたか」を測る物差しに使っています。 |
| Studio(Fullseye Studio) | Fullseye を見て・試して・仕事で使うための IDE(統合開発環境)。産業ビジョンの HDevelop に相当。 |
名前の由来を先に。Fullseye(フルズアイ) は Bullseye(ブルズアイ) のもじりです。Bullseye は射的やダーツの的のど真ん中、転じて「ど真ん中・大当たり」。発音もそれに寄せて「フルズ・アイ」。
そこに三重の意味を込めています:
「進化で設計する(imgevolve)」という手段の名前から、「的を射抜く目(Fullseye)」という目的の名前へ ―― 名前の変化そのものが、このプロジェクトの方向転換を映しています。
開発リポジトリ名を imgevolve のまま残しているのも、実は意図的です。名前を変えたからといって、そこに至るまでの積み重ね(進化計算で op を探索していた時代の資産や教訓)を無かったことにはしたくない。表に出す製品名は Fullseye に切り替えつつ、内部の呼び名には最初の発想の痕跡を残しておく――これも一種の来歴の記録だと捉えています。
Fullseye には前身があります。もともとは imgevolve、つまり 「画像処理パイプラインを進化計算で自動設計する」 実験でした。「このデータでこの指標を最大化する処理手順」を、遺伝的アルゴリズムに探させる ―― という発想です。
ここで方向を決め直したのが転機でした。進化で”探す”には、まず探索の部品(op)が豊富で、型が揃っていて、正直に評価できる必要がある。部品をそろえていくうちに、「部品ライブラリそのものが主役だ」 と気づいたわけです。
そして 2026 年 8 月、私は Fullseye のミッションをこう定義し直しました:
あらゆる画像処理・視覚アルゴリズムを「スキル」として保持し、即使える包括的なライブラリにする。中身が説明できる、ロボットのための”専用 HALCON”を作る。
この再定義は自分にとって大きな判断でした。汎用的なアルゴリズム(ソートや圧縮など)を積みかけていたのを「それは筋が違う」と切り、画像・幾何ビジョンに一点集中すると決めた。何を作らないかを決めるのが、実は一番効きました。
背景には evis(エビス) の存在があります。私が別シリーズの記事で進めている筋骨格ヒューマノイド(700 筋モデルなど)の実験群で、Fullseye の”お客さん第一号”です。ロボットに箸で豆をつまませたり、歩かせたりするには、「世界を正しく見る目」 が要る。
↑ 以前ここに置いていた手続き生成(カプセル SDF)の手は、実物の骨と並べると明らかに粗かったので差し替えました。「正確な骨格」は画像生成 AI のもっともらしさではなく実データの幾何で担保する、という方針です。骨の配置は MJCF を純 numpy で辿って計算し、MuJoCo の forward kinematics と 1e-10 m で一致することを確認しています(examples_3d/anatomical_hand.py、データは同梱せず git clone MyoHub/myo_sim)。手続き版は後段のターンテーブルにそのまま残しています。
↑ その「手」を Fullseye 側から見た一枚。手続き生成した手の骨格(手根骨8・中手骨5・指骨14)を、これも自前レンダラで描画しています。
深層学習の目も強力ですが、“なぜその姿勢だと判断したのか”が説明できないと、身体の安全に関わる判断は任せづらい。だから 説明できる古典ビジョンを、スキルとして手元に全部持っておきたい ―― これが Fullseye の芯です。
もう少し噛み砕くと、こういう順番の話です。ロボットが箸で豆をつまむにも、二足で歩くにも、まず「今、目の前に何があって、どこにあるか」が分からないと話になりません。動く(制御)より先に、見える(知覚)が要る――当たり前のようですが、evis の実験群を積み重ねる中で、これを痛感する場面が何度もありました。動作計画がどれだけ賢くても、入力の点群が歪んでいたり、姿勢推定が裏返っていたりすれば、その上に積んだものは全部意味を失います。だからこそ、知覚の土台を後回しにせず、最初に、独立したライブラリとして作る、という判断をしました。evis という”お客さん”が要求を出し、Fullseye という”納品先”がそれに応える――この関係を、同じ人間が両方の帽子をかぶって回している、というのが実態に近い言い方です。
その「箸で豆をつまむ」実験を、実際に Fullseye の目で見た映像がこれです(クリックで動画再生):
↑ ▶ ChopMimic 実験(evis_chopstick プロジェクトの実験素材)の箸先カメラ映像に、Fullseye の segment_objects → draw_objects を毎フレーム適用して豆を追跡した実出力。左=三人称視点(文脈用、無加工)、右=Fullseye が検出した豆の bbox。豆が写っている 163 フレームすべてで検出(可視フレーム検出率 100%、重心誤差は真値比で中央値 0.10px・最大 14.5px=部分遮蔽フレーム)。隠れて見えない 78 フレームは検出なし ―― 捏造はありません。
flowchart TB
subgraph L0["土台:型付き op 約1000個"]
OPS["型付きオペレータ・ライブラリ<br/>2D op 877種 + 3D op 346種<br/>numpy 自前実装 / 型(sort)で接続"]
end
subgraph L1["使い方は2通り"]
APPLY["① 既知の op を適用<br/>fullseye.apply / run_pipeline"]
EVO["② パイプラインを進化で設計<br/>evolve / robust(held-out で正直に評価)"]
end
subgraph L2["応用:ロボットの目"]
PERC["Physical AI 知覚スタック<br/>ステレオ→深度→点群→<br/>6DoF姿勢→筋駆動(evis)"]
end
STUDIO["Fullseye Studio(HDevelop 風 IDE)<br/>見て・試して・仕事で使う"]
OPS --> APPLY --> PERC
OPS --> EVO --> PERC
OPS -.表示・試験.-> STUDIO
PERC -.可視化.-> STUDIO
image / region / feature / contour / volume といった型(sort と呼んでいます。画像・領域・特徴量・輪郭・体積という「データの種別」)でつなげる土台。apply / run_pipeline)。単発の op で解けないときだけ、進化計算でパイプラインを設計(evolve / robust)。この図を眺めるときのコツを1つ書いておきます。矢印を「データが流れる向き」ではなく、「型が保証されている向き」として読んでください。層①の op はすべて apply を通れば型付きの結果を返す――だから層②の進化計算は、部品の中身を気にせず「型が繋がる op の並べ方」だけを探索できます。同じ理由で、層③の Physical AI 知覚スタックも、層①の op をそのまま部品として呼び出せます。もし層①に型の保証が無ければ、層②も層③も「実際に動くかどうか毎回試すまで分からない」状態になっていたはずです。1000個規模のライブラリが破綻せずに育っているのは、この矢印1本1本が型契約で裏打ちされているからだ、と考えてもらえれば、以降の各層の説明が繋がりやすくなると思います。
以下、層ごとに掘っていきます。
Status: Production-ready / Verified ―― PyPI から導入可。テスト 10982 件、数字は機械集計です。
apply(image, name, a=0.5, b=0.5) という統一シグネチャで呼べます。a, b は [0,1] の2つのツマミ。特徴量 op は Python の float を、輪郭 op は dict を返す ―― という型の契約が全 op で守られています。import fullseye, numpy as np
frame = np.asarray(img, np.float64) # H×W グレー画像 [0,1]
edges = fullseye.apply(frame, "sobel_amp") # 画像 → 画像(エッジ強度)
seg = fullseye.apply(frame, "otsu") # 画像 → 領域(二値 {0,1})
n = fullseye.apply(seg, "count_obj") # 領域 → 特徴量(物体数, float)
# 型が合う op をつなぐ:ぼかし → エッジ → 二値化
out = fullseye.run_pipeline(frame, ["gaussian", "sobel_amp", "otsu"])
コード例に出てきた a, b という2つのツマミについて、一言補足しておきます。なぜ「op ごとに自由なパラメータ名」ではなく、全 op 共通で a, b ∈ [0,1] の2つだけにしたのか。理由は単純で、進化計算(層②)がパイプラインを探索するとき、パラメータの意味を知らなくても機械的に探索できるようにするためです。gaussian の a は「ぼかしの強さ」、otsu の a は(意味を持たないダミーとして無視される、あるいは別の閾値調整として使われる)というように、op ごとに意味は違いますが、探索する側から見ればどれも「0から1の間のツマミを2つ回すだけ」。パラメータの数と範囲を揃えることで、進化計算のコード自体は op の中身を一切気にしなくて良くなります。これも層①の「型で繋ぐ」思想の延長線上にある設計判断です。
実際の出力を見てもらうのが早いでしょう。エッジ検出・セグメンテーション・輪郭計測など、定番どころを1枚に並べるとこうなります(すべて上の apply / run_pipeline の実出力。入力は scikit-image 同梱のサンプル画像 coins):
各パネルの詳しい説明(何の op がどの数値を出しているか)は、リポジトリの 処理結果ギャラリー(docs/GALLERY.md) にまとめてあります。
op が1000個あっても、それぞれが独立した孤島では意味がありません。効いているのは、型(sort)で繋ぐという一点です。もう少し掘っておきます。
image / color / region / feature / contour / volume という6種類の型のどれかを入口に取り、どれかを出口として返します。「二値化 (otsu) は画像を食べて領域を吐く」「物体数を数える (count_obj) は領域を食べて数値を吐く」――この入出力の型が、op ごとに固定されています。tests/test_op_contracts.py が契約として強制します。image/color は [0,1] の float、region は {0,1} の二値、feature はスカラー float、contour は {"shape","cs"} を持つ辞書、volume は3次元の float スタック――という具合に、出力の形そのものが仕様です。そして仕様は「有限であること(NaN/Inf を返さない)」「同じ入力・同じつまみなら同じ出力になること(決定論的)」も要求します。乱数任せの op や、たまに壊れる op はそもそも登録できません。型が合わない接続をどう弾くかも大事な設計です。otsu(画像→領域)の出力を、いきなり sobel_amp(画像→画像)に食わせようとすると、run_pipeline はそこで明示的に落ちます。「なんとなく動くけど数値がおかしい」ではなく、「型が合わないので実行前に拒否する」――これは料理で言えば、生の魚を切ったまな板と、パンを切るまな板を分けておくようなものです。混ぜてはいけないものを、混ぜられないように物理的にしておく。fail-closed という設計哲学(本記事の随所に出てくる考え方)は、まずこの一番小さな単位、op と op の継ぎ目に効いています。
image / color / region / feature / contour / volume という6種類、名前だけ聞いてもピンと来ないと思うので、実際にどう繋がるかを具体的に書きます。
image(画像):H×W の float 配列 [0,1]。gaussian や sobel_amp のように、画像を受け取って画像を返す op はここに属します。層①の最初のコード例そのものです。color(カラー画像):image の3チャンネル版(H×W×3)。グレースケール前提の op とカラー前提の op を型で分けておくことで、「グレー画像のつもりでカラー画像を渡してしまう」というありがちな事故を、実行前に検出できます。region(領域):{0,1} の二値配列。otsu(画像→領域)のような二値化 op の出口であり、count_obj(HALCON 相当、領域→特徴量)のような計測 op の入口でもあります。「どこが物体か」を表す型、と考えると分かりやすいと思います。feature(特徴量):スカラーの float 1個。パイプラインの最終出力になることが多い型です。「物体数」「平均輝度」「曲率の相関係数」――層③の各論で出てきた実測値の多くは、この feature 型として出てきます。contour(輪郭):{"shape", "cs"} を持つ辞書。エッジ検出 op(edges_sub_pix)の出口であり、輪郭選別 op(select_contours)の入口でもあります。冒頭のモンタージュで紹介した「サブピクセル輪郭抽出→短い輪郭を除去」という流れは、まさにこの型でリレーされています。volume(体積):3次元の float スタック。CT ボリュームのような、奥行き方向にも解像度を持つデータの型です。層③3D の節で出てくる op の多くがこの型を経由します。型を並べて眺めると、image → region → feature(「画像を撮る→どこが物体か分ける→数える」)や image → contour → feature(「画像を撮る→輪郭を取る→測る」)といったよくある処理の流れが、そのまま型の並びとして読めることに気づきます。逆に言えば、型が読めれば「この op の次に何を置けそうか」を、実装の中身を読まなくても当てられるようになります。これは AI が RAG として op を選ぶときにも、人間が Studio でパイプラインを組むときにも、同じように効く読み方です。
「op が1000個ある」と書くと、まるで最初から1000個並べたように聞こえますが、実際には1個ずつ足してきた歴史の積み重ねです。では、1個足すと裏側で何が起きるのか。読者が追体験できる粒度で書いておきます(docs/ADDING_OPS.md が実際の手順書で、以下はそれをかみくだいたものです)。
flowchart TD
A["op を1個実装する<br/>(ops.pyに関数を書く/<br/>backends_auto.pyにspecを足す)"]
B["レジストリに登録される<br/>(_DEFSタプル or spec1行)"]
C["apply / run_pipeline から<br/>即座に呼べるようになる"]
D["進化計算(evolve)の<br/>探索空間が1つ広がる<br/>(型が合う場所ならどこでも挿せる)"]
E["verify_auto.py が実データで実行し<br/>宣言した型を返すか検証<br/>(落ちるop/型違反opはカウントされない)"]
F["opdocs.py all で<br/>Markdownノートを自動生成"]
G["Studioのヘルプ HTML に反映<br/>(2D/3Dとも同じ経路)"]
H["docs/ops/INDEX.md の目次に<br/>自動で入る(フォルダwalk)"]
I["drift CIが<br/>コミット済みノート=現コードから<br/>生成したノートを比較"]
J["worked exampleが無いと<br/>test_op_example_coverageで落ちる"]
A --> B --> C
B --> D
A --> E
A --> F --> G
F --> H
F --> I
A --> J
op を足す入口は2つあります。Path A(手書き)は ops.py に _myop(v, a, b) という関数を書き、_DEFS に ("myop", "category", "halcon名かカラ", 入力sort, 出力sort, _myop) というタプルを1行足すだけ。REGISTRY はこのタプル群から自動で再構築されるので、他に触る場所はありません。Path B(データ駆動)は、pointwise / linfilter / rank / graymorph / edge / freq / diffusion / texture / geom / threshold / segment / binmorph / region_trans / region_feat / img_feat / xld といった、すでに検証済みの型枠にハマる場合に使います。コードを書かず、名前・形・パラメータだけの仕様(spec)を足せば op になる。HALCON エイリアスを名乗るなら、実在する operator 一覧と照合され、存在しなければそのまま落とされます(水増し防止の fail-closed)。
ここから先は人間が何もしなくても自動で追従します。
evolve.py は「今ある op から良い並びを探す」プログラムなので、op を1個足すだけで探索空間が黙って1段広がる――新しいレゴブロックを箱に足すのと同じ感覚です。verify_auto.py が実際の画像・領域・輪郭データに op をその場で走らせ、宣言した型をちゃんと返すかを確認します。クラッシュする op、型を裏切る op はカウントされません。「登録した数=動く数」を実測で担保する仕組みです。py -3.11 tools/opdocs.py all を実行すると、Markdown ノートが自動生成され、そこからStudio の HTML ヘルプ(2D も 3D も同じ経路)と目次(INDEX.md)が一括で更新されます。手書きの目次はゼロ、というのは前述の通りですが、その裏にはこの自動生成があります。tests/test_opdocs.py)が、「コミットされているノート」と「今のレジストリから再生成したノート」を副作用なしで比較し、ズレていれば CI を落とします。op の仕様を変えたのにノートを更新し忘れる、というよくある腐り方を機械的に防いでいます。tests/test_op_example_coverage.py が「この op には ground-truth 付きの worked example があるか」をチェックします。例が無い op は CI を落とす――「動くけど誰も使い方を知らない op」を作らせない、という最後の関門です。op を1個足すだけで、レジストリ・探索空間・コード生成・ドキュメント・目次・CI・Studio ヘルプまでが連鎖して更新される――この「1点を触ると全体が追従する」設計こそが、1000個規模のライブラリを1人で保守できている理由です。裏で人手を介する箇所を減らすほど、「ドキュメントだけ古い」「この op だけ例が無い」という腐食の芽が生まれる余地が減ります。
この「幅」は言葉より図の方が早いので、実レジストリから機械集計したツリーマップを貼っておきます(面積=カテゴリの op 数。スクリプトが 731/46・265/55 と一致することを assert してから描いています ―― 数字を盛れない作りです)。
↑ op 分類ツリーマップ ―― 左が 2D レジストリ(halcon_ext 81・region 76・features 71…)、右が 3D レジストリ(geometry 23・render 14…)。面積=op 数。
「では実際にどんな出力になるのか」も1枚で。24 カテゴリから代表 op を1個ずつ機械選出して、同じコイン写真に実適用したサンプラーです(スキップゼロ。輪郭を返す op は実 XLD 点を焼き込み、数値を返す op ―― 計数・マッチング・形状記述など ―― は「正規の使い方」で適用して入力+検出オーバーレイ+実測値で見せています。たとえば blob_count は前処理後の region で count = 24(コイン枚数と一致することを assert)、ncc_locate は実テンプレートで見つけた位置に枠、decode_barcode は合成バーコードを入力にして bars = 12 です)。
↑ 2D op サンプラー ―― gaussian から decode_barcode、xmh_zernike(Zernike モーメント)まで、24 分類 24 通りの「見え方」。全部実出力です。
Fullseye の op 体系は、突き詰めると HALCON という産業用マシンビジョンの系譜から多くを学んで作られています。だから、工場の検査ラインで使われてきた”定番の仕事”に相当する op が、素の pip install fullseye だけで手に入ります。実装済みの op 名を挙げて具体的に書きます。
tophat / bothat(グレースケール・モルフォロジーのトップハット/ボトムハット、ムラや小傷を背景から浮かせる定番手法)、morph_grad(モルフォロジー勾配)に加えて、ブロブ検出(xsk_blob_log / xsk_blob_dog / xsk_blob_doh、スケール空間の極値からブロブ=染み状の欠陥候補を拾う)と blob_count(HALCON の count_obj 相当、検出数を数える)を組み合わせれば、「小さな染み・穴・傷を検出して数える」という検査ラインの基本形が組めます。measure_pos / measure_thresh / measure_pairs / fuzzy_measure_pos(キャリパー計測――指定した探索窓の中でエッジ位置をサブピクセル精度で求め、寸法や位置を測る手法)に相当する m1_measure_pos / m1_measure_thresh / m1_measure_pairs / m1_fuzzy_measure_pos を実装済みです。輪郭の極値・鞍点をサブピクセルで求める sp_local_max_sub_pix / sp_saddle_points_sub_pix / sp_critical_points_sub_pix などの subpix op 群も揃っています。ncc_locate(HALCON find_ncc_model 相当、正規化相互相関によるテンプレートマッチング)と shape_locate(HALCON find_shape_model 相当、輪郭ベースの形状マッチング)で、部品の位置・姿勢決め(ロボットが掴む前に「今どこにあるか」を求める、検査ラインの入口の仕事)ができます。decode_barcode(HALCON find_bar_code 相当)で、バーコード読み取りも対応済みです。これらは個別に見れば地味な op ですが、工場の検査ラインで実際に日々回っている処理の大半は、突き詰めるとこの手の”地味な古典”の組み合わせです。深層学習の物体検出モデルを1つ学習させるよりも、こうした説明できる・軽い・決定論的な op を組み合わせる方が向いている現場は、今でも数多くあります。Fullseye が層③で Physical AI 側に倒れているのは事実ですが、土台にある op 体系そのものは、最初から産業ビジョンの系譜の上に立っている――これは名前の由来にある「Bullseye = 的を外さない精度」という含意とも重なります。
検査ラインで古典アルゴリズムがいまだに現役である理由は、単純です。照明とカメラを固定した検査治具の上で、決まった部品の決まった欠陥を探すという状況では、学習データを集めて再学習するコストに見合うだけの複雑さが、そもそも要らないことが多い。むしろ「なぜこの部品を不良品と判定したのか」を、しきい値とアルゴリズムの言葉でそのまま説明できることの方が、量産ラインの現場では価値を持ちます。層①の「型(sort)という背骨」の節に書いた通り、Fullseye の op は決定論的で、同じ入力・同じつまみなら必ず同じ結果を返す――これは学習済みモデルには無い性質で、検査基準の説明責任が問われる現場ほど効いてくる特性だと思っています。
言葉だけだと抽象的なので、この”検査ラインの定番”を実際に組んで動かした画を並べます(すべて合成データ上の実処理。検出・計測結果は既知の真値と照合済みで、たとえば欠陥検出は 6/6 件・粒子計数は 60/60 粒が assert で確認されています)。
↑ 表面欠陥検査 ―― 合成した金属面の傷 3・打痕 2・異物 1 を、median フィルタで地合いを推定 → 差分ヒートマップ → blob 解析で 6/6 件検出。さらに真値を使わない特徴量分類(離心率・色み)で傷/打痕/異物の種別まで全件一致させ、種別ごとに色分け枠+拡大インセットで表示しています。使用 op: median_image, dilation_circle, segment_objects。
↑ サブピクセル寸法計測 ―― 測定矩形に沿ったグレープロファイルの微分極値をサブピクセル補間してエッジ対を抽出。段付きシャフト 3 段の径を実測し、描画寸法との誤差は最大 0.02px。HALCON の 1D Measuring と同じ流儀です。使用 op: m1_measure_pairs ほか。
↑ 位置決め ―― エッジ勾配ベースの形状モデルをピラミッド探索で照合し、回転したワーク 3 個の位置と角度を検出(真値と 0.0px・0.0° 一致)。円板や長方形の紛らわしい別部品には反応しません。使用 op: create_shape_model, find_shape_model。
↑ 粒子計数 ―― 60 粒(うち 6 組は接触)をマーカー式 watershed で切り分けて 60/60 計数し、面積で 3 サイズに色分け。粉粒体の品質検査の型です。使用 op: otsu, xcv_watershed_markers, segment_objects。
↑ バー検出 ―― 実際のリーダーと同じく走査線のグレープロファイルからバーのエッジ対を検出。45 本全ての両端を ±1.5px 以内で特定(フル復号器ではなくバー検出・幅計測の素材です)。使用 op: decode_barcode, m1_measure_pairs。
「網羅」を主観で語らないために、産業ビジョンの巨人 HALCON を物差しにしています。公式リファレンスから整理した 2313 operator の一覧に対し、Fullseye の各 op が「どの実在 operator に相当するか」をタグ付けし、機械集計しています。
なぜ物差しが要るのか、を少し立ち止まって書いておきます。「op が約1000個あります」だけでは、それが多いのか少ないのか、読者には判断のしようがありません。1000個という数字自体には、他と比べない限り意味がないからです。かといって「網羅している」と主観で言い切ってしまうのは、本記事の裏テーマである honest disclosure に反します。そこで、業界で実際に使われている巨人と同じ物差しで測り、数字を機械集計で出す、という方法を選びました。HALCON を選んだのは、単に有名だからではなく、operator の一覧が公式リファレンスとして整理されて公開されているという、比較可能性の高さゆえです。
imgevolve maps to 982 / 2313 HALCON operators(42.5%) ―― これは記憶でなく、スクレイプした一覧に対する実測です。
正直に言えば、まだ半分未満です。Tuple 処理・System・Classification・OCR といった章はほぼ手つかず(画像処理の芯から外れるので優先度を下げています)。逆に Matching / Morphology / Filtering / 幾何計測は厚くしてきました。“どこが埋まっていて、どこが空か”を章別の表で常に開示しているのが、この数字の肝です。
HALCON の 2313 operator は、30 の章(chapter)に分かれています。Fullseye の 982 対応も、この章をまたいで均等に付いているわけではありません。
厚くしてきたのは、画像処理の芯にあたる章です。Filtering(平滑化・エッジ・周波数フィルタ)、Morphology(膨張・収縮・オープニング・クロージング)、Regions(領域演算・特徴計測)、Segmentation(二値化・領域分割)、そして Matching(テンプレート・変形マッチング)――このあたりは、実測 42.5% という全体平均よりもずっと濃く塗られています。逆に薄いのは、Tuple 処理(数値タプルの操作、プログラミング言語的な部分)、System(プロセス・スレッド制御)、Classification / OCR(機械学習ベースの分類・文字認識)といった章です。ここはほぼ手つかず、というのが正直なところです。
言葉で書いた偏りを、章別カバレッジの棒グラフでそのまま開示します(docs/HALCON_COVERAGE.md の実測と一致することを描画スクリプトが assert しています)。
↑ 厚い所(Regions 105/106・Morphology 42/44・Filters 186/196)と、意図して空けてある所(System 0/141・OCR 0/96・Tuple 0/165)が一目で分かります。
この偏りは手が回っていないからではなく、最初から狙ってそうした偏りです。次の節で、その判断の中身を書きます。
HALCON を物差しに選んだ時点で、ある問いが立ちます。「じゃあ 2313 個、全部作るのか?」――答えは 否です。
Tuple・System・File・Develop・Control といった章は、画像処理そのものではなく、HDevelop という開発環境を動かすための配管です。プロセスを起動する、ファイルを開く、変数を保存する――これらは Python のエコシステムが元々得意な領域で、numpy ベースの vision スキルライブラリが再発明する意味は薄い。Classification・OCR・Deep Learning は、学習済みモデルが要る別ドメインで、「中身が説明できる古典アルゴリズム」という Fullseye の軸そのものから外れます。Legacy は文字通り非推奨。
これは「なぜ作ったのか」の節で書いた方向転換(imgevolve から Fullseye への再定義)と同じ判断の繰り返しです。汎用アルゴリズム(ソート・圧縮など)を切ったときと同じく、「何を作らないかを決める」方が、「何を作るかを決める」より効く、という家訓がここでも働いています。範囲を広げれば見かけの数字は伸びますが、それは画像・幾何ビジョンという的(Fullseye の名前の由来そのもの)から外れて的を散らすことになる。42.5% という数字を「まだ半分未満」と書きつつ、それでも範囲を広げないのは、この数字の分母自体を、意図して絞ってあるからです。
もちろん、これは一枚岩の判断ではありません。「Tuple や System まで含めた HALCON 完全互換」を目指す設計も、理屈の上ではあり得たはずです。そちらを選ばなかったのは、Fullseye の存在理由が「HALCON の代替品を作ること」ではなく、「説明できるアルゴリズムを、ロボットの目として持ち歩けるようにすること」だからです。物差しとしての HALCON は借りるが、HALCON そのものになろうとはしない――この線引きを、章別の表という形で常に開示しておくことが、「網羅していると盛らない」ための一番地味で一番効く仕組みだと思っています。
op が1000個もあると、ヘルプが無いと使い物になりません。かといってヘルプ HTML と AI 用の説明を二重管理すると、必ず片方が腐ります。そこで採ったのが Markdown を単一真実源(Single Source of Truth)にする 設計です。
flowchart LR
MD["docs/ops/**/*.md<br/>op ごとの Markdown ノート<br/>(著者・ライセンス・版・参考文献・<br/>サンプルDL URL・関連op リンク)"]
MD -->|一括変換| HTML["Studio のヘルプHTML<br/>(2D + 3D)"]
MD -->|フォルダ階層を walk| TOC["目次 INDEX を自動生成"]
MD -->|階層クラスタ化| RAD["AI が引ける<br/>ナビ可能なコーパス"]
MD -->|drift テスト| CI["版がズレたら CI が落ちる<br/>(docs と code を同じ版に固定)"]
この「md=真実源」化は、まさにこの総集編を書いている一連の作業で仕上げました。関連 op リンク・参考文献(Tomasi & Manduchi 1998、Serra 1982、Sobel & Feldman 1968… と実在する古典を正確に、DOI を捏造せず)・サンプルデータの実 URL まで含めて、長く保守できる形にしてあります。
(さらに一言、経験談として。)以前は「ヘルプ HTML は手で書く、AI 向けの説明はまた別に書く」を試したことがあります。結果は分かりやすい失敗でした。op のパラメータを1つ変えると、HTML だけ直して満足し、AI 向けの説明を直し忘れる。逆に AI 向けを直して HTML を忘れる。半年もすれば、どちらを信じればいいか本人にも分からなくなる――ドキュメントの二重管理は、放っておくと必ずこうなります。一方が真実で、他方が参照でしかない構造にしない限り、両方とも徐々に嘘をつき始めるのです。
md=SoT にしてからは、この種の「気づいたら片方だけ古い」という事故が構造的に起きなくなりました。ノートを直せば HTML も目次も追従する。ノートを直し忘れれば、CI の drift テストが教えてくれる(落ちるので気づかざるを得ない)。「気をつける」を「仕組みで担保する」に置き換える――これは本記事の裏テーマである honest disclosure とも根っこが同じです。人間の注意力に頼らない。
層①をここまで読んでもらうと、「型(sort)」「op を1個足すと連鎖する自動化」「md=SoT」の3つが、実は同じ1つの設計判断の別の顔だと分かってもらえると思います。型は op と op の継ぎ目を、md=SoT はコードとドキュメントの継ぎ目を、それぞれ人間の注意力ではなく機械的な契約で保証する――この土台があるからこそ、層②の進化計算も、層③の Physical AI 知覚スタックも、層①の中身を気にせず安心して積み上げられます。次の層②では、その土台の上で「良い並びを探す」という、また別の正直さが求められます。
Status: PoC ―― hold-out 評価つきの限定条件での実証です。汎用の自動設計はまだ主張しません。
単発の op で解けない課題 ―― 「このデータでこの指標を最大化する処理手順を見つけたい」 ―― のときだけ、進化計算の出番です。層①で「ほとんどの場合は既知の op を適用する」と書いた通り、これは主役ではなく脇役の位置づけです。1000個の op から選んで繋ぐだけで大抵の用途は間に合いますが、それでも足りない場面――最適な組み合わせが人間の直感では見つけにくい場面――のために、探索という手段を残してあります。
py -3.11 baseline.py --problem denoise --workdir out/mine # まず"正直な床"を測る
py -3.11 evolve.py --problem denoise --workdir out/mine --gens 40 --pop 24
py -3.11 robust.py --problem denoise --workdir out/mine --seeds 5
ここで一番こだわっているのは 評価の正直さです。
こうすることで、報告する汎化性能が「評価セットへの過剰適合」ではなく、正直な数字になります。「良い結果が出たら、勝った気になる前に必ず内訳を疑う」 ―― これは開発全体の家訓でもあります。
3行のコマンドをもう一段かみくだきます。
baseline.py――まず何もしない・素朴な手法でどれくらいの数字が出るかを測ります。囲碁や将棋で言えば、定石を知らない素人がどれだけ打てるかを先に測っておくようなもの。これが無いと、「進化計算で良い数字が出ました」と言われても、それがすごいのか当たり前なのか判断できません。「ベースラインを先に測る」は、本記事の随所に出てくる家訓の中でも、一番地味で一番効くものだと思っています。異常に良い数字が出たら、まず「ベースラインは?」と聞き返す――これは開発チーム(実質ひとり)内の口癖です。evolve.py――遺伝的アルゴリズムで、op の並び(パイプライン)そのものを進化させます。世代(--gens)ごとに、パイプラインの集団(--pop)を突然変異・交叉させ、訓練データでの適合度が高い個体を残す。ここでのポイントは、探索する対象が「op の並び」であって「1個の巨大モデルの重み」ではないことです。出てきた解は人間が読める op の列なので、なぜその解が良いのかを後から検証できます。robust.py――複数シード(--seeds)で evolve を独立に何度も回し、訓練データで選んだベストな個体(best-of-N、train-selected)を1つ選びます。乱数の運・不運を均すのが目的です。コード例に出てきた --problem denoise は、ノイズ除去を目的に指定した1例です。baseline.py はまず素朴な手法(例えばパラメータ固定のガウシアンぼかし1発)でどれくらいのスコアが出るかを測り、evolve.py はそこから出発して、層①の op を数珠つなぎにしたもっと良いパイプライン(例えば「メディアンフィルタ→バイラテラルフィルタ→アンシャープマスク」のような組み合わせ)を世代を重ねながら探します。人間が最初から思いつく組み合わせもあれば、進化計算が見つけてくる人間には意外な順番の組み合わせもある――そこが遺伝的アルゴリズムを使う面白さで、かつ「なぜその順番が効くのか」を op 単位で後から読み解けるのが、層①の型付き設計の恩恵です。
なぜ「hold-out は追跡するが選択には使わない」という一見遠回りなルールが要るのか。直感的な説明を試みます。
テストの点数を上げたい受験生が、過去問を繰り返し解いて答えを覚えてしまう状況を想像してください。過去問(訓練データ)の点数はどんどん上がりますが、それは「理解が深まった」のか「答えを暗記しただけ」なのか、過去問だけでは区別がつきません。区別するには、まだ見ていない新しい問題(hold-out)で測るしかない。ここで罠があります。もし「hold-out の点数が上がる方向」に勉強法そのものを選び直してしまったら――例えば「hold-out で成績が良かった参考書だけを残す」を繰り返したら――hold-out もまた”覚える対象”になってしまい、測る意味を失います。
進化計算でも同じことが起きます。もし世代ごとの選択(どの個体を生き残らせるか)を hold-out のスコアで行うと、何世代も回すうちに、hold-out という特定のデータセットに”効く”パイプラインだけが生き残ります。それは汎化ではなく、hold-out への過学習です。だから Fullseye では、選択は必ず訓練データだけで行い、hold-out は「本当に汎化しているかを最後に覗く窓」として、選択プロセスの外に置いています。これは統計的検定における「検証用に取っておいたデータで多重比較をしない」という規律の、進化計算版だと考えてもらえれば近いです。
正直に言えば、この規律を守ると見かけの数字は控えめになりがちです。hold-out に寄せて選べば、報告される性能はもっと良く見えたはずの局面も、実際にはあります。それでも hold-out を選択に使わないのは、あとで裏切られない数字の方が、開発を続ける上でずっと価値があるからです。
Status: Research prototype ―― この章の実証はすべてシミュレーション内です。実機投入・Sim-to-Real は未着手。
フレームを幾何と物体に変える部品群です。ロボットが見て・測って・動くための道具箱。
import fullseye as fs
disp = fs.disparity_map(left, right, max_disp=16) # ステレオ視差
Z = fs.depth_from_disparity(disp, focal=f, baseline=B) # 深度 Z = f·B/d
pts = fs.reproject_to_points(Z, fx=f, fy=f) # 点群 (N,3)
grid,_= fs.elevation_map(world_pts, cell=0.05) # 2.5D 地形ハイトマップ
ok = fs.traversability(grid, cell=0.05, max_step=0.1) # 足場/障害物マスク
objs = fs.segment_objects(frame, threshold="otsu") # 物体ごとの幾何+記述子
このコード例、実は6行で「見る」から「歩く/掴む」の一歩手前までを通しています。左右2枚のカメラ画像(left, right)から視差 disp を求め、それを深度 Z に変換し(層③各論のステレオの節で紹介した $Z = f \cdot B / d$ そのものです)、深度を3D 点群 pts に逆投影する。そこから地形の高さマップ grid を作り、traversability(踏破可能性)で「歩ける場所・歩けない場所」を判定する。最後の segment_objects は、画像を物体ごとに分けて、それぞれの幾何情報(位置・サイズなど)と記述子(識別に使う特徴量)を取り出す――これは工場のビンピッキングで言えば「どの部品がどこにあるか」を求める処理そのものです。層①の op を、層③では目的に応じて名前を変えた薄い facade(外側のインターフェース)として呼んでいる、という構造がこの6行に表れています。
この層にはセンサー・シミュレーション一式も含まれます。実機を持っていなくても、疑似 LiDAR・ステレオカメラ・イベントカメラ(DVS)・フォトメトリックステレオ・TSDF 融合・偏光カメラ・焦点合成といったセンサーの出力を合成シーンから作り、知覚パイプラインを実機なしで開発・検証できる ―― Physical AI 開発の”練習場”です。すべて Fullseye 自身の op の実出力です:
パネルごとの説明と、これ以外の処理結果(3D レンダリング・メッシュ処理・ターンテーブル GIF など)の一覧は 処理結果ギャラリー(docs/GALLERY.md) へ。
モンタージュの6パネルは、それぞれ独立したセンサー・シミュレーションです。同じ MuJoCo の合成シーン(緑の直方体・黄色の円柱・青い球・オレンジの箱・紫の板)を、6種類のセンサーの目を通して見るとどう変わるか――というのがこの絵の狙いです。1つずつ、原理を3段でかみくだきながら、パネルに焼き込まれた実測値を見ていきます。
lidar_sim.py の出力では、2965 点・32ch・hit-ratio 26%。hit-ratio は「飛ばしたレイのうち、実際に物体に当たった割合」――残り 74% は空振り(背景や視野外に飛んだ)で、これはまばらな物体を対象にした室内シーンでは自然な値です。密な物体ばかりのシーンなら、この比率はもっと上がります。depth_from_disparity そのものです。stereo_sim.py の出力は depth corr 0.55、median err 1.3cm。depth corr は推定深度と真の深度(MuJoCo が知っている正解)の相関、median err はその誤差の中央値です。テクスチャの薄い平面(モンタージュ中央上の白いブロック)ではマッチングが難しく、誤差が乗りやすい――これはステレオ視の古典的な弱点で、正直に数字にも出ています。event_camera.py の出力は 247,189 イベント・edge-corr 0.56。edge-corr は「イベントが発生した密度」と「その場所のエッジ強度(Sobel 等で測った輪郭の強さ)」の相関で、輪郭に沿ってイベントが多く出ていることを裏付けます。数値としては直感の通りですが、「直感で合っていそうな設計を、実測でも裏付ける」のが honest disclosure のやり方です。この DVS は動きで見るのが一番わかりやすいので、実際に流れる gif を後述します。
focus_stack.py の出力は、近距離(0.91m)・中距離(3.33m)・遠距離(5.74m) の3焦点から合成し、シャープネス倍率 ×1.27、depth corr 0.89。倍率 ×1.27 は「合成後の画像が、単一焦点の画像よりどれだけシャープになったか」、depth corr は「焦点から逆算した深度」と「MuJoCo の正解深度」の相関です。0.89 は、6パネル中でも高めの相関――複数の焦点距離を使う分、単眼1枚のステレオより安定するのは理にかなっています。polar_cam.py の出力は mean DoLP 0.79、Stokes round-trip 1.00。round-trip 1.00 は、「4方向の偏光画像から Stokes ベクトルを作り、そこから元の4方向の画像を逆算し直す」という往復変換が完全に一致したことを示します(実装の内部整合性チェック)。DoLP が高いのは、モンタージュの球体マテリアルが光沢寄りで、grazing angle(視線がほぼ真横)に近い場所ほど偏光が強く出るという物理と整合しています。sensor_fusion.py は、投げたボールの放物運動を追跡するデモで、位置センサ単体の RMSE 22.6cm、IMU デッドレコニング単体の RMSE 8.4cm に対し、カルマン融合後は RMSE 6.1cm。単体のどちらよりも融合後の誤差が小さい――これがセンサーフュージョンの効能を、数字で見せている一枚です。6つとも原理は別物ですが、実装の足場は共通しています。外部のシミュレータやセンサー専用 SDK を呼んでいるわけではなく、どのセンサーモデルも層①の型付き op と同じ numpy のコードで書かれているという点です。LiDAR のレイキャストも、ステレオのブロックマッチングも、偏光の Stokes ベクトル計算も、突き詰めれば「配列を受け取って配列を返す関数」の組み合わせにすぎません。センサーごとに全く違う物理現象を模擬しているのに、呼び出し方も検証の仕方も統一されている――これが、層①で繰り返し書いてきた「型で繋ぐ」「md=SoT で検証する」という設計を、Physical AI というより複雑な応用先に持ち込んだときにも壊れずに機能している証拠だと考えています。
ここまでの6センサーは Physical AI(ロボット知覚)の文脈で紹介しましたが、同じ op がそのまま工場の検査・ピッキングラインの文脈でも使われるようにできています。
stereo_sim.py と同じ経路)は、そのままばら積みピッキング(bin picking)の入力になります。実際、euclidean_cluster(点群を近接グラフの連結成分で距離クラスタリングする op)を使い、台の平面を除去してから物体をクラスタに分ける、というワークフローの worked example(examples_3d/object_segmentation.py)を同梱しています。台平面を除去せずにクラスタリングすると全物体が1塊に癒着してしまう、という「何もしない」零点との比較もちゃんと入れてあります(honest gate)。euclidean_cluster の守備範囲です。屋外シーンの地面除去→物体分割という、倉庫や屋外ヤードのロボットが直面する状況に対応する worked example(examples_3d/lidar_scene_segmentation.py)もあります。この例では、傾斜地面(約5.4度)の上に置かれた4物体(球・箱・円柱・円錐)の LiDAR 点群5316点を、fit_plane_ransac で地面を検出し、地面より高い点だけを残してから euclidean_cluster で分割する、という手順を踏みます。実測では検出クラスタ数が真の物体数(4個)と一致し、各クラスタの重心と真の物体との対応も最大誤差0.128mで全単射しました。地面除去を省いて全点をそのままクラスタリングすると、全物体が1つの塊に癒着してしまう――この「何もしない」場合との比較が、地面除去という一手間の効能を数字で裏付けています。principal_curvatures / gaussian_curvature)を使う経路を用意しています(curvature_grasp の worked example)。「つまみやすい場所=曲率が滑らかで凸な場所」という、掴む対象の形状から候補点を絞り込む古典的なアプローチです。シミュレーションの中で育てたロボット視覚のパイプラインが、そのまま検査ラインの部品として転用できる――これは”おまけ”ではなく、同じ型付き op 体系の上に両方が乗っているという設計の直接の帰結です。
その帰結を、実際にシミュレーションで組んで動かした画で示します(すべて MuJoCo 物理・実レイキャスト・実レンダ上の実処理。クラスタ数・物体数は真値と照合済み)。
↑ bin picking の前段 ―― 部品 10 個を物理シミュレーションで箱に落とし、真上の深度カメラで観測 → 深度セグメント → 「周囲クリアランス+高さ」で把持候補 8 件を採点(緑=最優先)。把持ジョーの向きは長方形フィットの長軸から。使用 op: segment_objects, fit_rectangle2, colorize_depth。
さらに、この採点結果から 6 自由度 IK で実際に掴んで搬出するフルサイクルも動画にしてあります → phai_bin_pick.mp4(GitHub でインライン再生)。接着なしの素の物理で、箱の外に出た部品だけを成功と数えて 3 個搬出成功、という正直な集計です。
↑ LIDAR 障害物認識 ―― リング型 LIDAR を模して 2 万本超のレイを実際に飛ばし、RANSAC 地面除去 → ユークリッドクラスタリングで物体 6 個が 6 クラスタに。各クラスタに OBB を当てて鳥瞰表示。使用 op: remove_ground, euclidean_clusters, obb。
↑ ステレオ障害物マップ ―― 視差 → $Z = f \cdot B / d$ で奥行き → 3D 点群 → 高さ 12cm 超をクラスタリングで 4 物体が 4 クラスタに(復元した地面の高さ誤差は中央値 3mm)。視差は speckle フィルタ+信頼度ゲート後の「使う視差」だけを表示し、無効画素はグレーでマスクしています。使用 op: disparity_subpixel, disparity_confidence, euclidean_clusters。
↑ 焦点合成 ―― ピント位置を振った 7 枚から各画素で最もシャープな 1 枚を選んで合成(鮮鋭度は単写比 1.27 倍)。顕微鏡検査・基板検査で使われる仕組みです。
この中の1つ、イベントカメラ(DVS) ―― 画素ごとの輝度変化だけを非同期に吐くセンサー ―― は、動きで見るのが一番わかりやすい。カメラがパンすると、エッジに沿って ON イベント(シアン)と OFF イベント(マゼンタ)が流れます:

より滑らかな mp4 版と、イトカワ等のターンテーブル動画は、リポジトリの docs/articles/assets/media/ に置いてあります(GitHub 上でそのまま再生できます)。
Fullseye の差別化がいちばん出るのは 3D 系だと思っています。2D の古典画像処理は、OpenCV や scikit-image という強力な OSS がすでに広くカバーしています。そこで numpy の再実装を積むだけでは、正直「車輪の再発明」と言われても仕方がない部分があります。一方 3D は、点群・メッシュ・ボリュームという複数のデータ形式にまたがり、しかも「型付き・純 numpy・機械可読ノート付き」という条件を揃えたまま網羅しているライブラリは、私が調べた限りではあまり見当たりませんでした。だからこそ、この節では他の層より少し長く、実データでの実演にページを割きます。
冒頭の GIF に出てきた小惑星イトカワの実点群に、3D op を実際に当てるとこうなります:
実点群 3000 点に対して、曲率解析(近傍曲率の相関 r=0.87 ―― 実在表面である証拠)、ICP 自己レジストレーション(未知の 30° 回転+ノイズから回転誤差 0.027° で復元)、PCA 正準姿勢(未知の 50° 回転後も主軸を完全回復)。全部この場で実行した実測値です。
4パネルをもう少し丁寧に見ておきます。
itokawa_points.npy は3000点、外接寸法は 559×301×242 m――イトカワは長径600m弱の細長い”ラッコ型”小惑星で、この寸法もその形状をよく表しています。色は原点(重心付近)からの距離で塗っており、岩石らしい陰影は3D レンダラのシェーディングによるものです。curvature3d.curvedness は、各点の曲がり具合を数値化する op です(層③の各論で改めて触れる曲率の一種)。実測は curvedness の平均 0.0102・標準偏差 0.0059、そして近傍点との曲率の相関 r=0.87。この相関が高いことの意味を言葉にすると――「隣り合う点は似た曲がり方をしている」という、実在する連続した表面ならではの性質です。もしこれがただのランダムな点の集まりだったら、曲率はてんでバラバラで、相関はゼロに近くなるはずです。r=0.87 は、この点群が本物の岩の表面から採取されたデータであることの、間接的だが定量的な証拠になっています。| ④ PCA 正準姿勢:点群の主慣性軸(3本の直交する軸、モーメント・オブ・イナーシャの固有ベクトル)を求め、未知の 50° 回転を掛けた後でもその軸を復元できるかを試します。実測は 主軸比 4.02:1(一番長い軸と次に長い軸の固有値比――イトカワの細長さを表す数値)、**軸復元 | cos | ≥ 1.0000**(50° 回転後も主軸の向きを完全に一致させて復元)。 |
3枚とも同じ 3000 点の実点群に対して、別の角度から実在性・再現性を検算しているという点が肝です。曲率解析は「表面として一貫しているか」を、ICP は「同一物体として同定できるか」を、PCA は「向きが分からなくなっても復元できるか」を、それぞれ別の数学(微分幾何・最近点探索・固有値分解)で確かめている。3D op のカバレッジをただ数え上げるより、同じデータに複数の角度から刃を入れて実演する方が、説明できるビジョンの価値を伝えられると思っています。
本記事の冒頭に置いた1枚(SDF smooth union + AO + ソフトシャドウ + ACES)や、イトカワのターンテーブル GIF は、どちらも自前のレンダラの出力です。ここで大事なのは、「見た目が綺麗」ということそのものより、「見た目」を作っている要素を1つずつ独立した op に分解してあることです。処理結果ギャラリー(docs/GALLERY.md)には、それぞれの要素を単体で確認できる図版が並んでいます。
これらは「見た目のための飾り」ではなく、それぞれが独立して検証できる opです。AO なら「遮蔽されている頂点ほど暗くなっているか」、トーンマッピングなら「白飛びしていた領域の階調が復元されているか」――どちらも数値で確認できます。冒頭のヒーロー画像1枚の裏には、型付き op として書かれた測定可能な部品が積み重なっている、という点は、層①で書いた「型(sort)という背骨」の思想が、レンダリングという一見遠い分野にまで一貫して適用されていることの表れです。
3D op は現在 346 個。点群・メッシュ・ボリューム・SDF を跨いで、SHOT / FPFH / スピンイメージといった 3D 特徴記述子、TSDF 融合、縞投影(fringe projection)、フォトメトリックステレオ、スーパークアドリク当てはめ、メディアル軸、測地距離、ビジュアルハル、QEM メッシュ簡略化(境界保存・多様体厳格) まで揃えています。
同じイトカワ実点群に基本の 3D op を順に当てたサンプラーも1枚にまとめてあります(法線推定・shape index・ボクセル間引き 3000→635 点・OBB・凸包 ―― 全部実行結果です)。
↑ 3D op サンプラー ―― OBB の外形実測は 281×149×122 m。教科書の図ではなく、この小惑星の実データで測った数字です。
いくつか実物を:

↑ 3D 分水嶺(watershed)分割 ―― くっついた 2 物体を距離変換の「谷」で切り分ける。ビンピッキングで部品が重なる、あの状況の道具です。

↑ QEM メッシュ簡略化の実測比較。「境界を保つ」「多様体を壊さない」を実測で確認しながら削る ―― この op は本記事のバグ⑥の舞台でもあります(後述)。

↑ 手続き生成した手の骨格(手根骨8・中手骨5・指骨14=計27骨、名前の話の節に出てきた hand_hero.png と同じ被写体)の SDF を占有ボクセル格子に落とし込み、marching_cubes(等値面レベル 0.5)でメッシュ抽出して骨格標本風に回したもの。掌を上にして寝かせ、俯瞰で1回転させています。ボリューム→メッシュ→レンダまで一気通貫です。
個々のアルゴリズムは PCL(C++)や Open3D に散在しますが、「純 numpy・型付き・全 op に機械可読ノート付き」で1つのライブラリがこの範囲を持っている構成は、あまり見ないと思います。産業の縞投影計測からロボットの把持姿勢まで、同じ書き味で届くのが狙いです。
試すための 3D データは、公開ソースから無料で手に入ります。定番どころ:
ライセンスと直 DL URL を整理した一覧はリポジトリの docs/ops/SAMPLES.md にあり、sample_data.download('bunny', yes=True) の1行で取得できるものはコード側にも登録済みです(未取得なら明示エラー、勝手に拾わない fail-closed 設計)。
この層の”お客さん第一号”が evis(筋骨格ヒューマノイド)です。evis の視覚パイプラインは、ステレオ → 深度 → 点群 → セグメント → 6自由度(6DoF)姿勢 → 動作計画 → 700筋での実現、という流れ。ロボットに箸を使わせる・歩かせるといった課題の”目”を、この層が担います。
その最初の 2 段「ステレオ → 深度」を、evis 自身の両眼で実演した映像がこれです(クリックで動画再生):
↑ ▶ evis が箸で豆を打つ ChopMimic シーンを、evis 自身の両眼カメラ(瞳孔間距離 64mm)で撮った実験キャプチャ 241 フレームに、Fullseye の disparity_sgm → speckle_filter → fill_disparity → depth_from_disparity を毎フレーム適用した実出力。左=evis の左眼映像、中央=Fullseye が計算した視差、右=深度。下段 HUD の「豆までの距離」は左右眼の segment_objects 重心視差から $Z = f \cdot B / d$ で読み出した値で、シミュレータ真値との誤差は 229 フレームで中央値 0.66%・最大 1.91%(豆が箸に隠れた 12 フレームは「bean not in view」と正直に表示)。
大事にしているのは OSS を再発明しないこと。PCL / OpenCV / MoveIt2 といった標準は、忠実性とカバレッジの地図+薄いアダプタとして使う。統一インターフェースの裏に隠すので、使う側は「中身が自作 numpy か OSS ラッパか」を気にせず、同じ書き味で呼べます。
「HALCON カバレッジの物語」の節で書いた「何を作らないかを決める」という判断は、ここにも顔を出しています。PCL や MoveIt2 が既にカバーしている領域(点群処理の一部・動作計画の一部)を丸ごと自前実装で置き換える必要はない。Fullseye がそこに足すべき価値は「同じ書き味で呼べるようにする」ことであって、「もう1つの実装を増やす」ことではありません。何を numpy で自前実装し、何を薄いアダプタで済ませるかの線引きは、設計思想の4本柱すべてに関わる判断で、ここでも honest disclosure の精神――「これは自前実装、これは OSS ラッパです」と、機械可読なノート(層①の md=SoT)で常に区別して開示する――が効いています。
Status: Production-ready ―― v0.1.3 に同梱。この章のスクリーンショットはすべて実画面です。
アルゴリズムを揃えるだけでは足りません。「見て確かめる」層が要る。それが Fullseye Studio です。位置づけは:
産業ビジョンの HDevelop(2D 画像の IDE)+ ロボットの RViz2(3D 知覚の可視化:点群・深度・6DoF姿勢の軸・地形レイヤ)の融合。
v.mean() や np.percentile(v, 99) など任意の式)が選択変数に対してパイプラインの変更のたびに自動再評価されます。dev_open_window (行, 列, 幅, 高さ) がウィンドウを開いて配置し、dev_set_window で切り替え、dev_set_window_extents で動かせる。画像処理の実務では「入力・中間・結果を別ウィンドウに並べる」が日常なので、これをコードで再現可能にしています(開き過ぎ防止の上限は環境設定で調整可能、既定 256)。実際の画面がこれです(モックアップではなく、studio.build_window() が組み立てた実 UI をそのまま撮ったもの)。左に結果ビュー(ホイールでズーム、ドラッグでパン)、下に Program パネル、右に演算子ブラウザという構成で、op を選んでつなぎ、ノブを回すと結果がライブ更新されます。
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↑ Studio メイン画面 ―― coins サンプルに blob 分割パイプライン(gaussian → otsu → opening_circle → sk_clear_border)を適用し、検出した 21 枚のコインを region overlay で重畳した状態。ステータスバーに「21 obj」。
HDevelop を触ったことがある人向けに、Studio の Python Editor がどう対応するかを整理しておきます。
HDevelop では、1つのメインプログラムから複数のサブプログラム(サブルーチン)を呼び出し、それぞれを別タブで編集する、という書き方が定番です。Studio の Python Editor(File ▸ Python Editor…、またはギャラリーの「Open in editor」)も同じ発想で、複数の Python スクリプトを同時にタブで開いて編集できます。F5(Run)で現在のタブをサブプロセス実行――サブプロセスなので、重い処理を回してもメインの UI は固まりません。リポジトリが PYTHONPATH に自動で乗るので、import fullseye はどのタブでもそのまま動きます。未保存のバッファはscratch コピーとして実行されるので、「試しに書き換えて動かしてみる」ために毎回セーブを強制されることもありません。
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↑ Python Editor ―― itokawa_curvature.py を F5 実行した直後(PASS, exit 0)。下部コンソールに実データの曲率統計がストリームされている。
もう1つ、MDI コード窓(ギャラリーの「Open in window」)という選択肢もあります。こちらはサンプルを独立したウィンドウとして何枚でも並べられ、Window ▸ Tile/Cascade で整列もできる。タブは「順番に読み書きする」用途、MDI 窓は「複数のサンプルを見比べながら断片をコピーする」用途――と、使い分けが効くようにしてあります。
HDevelop の強みの1つは、プログラムを1行ずつ実行しながら変数の中身をその場で覗けることです。Studio にも同種の機能を入れました。
v.mean() や np.percentile(v, 99)、(v > 0.5).sum() のような任意の式を登録できます(v が選択中の変数、np が numpy、img が入力画像)。この式は、選択を変えるたびに・パイプラインを変えるたびに自動で再評価されます。式が失敗しても、その行に警告マークが出るだけでパネル全体は落ちません。正直な注意点も1つ書いておきます。変数ウォッチの式はGUI スレッドで同期評価されるため、巨大な配列を全走査するような重い式を登録すると、その間 UI が待たされます。重い集計をしたいときは、式を軽くするか、Python Editor 側で実行するのが実務上のコツです。
Studio の右パネルには、現在の結果を回転可能な 3D サーフェスで開く機能があります(DISPLAY & PERCEPTION の Ctrl+3、内部的には Qt の Q3DSurface を使った best-effort 実装)。使い方は単純です。深度マップ・地形ハイトマップ・曲率で着色した高さ場など、画素ごとに1つの高さ値を持つ結果を表示しているときに Ctrl+3 を押すと、その結果が別ウィンドウで立体の地形として開きます。
ここからは、マウスをドラッグすると視点がぐるっと回り、ホイールを回すと寄り引きできる――カラーマップを睨んで「たぶんここが凹んでいる」と目を凝らす代わりに、実際につまんで角度を変え、光の当たり方が変わるのを見ながら凹凸を確かめられるわけです。ステレオ深度の誤差が乗りやすい場所、地形ハイトマップの段差、曲率マップの尾根と谷――こういうものは、静止した1枚のカラー画像だと平坦に見えてしまうことがあります。同じデータを回して光を当て直すと、影のでき方でぐっと分かりやすくなる。「結果を静止画で眺める」から「結果を手に取って確かめる」への一段は、地味ですが実務では効きます(GPU の実オフスクリーンコンテキストが取れない環境では安全に無効化される best-effort 機能で、無ければ静かに使えないだけです)。高さは地形風のグラデーション(低=深青 → 緑 → 砂色 → 頂=白)で着色されるので、どこが高くどこが低いかは色でも読めます。
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↑ Ctrl+3 の 3D surface ビュー ―― 小惑星イトカワの実形状モデル(JAXA はやぶさ / Gaskell モデル)を深度レンダした起伏。アプリ内ではこのシーンをそのままマウスドラッグで回し、ホイールで寄れます(画像は同一 GL シーンの renderToImage 静止画)。
3D surface(Ctrl+3)は高さ場専用でしたが、この総集編の作業の最終盤で、メッシュと点群をそのままマウスで回せる対話 3D ビューア(Ctrl+4、または View メニュー)を追加しました。左ドラッグで軌道回転、ホイールでズーム、Shift+ドラッグでパン、R でリセット、W でワイヤフレーム切替です。
↑ 対話 3D ビューアでイトカワ実メッシュ(24,578 頂点・49,152 面)を表示したところ。マウスで回しながらランバート照明の当たり方で起伏を確かめられます。
実装は正直に書くと GPU を使わないソフトウェアラスタライザです。理由は消去法ではなく実測で選びました ―― GL 実装は CI のオフスクリーン環境でテスト経路が完全に死に、リモートデスクトップでも脆弱。ソフトウェア実装ならテストと実機が同一コード経路を通ります。実測は 20 万点で 66ms、100 万点で 349ms(480px)―― 100 万点はフル解像度では対話的と言えないので、ドラッグ/ズーム中は 25 万点への均一間引きプレビュー(HUD に正直表示)+離した瞬間フル再描画、という作りです。メッシュ描画も頂点+面重心のランバート splat で、塗り潰しレンダではありません(高品質静止画は既存の render3d.render_mesh の役目)。
(なお初版の奥行きソート反転バグは、公開前の敵対的レビューで実証・修正し、遮蔽を検証する回帰テストで固定済みです。)
HDevelop の定番機能に、ラベリングした複数領域の特徴量を表で検分するツールがあります。同じものを Studio にも入れました(Ctrl+F5、Tools メニュー)。
↑ 2D Feature Inspection ―― チェックリストで特徴量(面積・重心・真円度・離心率・グレー統計など、既存の regionprops/gray_features 実装を再利用)を選ぶと、行=領域・列=特徴量のソート可能テーブルに。行を選ぶと画像上の該当領域が amber でハイライトされ、逆に画像をクリックするとその領域の行へジャンプします。CSV コピー付き。
↑ 同じダイアログの 3D タブ ―― 点群を euclidean_clusters でクラスタリングし、クラスタごとの点数・重心・extent・OBB 寸法(ops3d の既存 op の範囲のみ)を表に。行を選ぶと埋め込みの対話 3D ビューアで該当クラスタが強調表示されます。
スクリプト側からも同じ流儀で使えます。HDevelop の disp_image / disp_object_model_3d に相当する disp 系ディレクティブ(disp_image (n) / disp_region (n) / disp_points3d ('file') / disp_mesh3d ('file'))を dev ウィンドウ体系に追加したので、プログラム中から「入力・中間・結果を別ウィンドウに並べる」が 2D でも 3D でも書けます(Python API は studio.disp_points3d(P) 等。副作用を持つ表示系なので、純変換の op レジストリとは意図的に分けてあり、HALCON カバレッジの数字にも算入していません)。
Tools ▸ System settings…(Ctrl+,)は、カテゴリツリー形式の設定画面です。Execution(ワーカースレッド数・operator タイムアウト)、Windows(グラフィクス窓の上限)、Display(既定のカラーマップ・領域の描画方式)、Editor(フォントサイズ・Python Editor の実行インタプリタ)――と、HDevelop の set_system に相当する設定が1画面にまとまっています。Ctrl+P の Command palette からも、任意のアクションや任意のオペレータを名前でファジー検索して即実行できるので、メニューを辿らずキーボードだけで一通りの操作が完結します。
3D 側は 105 本の worked example(実イトカワ点群・骨格ボリューム・合成データ)をギャラリーから選んでその場で Run でき、265 の 3D op それぞれに生成済みヘルプページ(シグネチャ・使い方・検証済みサンプルへのリンク・型が繋がる次の op)が付いています。
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↑ 3D Examples ギャラリー ―― itokawa_curvature を選択して Run した直後(Output にグラウンドトゥルース検証つきの PASS)。
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↑ 3D Operators リファレンス ―― icp_point2plane のヘルプページ。
ここまでの機能が、実務でどう繋がるかを1つの流れで書いておきます。HDevelop で検査プログラムを組んだことがある人向けの想定です。
左パネルの OPERATORS で shape_locate や m1_measure_pos を検索し、ダブルクリックでパイプラインに挿入する。中央の SELECTED STAGE・KNOBS でつまみ a, b を動かしながら、右の IMAGE パネルで結果を都度確認する。しきい値が決まったら、Ctrl+E(Export)で --ops 文字列と Python 関数の両方を書き出し、そのまま自分の検査プログラムに埋め込む。途中でパラメータの当たりを付けるのに手間取ったら、変数ウォッチに region.sum() や np.percentile(v, 95) を登録して、しきい値をスライダーで動かしながら統計量がどう変わるかをリアルタイムに見る。うまくいかない箇所があれば、ステージを右クリックして Run from here でそこだけをやり直す――HDevelop の Program ウィンドウでブレークポイントを置きながら検査プログラムを組んだことがある人には、この一連の流れはそのまま馴染みがあるはずです。
設計は Studio、実行はコードという分担は、HDevelop から HDevEngine へ書き出す流れと同じ発想です。試行錯誤は GUI で、量産ラインへの組み込みは Export した Python 関数か JSON で――両者が同じ op・同じパラメータを共有しているので、「Studio で確認した通りに現場で動く」ことが構造として保証されます。
この流れに、「AI に画像処理をさせられる」の節で紹介した RAG を重ねると、もう一段短くなります。Claude Code に「この画像から傷を検出するパイプラインを組んで、Studio で確認できるようにして」と頼めば、AI が docs/ops からパイプラインの候補を書き、Studio の JSON 形式で保存する――そこから先を人間が Studio 上で微調整する、というAI が叩き台を作り、人間が Studio で仕上げる分業も、同じ op・同じパラメータ空間を共有しているからこそ成立します。設計思想の節で書いた「統一インターフェース」が、Studio・AI・量産ラインという3つの現場を、同じ言葉で繋いでいるわけです。
ここで少し肩の力を抜いて、科学館・博物館の展示室を巡るつもりで眺められるコーナーを置いておきます。以下はすべて Fullseye の登録 op の実出力で、モックアップは1枚もありません。素材の来歴は 2 種類に分かれます:
主役はあくまで処理の方です。各キャプションに使用 op を書いてあるので、「この絵はどの op で作れるのか」から逆引きできます。フル解像度と追加の展示は処理結果ギャラリー(docs/GALLERY.md)へ。
↑ 距離変換の虹の波紋 ―― コイン写真を白黒に分け、「ふちから何ピクセル離れているか」を虹色で塗ると波紋のような等高線が浮かぶ。使用 op: otsu, fill_up, distance_transform。
↑ フーリエの世界 ―― 画像を周波数で見ると「どんな細かさの模様がどの向きにあるか」が光の点になる。規則正しい織り目は星座のように光る(織り目パネルのみ合成)。使用 op: fft_image。
↑ watershed のぬりえ分割 ―― 水が低い所へ流れて溜まる様子をまねて、コインを 1 枚ずつ別の色に。使用 op: otsu, distance_transform, watersheds, colorize_labels。
↑ エッジの方位磁針 ―― 輪郭の向きを色相環の色で塗ると、同じ向きの線が同じ色に光る。使用 op: sobel_amp, sobel_dir。
↑ 単純ルールから生まれる 6 つの宇宙 ―― 「となりのマスを見て自分の色を決める」だけのルールから、フラクタル・カオス・砂山マンダラ・樹枝・珊瑚もようが生まれる(シミュレーション画像)。使用 op: alife_wolfram1d, alife_sandpile, alife_dla, alife_lenia, alife_cyclic_ca。
↑ トリケラトプスのレントゲン写真 ―― Smithsonian の骨格標本実スキャン(CC0)をボクセルに詰めて最大値投影(MIP)すると、レントゲン写真そっくりになる。肋骨も角も写る。使用 op: voxelize, vol_gaussian, vol_mip。
↑ 赤青メガネで飛び出すドラゴン ―― Stanford dragon 実スキャンを 2 視点からレンダして赤シアンで重ねたアナグリフ。赤青メガネで浮き上がります。使用 op: read_mesh, look_at, render_mesh。
↑ トリケラトプス山脈 ―― 骨格標本を 60 万点の点群にして真上から標高地図を作ると、背骨が山脈、肋骨が尾根になる。ロボットが地形を読むのと同じ op です。使用 op: sample_surface, elevation_map, colorize_height。

↑ 形が育つ・痩せる ―― 膨張(dilation)でコインがぷくぷく育って合体し、収縮(erosion)で痩せる。工場の画像検査でも使う基本の op です。使用 op: dilation_circle, erosion_circle。
↑ 空間がぐにゃり ―― 画像の下に見えないゴムのシートがあると思って、TPS / FFD / MLS という 3 つの流儀でつまんで引っぱった結果。使用 op: deform_tps, deform_ffd, deform_mls。
↑ 恐竜の影絵から骨格を取り出す ―― トリケラトプス骨格標本の影絵から中心線(スケルトン)を 1 ピクセル幅で抽出。足・角・しっぽが針金細工のように残る。使用 op: sk_skeleton, distance_transform ほか。
続いて分野別の展示室です。医学・考古学・生物学・宇宙・古生物学・地質学・気象学・海洋学・植物学 ―― どの分野の画像にも、同じ op 体系がそのまま刺さることを見てもらうコーナーです。ここから先のキャプション表記は上と同じルール(実データは出典リンク、AI 生成は明記)です。
↑ アンモナイト化石(Smithsonian Open Access, CC0)の螺旋を canny で抽出。使用 op: rgb1_to_gray, canny, overlay_mask。
↑ ティラノサウルス生体復元の皮膚テクスチャを std_filter / texture_laws で解析。素材は AI 生成(gemini-2.5-flash-image)の模擬データ(実在の標本ではありません)。
↑ トリケラトプス生体復元を multi-Otsu で領域分類。素材は AI 生成の模擬データ。使用 op: xsk2_multiotsu, colorize_labels。
↑ 羽毛恐竜の羽毛の流れを Gabor フィルタで解析。素材は AI 生成の模擬データ。使用 op: sk_gabor, std_filter。
↑ アンモナイト断面の対数螺旋を FFT スペクトルで観察。素材は AI 生成の模擬データ。使用 op: cv_clahe, cx_fft, cx_magnitude。
↑ 三葉虫の体節を gray_tophat で浮き彫り強調。素材は AI 生成の模擬データ。
↑ カリーナ星雲(NASA/STScI Webb, public domain)のフィラメント構造を、本来は血管強調用の sk_frangi で抽出。医学の op が天文に刺さる例。
↑ 火星の砂丘(NASA/JPL-Caltech/Univ. of Arizona, public domain)のテクスチャを std_filter / texture_laws で解析。
↑ 渦巻銀河(NASA GSFC, public domain)の周波数構造を cx_fft で可視化。
↑ 胸部X線風画像を cv_clahe + sobel_amp で強調・エッジ抽出。AI 生成の模擬データ(実在の患者・スキャンではありません)。
↑ H&E 組織切片風画像を multi-Otsu で組織構造分類。AI 生成の模擬データ。
↑ 脳 MRI 風画像を cv_clahe + unsharp で組織コントラスト強調。AI 生成の模擬データ。
↑ 血液塗抹風画像の血球を分割・計数(検出数 131)。AI 生成の模擬データ。使用 op: segment_objects(otsu), colorize_labels。
↑ 解剖図風イラストの輪郭を canny で抽出。AI 生成の模擬データ。
↑ 神経細胞蛍光像の樹状突起を sk_frangi でトレース。AI 生成の模擬データ。
↑ 珪藻顕微鏡像を分割・計数(検出数 123)。AI 生成の模擬データ。
↑ 深海生物の暗部を cv_clahe で増強。AI 生成の模擬データ。
↑ 蝶の翅の鱗粉の周期構造を sk_gabor で解析。AI 生成の模擬データ。
↑ アンフォラ(メトロポリタン美術館 Open Access, CC0)のシルエットを楕円フーリエ記述子(EFD)で形状復元。2 → 8 → 32 高調波と増やすほど輪郭に吸い付いていく ―― 考古学の土器形状分類で実際に使われる手法です。使用 op: otsu, fourierdesc.elliptic_fourier, fourierdesc.reconstruct。
↑ アッシリアの石碑レリーフ(メトロポリタン美術館, CC0)の彫刻を gray_tophat で浮き彫り強調。
↑ 洞窟壁画の消えかけた顔料を decorrelation stretch(岩絵調査の定番 DStretch と同系の手法)で強調。AI 生成の模擬データ。使用 op: principal_comp。
↑ 楔形文字粘土板の文字刻印を gray_tophat で強調。AI 生成の模擬データ。
↑ 衛星画像(NASA JSC, public domain)の岩相を decorrelation stretch(リモートセンシングの定番)で強調。
↑ アメジスト結晶のファセット稜線を canny で抽出。AI 生成の模擬データ。
↑ 岩石薄片(偏光顕微鏡風)を multi-Otsu で鉱物粒子に分類。AI 生成の模擬データ。
↑ ハリケーン(NASA JSC, public domain)の渦構造を勾配方向ホイール(sobel_dir + colorize_flow)で可視化。
↑ スーパーセル積乱雲を cv_clahe + unsharp で構造強調。AI 生成の模擬データ。
↑ サンゴ礁を multi-Otsu で被覆分類(海洋調査風)。AI 生成の模擬データ。
↑ シダの葉脈を sk_frangi で抽出。AI 生成の模擬データ。
↑ 花粉 SEM 風画像を分割・計数(検出数 41)。AI 生成の模擬データ。
この 41 展示のうち、実データにはすべて出典とライセンス(詳細な帰属表はACADEMIC_ATTRIBUTION.md)を、AI 生成には全点にその旨を付けました。おまけをひとつ ―― この「多様な実データを流す」作業は、それ自体がバグ発見器でもありました。合成データでは表面化しなかった op の不具合が実データで 5 件見つかり、公開前にすべて修正済みです(発見の経緯と回帰テストは docs/KNOWN_ISSUES.md)。きれいな展示の裏で、テストにもなっている ―― という一石二鳥でした。
既存の「科学館ウィング(11 点)」「博物館ウィング(30 点)」と題材が重ならないよう、
古典的な 2-D オペレータだけで組んだ一角です。すべて Fullseye の登録 op の実出力で、
素材は合成か skimage.data(BSD / public domain)。キャプションの数字は生成時の実測値で、
docs/articles/assets/_wing2d_meta.json に生の配列が入っています。
並べ方は 3 通り: タイル(並べて比べるもの)、フリップブック GIF(同じ寸法で工程が 進むもの)、掃引 GIF(軸ラベルつきのグラフが主役のもの)。1 枚・1 本を 1 展示と数えています。
再生成: py -3.11 tools/gen_wing2d_gallery.py(展示名を指定するなら --subjects <name,...>)。

↑ 形態学の 4 兄弟 —— どれが何を消すのか ―― 幅 2/4/6/8/10 px の棒と幅 2/4/6 px のスリットを刻んだ図形に、4 つの形態学 op を半径 1→4 px で当てた。膨張は面積を 39148→47296 px に増やし、収縮は 33212→25456 px に減らす。開は面積をほぼ保ったまま細い棒だけを落とし (r=1 で 4/6/8/10 px が生き残り、r=4 では 10 px だけ)、閉は細い隙間だけを埋める (r=1 で幅 2 px、r=4 で幅 2/4/6 px のスリットが消える)。使用 op: threshold, erosion_circle, dilation_circle, opening_circle, closing_circle, morph_grad。

↑ 周波数フィルタの効き ―― 同じ写真にローパス・ハイパス・バンドパスを当て、遮断周波数を 0.05→0.45 (正規化) で掃引した。ローパスの遮断を 0.05 から 0.45 へ上げると 元画像との PSNR は 22.33→36.13 dB。一方その通過帯に入っているスペクトルエネルギーは遮断 0.05 の時点ですでに 98.27% —— 「エネルギーのほとんどは低周波にあるのに、見た目は高周波が決めている」という画像の癖がそのまま数字に出る。帯域を落とせば応答は必ず符号を持つが、highpass と bandpass_image はその 0 を 0.5 に写した [0,1] を返す —— この掃引の全 9 点で最小値は 0.0201 / 0.0205、負の画素は 0.0% だった (画素の約半分が無言で黒に潰れる実装ではもう無い)。使用 op: fft_image, lowpass, highpass, bandpass_image。

↑ ノイズ除去の比較 —— median / bilateral / NLM ―― 同じ写真に σ=0.020→0.220 の白色ノイズを乗せ、median・bilateral・non-local means を固定パラメータで当てて PSNR を実測した 6 パネル。弱いノイズ (σ=0.020) では bilateral が 30.00 dB で最良だが、強いノイズ (σ=0.220) では median が 23.09 dB で逆転する —— 「どれが一番強いか」はノイズ量と設定次第で、掃引の途中で順位が 2 度入れ替わった。ノイズ画像そのものは 34.04→14.34 dB。同じ画像を estimate_noise に渡すと 0.0263→0.1920 が返り、真値の 131%→87% にあたる —— 上端に張り付く点は 0/9 で、σ が 3 倍違えば返り値も違う (この op は σ そのものを返す契約になった)。使用 op: add_noise_white, median, bilateral, sk_nlm, estimate_noise。

↑ ヒストグラム整形 —— clahe の clip limit を振る ―― 文書画像のコントラストを 1.00→0.16 倍まで潰していき、equalize と clahe で戻せるかを追った。見どころは clahe の第 2 引数 b = clip limit(ビン平均カウントに対する倍率 256^b。b=0 → ×1 = 強調ゼロ、b=1 → ×256 = 切り取りが一度も効かない素の AHE、OpenCV 既定の clipLimit=40 は b≈0.665 相当)。入力の標準偏差が 0.2228→0.0356 まで落ちるとき、b=0.00 は 0.2169→0.0537、b=0.50 は 0.2403→0.1709、b=1.00 は 0.2379→0.2510。同じ 1 枚に対する b=0 と b=1 の画素差は最大 0.7169 まで開く —— つまみ 1 本で「入力の潰れをどこまで無視して持ち上げるか」が決まる。equalize は画像全体を 1 枚の写像で平坦化するので 0.2931→0.2994 と最後まで幅を保つが、その代わり照明ムラは残ったままだ。使用 op: equalize, clahe, gray_histo_abs, entropy_gray。

↑ 楕円フーリエ記述子 —— 何次で形が戻るか ―― 1557 点の輪郭を楕円フーリエ記述子に直し、高調波を 1 次から 24 次まで足しながら復元した。1 次 (楕円 1 個) では最近傍 RMS 誤差 25.39 px、15 次で 1 px を切り、24 次では 0.45 px。誤差が大きく落ちるのは 2・4・6 次を足したときで、偶数次を足したときの平均低下 1.955 px に対し奇数次では 0.134 px しか下がらない —— r = 146 + 40sin3θ + 20cos5θ + 12sin9θ という作り方が、閉曲線としては n±1 次(= 偶数次)に現れるためだ。使用 op: gen_region_polygon_filled, gen_contour_region_xld, elliptic_fourier, reconstruct。

↑ 対応点モーフ —— 単純合成との違い ―― 対応点 11 個 (輪郭の楕円上 8 点 + 両目 + 口) だけを与えて顔 A から顔 B へモーフさせた 6 パネル。対応点を使わない単純合成は途中で二重像になるが、piecewise affine と TPS は輪郭も目も口も対応させたまま連続的に動く。両端は入力を厳密に再現し (α=0 で A と PSNR 99.0 dB、α=1 で B と 99.0 dB = 完全一致の上限値)、2 つのワープ方式の差は α=0.5 で平均 0.00802 にとどまる。使用 op: morph (imagemorph), warp_piecewise_affine, warp_tps_image, blend。

↑ ブロブ解析 —— 真円度で粒を選り分ける ―― 円 8 個・楕円 1・四角 1・板 2・三角 1 を混ぜた合成シーンを二値化 → 穴埋め → ラベル付けし、blob_count が 13 個と数えた。真円度 (circularity) 0.85 をしきい値にすると採用 8 個 (真円度 0.912〜0.916)、不採用 5 個 (0.416〜0.797) にきれいに割れる —— 特徴空間の散布図でも 2 つの群がしきい値をまたいで重なっていない。5 コマ目の十字は area_center が返した中心で、この op は (面積比, 行, 列) の 3 成分を [0,1] 正規化して返す —— 画素に戻して独立に計算した重心と比べると差は最大 0.000 px、13 個すべてが自分の粒の上に乗った。使用 op: threshold, fill_up, blob_count, colorize_labels, circularity, eccentricity, rectangularity, area_center。
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↑ サブピクセル計測 —— 画素より細かく測る ―― ガウスぼけしたエッジの真の位置を 0.05 px 刻みで 1 画素ぶん動かし、measure_pos の推定と「勾配が最大の画素」を比べた。サブピクセル推定の誤差は RMS 0.0119 px・最大 0.0170 px、画素単位の推定は RMS 0.282 px・最大 0.50 px。同じ画像・同じエッジで 24 倍の差が出る —— 画素の格子は、測れる細かさの限界ではない。使用 op: gen_measure_rectangle2, measure_pos (m1_measure_pos)。

↑ 形状マッチング —— 回っていても見つける ―― 96×96 px のテンプレートから作った形状モデルで、23° ずつ回した部品 (探索格子 5° の倍数を避けた角度) を 16 枚のシーンから探した。5° 刻みで角度も探索させると、角度の誤差は最大 2.0°(探索格子 5° の半分 = 2.5° がそもそもの下限)、位置の誤差は最大 0 px、スコアは最低でも 0.864。1 シーンあたり約 2.4 秒(CPU、72 角度ぶんの探索を含む)。使用 op: create_shape_model, find_shape_model (角度探索つき)。

↑ 帳票の傾き補正 → 二値化 → バーを数える ―― 合成の帳票を 0→42° と傾けながら、回転角を 0.5° 刻みで振って「行方向プロファイルの分散が最大になる角」を探した。推定誤差は全域で最大 0.0°(11° のときは真値どおり 11.0°)で、補正後の decode_barcode はどの傾きでも真値の 8 本を返す。補正しないと 30° で 7 本に落ち、42° では 5 本まで取りこぼす —— 前処理を 1 段挟むかどうかで、同じ op の答えが変わる。なお rotate_image は reshape=False + mode=’reflect’ なので、回すと四隅に元の文字が鏡映で折り返して写り込む(この展示では消していない)。使用 op: rotate_image, otsu, decode_barcode。

↑ 輪郭の当てはめと残差 ―― 縁が 72 px 欠けた円と直線に、輪郭からの当てはめを掛けた 6 コマ。輪郭の全点で当てると半径は真値 210.0 px に対し 206.95 px (誤差 -3.05 px、残差 RMS 12.96 px) —— 欠けの縁が当てはめを引っ張っており、残差 3σ を超える 91 点を落として当て直すと 209.19 px (誤差 -0.81 px、RMS 6.21 px) まで戻る。直線は真値 73.20° に対し 73.21°(誤差 +0.006°)で、「当てはまった値」より「合わなかった場所」の方が情報が多い。使用 op: threshold, opening_circle, gen_contour_region_xld, sobel_amp, fit_circle, fit_line。
↑ 色空間ツアー —— どの空間なら分けられるか ―― 同じ赤で塗った 2 つの円を、左は 0.35 倍・右は 1.0 倍の明るさで照らした合成シーンを 6 チャンネルで見た 9 パネル。1 本のしきい値で赤い 2 円を取り切れるかを IoU で測ると HSV の H (色相)・Lab の a (赤-緑) が 1.000 に届き、Lab の L (明るさ) は最良でも 0.250 —— 明るさを含むチャンネルでは、同じ色が照明で 2 つに割れてしまう。なお HSV の H は cv2 由来で 0..179 を 255 で割った値、つまり度÷510 で返る(純緑 120° が 0.2353 —— 実測して確かめた単位)。使用 op: trans_from_rgb, access_channel, rgb1_to_gray。
↑ テクスチャの見分け —— 特徴量で模様を分ける ―― 3 種類の模様を 64×64 px の小片 48 枚に切り分け、GLCM energy・entropy・標準偏差・ノイズ推定・4 方向の Gabor 応答の 8 個を特徴量にして leave-one-out の最近傍重心で分類したところ 47/48 = 97.9% が正解だった。見た目が似ていても、GLCM energy は 0.236 / 0.148 / 0.212 と離れている —— 「模様」は数字にできる。Gabor の 4 方向は、模様が向きを持つかどうかをそのまま映す: レンガは横目地が効いて θ=0°/45°/90°/135° の平均応答が 0.01072 / 0.00680 / 0.02997 / 0.00676 と θ=90° に偏り (最大÷最小 4.43 倍)、縦横が同居する織り目は 0.01763 と 0.01778 でほぼ同値、方向を持たない 1/f 粒状も同じ 1.35 倍にとどまる。向きで割れない織り目と粒状を分けているのは応答の絶対値で (0° の平均が 0.01763 対 0.01292)、これは gabor がカーネルの L1 ノルムで割る固定スケールを返すから残る量だ —— 画像ごとの最大値で割る正規化では、向きごと・模様ごとに別の数で割ってしまいこの差は消える。使用 op: cooc_feature_matrix, entropy_gray, gray_histo_abs, estimate_noise, gabor, sk_lbp。
↑ 回し続けると何が失われるか (リサンプリング損失) ―― 同じ画像に 10° の回転を 36 回かけると、幾何としては一周して元の向きに戻るのに、画素は戻らない。中央部だけで測っても元画像との PSNR は 26.81 dB、中央の「細かさ」(画像 − ローパスの標準偏差) は元の 64.4% まで落ちる(画像全体では 23.98 dB。その差の大半は端の処理 —— rotate_image は reshape=False + mode=’reflect’ —— によるもので補間の損失ではない)。ついでの実測として zoom_image_factor / zoom_image_size / rescale_img の 3 op は それぞれ別実装で、同じ入力 (a=0.9, b=0.5) に対する最大差は factor↔size 0.973 / factor↔rescale 0.966。使用 op: rotate_image, gauss_image, zoom_image_factor, zoom_image_size, rescale_img。
ボクセルと点群を 測る ための一角です。すべて Fullseye の登録 op の実出力で、素材は合成データのみ(実データ・AI 生成素材は使っていません)。図に焼き込んだ数字は 1 つ残らずその場の計算結果で、乱数は seed 20260902 固定なので再生成でバイト列が一致します。
断層(スライスを送る)ものは静止画にせず GIF にしてあります。各コマに位置・単位・実測値を焼いてあるので、止めた 1 コマだけでも読めます。

↑ 処理領域(domain)でメモリが 1/84 になる ―― 192³ の視野に浮かぶ合成部品を輪切りで送りながら、元ボリューム・domain マスク・切り出し後・貼り戻しを並べた。前景は全体の 0.42 % しかないので、vol_crop_domain でメモリは 56.62 MB → 0.678 MB(1/83.5)、同じ vol_gradient_magnitude が触る voxel も 7,077,888 → 84,747(同じく 1/83.5)。壁時計の実行時間も実測しているが、再生成のたびに変わるので図には焼かず _wing3d_meta.json に置いた。vol_uncrop の貼り戻しは元と bit 一致。 使用 op: vol_bounding_box, vol_crop_domain, vol_reduce_domain, vol_uncrop, vol_gradient_magnitude。

↑ 境界だけ持つと 6 % に痩せる ―― 中実の球(267,731 voxel)を vol_boundary で内側 1 層の殻にすると 6.1 %(16,418 voxel)まで痩せる。その殻を vol_boundary_points で mm 座標の点群にして fit_sphere3 に渡すと、中心誤差 0.000 mm(真値 (25.6, 25.6, 25.6) mm)。半径だけは -0.175 mm ずれる — 殻が「内側 1 層」だからで、これは消さずに図に書いてある。 使用 op: vol_boundary, vol_boundary_points, fit_sphere3。
↑ run-length で 1/71 ―― 256³ の合成部品を run-length で持つと 1/71(16.78 MB → 0.237 MB、19,764 run)。しかも展開せずに体積 1,610,948 voxel を dense を一度も作らずに返し、集合演算(球 ∪ 軸 = 1,508,456 voxel)も run のまま解ける。decode の往復は bit 一致。所要時間も実測してあるが、壁時計は再生成のたびに変わるので図には焼かず _wing3d_meta.json に置いた。 使用 op: vol_rle_encode, vol_rle_decode, vol_rle_volume, vol_rle_bbox, vol_rle_centroid, vol_rle_union, vol_rle_intersect, vol_rle_difference。

↑ CT の「窓」で同じ体が 3 通りに見える ―― 同じ合成 HU ボリュームを vol_window_level の 3 つの窓で見る。軟部組織窓では体積の 67.1 % が黒へ潰れ肋骨は白飛びし、骨窓では白飛びが 0.0 % まで下がって骨梁が読め、肺野窓では黒潰れが 0.0 % で肺の中身が出る。下の折れ線が窓そのもの(HU → [0,1] の一次写像 + クリップ)。 使用 op: vol_window_level。
↑ Frangi 対 Sato ―― 否定対照(粒状度)を並べて初めて分かる ―― 管 1 本と球 2 個だけの合成 CT に、管状度 2 種と粒状度 1 種を掛けた。vol_frangi は管を球より 1.26 倍強く出すが、vol_sato は 0.97 倍でほとんど区別しない。否定対照の vol_hessian_blobness は 0.32 倍 = 管より球を選び、向きがきれいに逆転する。「血管が光った」だけでは管状度の証明にならない、という当たり前を図にした。 使用 op: vol_frangi, vol_sato, vol_hessian_blobness。

↑ 3-D スケルトンをグラフにする ―― 合成した枝分かれ構造(8,690 voxel)を skeletonize_vol に通すと 192 voxel の 1 voxel 幅の針金になる(2.21 %)。そこから枝 4 本・分岐 1 か所・端点 4 点をグラフとして取り出した。白が分岐、ローズが端点、枝は連結成分ごとに色分け。ターンテーブルで1 周するとつながり方が読める。 使用 op: skeletonize_vol, skeleton_branches3d, skeleton_junctions3d, skeleton_endpoints3d。
↑ virtual probe で壁厚 2.000 mm(真値 2.000 mm) ―― 外径 10.000 mm / 内径 8.000 mm の合成パイプにプローブを 1 本だけ刺す。vol_edge_probe が 4 つのエッジをサブサンプル精度で拾い、vol_wall_thickness が立ち上がり→立ち下がりの対から壁厚 2.0000 mm / 2.0000 mm(真値 2.000 mm)を返す。平滑化 sigma を 3.0 まで上げると 2.1252 mm (+6.3 %)に太る — ノイズ対策がそのまま寸法の偏りになる、という測定の基本も一緒に。 使用 op: vol_profile_line, vol_edge_probe, vol_wall_thickness。

↑ Richardson-Lucy ―― 前方一貫性 0.033x に対し真値 RMSE は 0.689x ―― sigma 2.0 のガウス PSF でぼかした合成ボリュームを vol_richardson_lucy で反復復元する。復元をもう一度ぼかして観測と比べる前方一貫性は 0.033 倍まで一気に落ちるのに、真値との RMSE は 0.689 倍までしか下がらない。残っているのは球のふちの階段で、「観測をよく説明できた」ことは「真値に近い」ことではない ―― という反例をそのまま展示にした。 使用 op: vol_gaussian_psf, vol_richardson_lucy。

↑ visual hull ―― 影を重ねて形を削り出す ―― L 字の合成物体を 16 方向から撮ったシルエットで visual_hull を彫る。1 枚では真の体積の 5.12 倍という柱状の塊だが、枚数を足すと 16 枚で 1.24 倍(IoU 0.755)まで縮む。ただし L 字の凹みは何枚重ねても埋まらない ―― これは実装の粗さではなく visual hull の原理的な限界で、収束先が真値でないことが図から読める。 使用 op: visualhull.look_at, synthesize_silhouette, visual_hull。

↑ 外から抱く箱(OBB)と中に入る箱(inner_box3) ―― z 軸まわりに 30° 傾けた合成直方体(13,617 voxel)に 3 つの箱を同時に描いてターンテーブルで 1 周させた。軸平行の AABB は voxel 数の 1.99 倍まで膨らむのに、obb(PCA で向きを合わせた外接箱)は 0.94 倍まで縮み、半幅は 19.99 / 10.00 / 8.00 voxel (真値 20 / 10 / 8)とほぼ真値。1 倍を切るのは、点群が voxel の「中心」の集まりでその外接を測っているから(縁の半 voxel が入らない)。逆に inner_box3 の最大内接箱は 0.32 倍まで痩せる。掴み幅を決めるなら OBB、中を部品が通るかを見るなら内接箱。 使用 op: obb, inner_box3, vol_bounding_box。

↑ 点群レジストレーション ―― ICP 29 回 / GICP 5 回 ―― 合成した表面点群(3100 点)を 22° 回して平行移動したものを、icp_point2point_3d で戻す。初期 RMSE 3.804 が 29 反復で 1.8e-14 まで落ち、復元した姿勢の誤差は回転 1.7e-06 度・並進 5.6e-15。面の共分散を使う gicp は同じ答えに 5 反復で着く。 使用 op: icp_point2point_3d, gicp。
↑ 異方性ボクセル ―― spacing を忘れると体積が 4.17 倍 ―― z だけ粗い spacing (1.5, 0.4, 0.4) mm/voxel でサンプリングした合成だ円体(真の体積 19301.9 mm³)。vol_region_props に spacing を渡せば 19273.2 mm³(-0.15 %)だが、渡し忘れると 80305(+316 %、4.17 倍)になる。例外は飛ばない。もっともらしい数字が静かに返るだけ、というのがこの展示の要点。 使用 op: vol_label, vol_region_props, vol_boundary_points。

↑ MIP と X 線投影のターンテーブル ―― 合成 CT ボリューム(96³)を render_volume_projection で 1 周させた。左は最大値投影(MIP、骨窓)で光線上の最大値だけを拾うので骨が浮き、右は減衰積算(X 線)で厚みが出る。投影 投影は 72 枚(所要時間の実測は _wing3d_meta.json)。正規化の上限は全フレーム共通にしてある ―― 1 枚ごとに正規化すると回転中に明るさがちらついて、形の変化と見分けがつかなくなる。 使用 op: vol_window_level, render_volume_projection。

↑ 距離変換で局所の太さを測る(最大内接半径 4.528 mm) ―― 合成した 3 本の管に vol_distance_transform を掛けると、各ボクセルが「ふちから何 mm 離れているか」になる。その最大値が最大内接球の半径 = 局所の太さで、実測 4.5277 mm(真値 4.500 mm、差 +0.0277 mm — 離散格子でふちが半 voxel 内側に来るぶん)。虹の等高線は 0.5 mm ごと。 使用 op: vol_distance_transform。
↑ 連結性の定義だけで殻の厚みが 1.9 倍変わる ―― 半径 30 voxel の合成球(112,931 voxel)の殻を、vol_boundary の connectivity(6 / 18 / 26)と side(inner / outer)だけ変えて 6 通り取った。面だけ触れる 6 近傍の内側殻は 9,170 voxel(8.12 %)、斜めの接触も数える 26 近傍の外側殻は 17,570 voxel(15.56 %)で、同じ形なのに 1.92 倍違う。「表面のボクセル数」という言い方が定義抜きでは意味を持たない、という 6 枚。手前半分を切って厚みが見えるようにしてある。 使用 op: vol_boundary。

↑ CT のかたまりが寸法になるまで(7 工程) ―― ノイズ付きの合成 CT(176³、spacing 0.6 mm)が寸法になるまでの 7 工程をコマ送りに束ねた。窓 → 二値化 → ラベリング(連結成分 1 個)→ 最大成分(5816.9 mm³、球形度 0.4702)→ vol_crop_domain でメモリ 1/7.7 → 細線化(枝 5 / 分岐 2 / 端点 4)→ 距離変換で最大内接半径 4.8374 mm(真値 4.800 mm)。各コマに工程名と進捗が焼いてあるので、止めた 1 コマでも読める。 使用 op: vol_window_level, vol_label, vol_region_props, vol_crop_domain, vol_uncrop, skeletonize_vol, skeleton_branches3d, skeleton_endpoints3d, skeleton_junctions3d, vol_distance_transform。

↑ 断層を送る ―― z = 48 / 95 は 38.40 mm のこと ―― 合成 CT(96×128×128、spacing (0.8, 0.3, 0.3) mm)を 1 スライスずつ 96 コマ送る。各コマに添字と物理位置の両方(z = 48 / 95 = 38.40 mm)と位置バーを焼いた。1 スライス送りは 0.80 mm、面内 1 画素は 0.30 mm = 0.37 倍なので、下の折れ線のとおり「添字を 1 つ動かす」は軸ごとに違う距離を意味する ―― 異方性 CT でいちばん踏みやすい段差。 使用 op: vol_window_level。

↑ 3 直交断面(MPR)とクロスヘア ―― 同じ 1 点を 3 方向から見る MPR。axial(vol[z])・coronal(vol[:, y, :])・sagittal(vol[:, :, x])を横に並べ、らせん状の目印を追いながら 3 本のクロスヘアを同時に動かした。各パネルにどの軸が横でどの軸が縦かを書き、+x に球・-y に横棒・+z にリングという非対称なランドマークを入れてある ―― 軸の入れ替わりや左右反転が起きたら、この 3 つの位置がずれて必ず露見する(3 直交断面そのものは配列の基本スライス、コントラストは vol_window_level、線は imagedraw の op)。 使用 op: vol_window_level, imagedraw.draw_line。

↑ 斜めに切ると円が楕円になる(長径は 1/cos で伸びる) ―― 半径 5.00 mm の合成円柱を、切断面を 0° から 70° まで倒しながら切る(vol_rotate の逆回し)。短径は角度によらず 10.000 mm のままなのに、長径は 2r / cos θ に沿って伸び、70° では 29.238 mm = 2.92 倍になる。36 角度(0°〜70°)すべてで理論値との差は最大 0.0000 mm(0.00 画素)。「斜めの断面で測った直径」をそのまま寸法にしてはいけない、という一本。 使用 op: vol_rotate。

↑ CT の窓を掃引する ―― 見えるものは窓が決めている ―― 同じ 1 枚の断面に vol_window_level の窓だけを 70 通り当てる。center を動かすと明るさの基準が、width を動かすと捨てる範囲が変わる。各コマに center / width の実数値と、黒潰れ・白飛びの割合、6 つの組織が「いま何色に見えるか」を焼いた。軟部窓では骨が 1.00 で飽和し、骨窓では軟部と肺が 0 付近に沈む ―― どちらも情報を捨てている、というのが 1 本で見える。 使用 op: vol_window_level。

↑ 等値面のしきい値で面が育ち、くびれ、割れる ―― 2 つの球をぼかして重ねた合成ボリュームに voxel_to_mesh(marching cubes)を掛け、level を 0.06 から 0.82 まで 40 段階で動かした。表面積は 6679 → 2842 voxel² へ縮み、level 0.742 を超えると 1 つだった面が 2 つに割れる。各コマに level・頂点数・三角形数・表面積・連結成分数を焼いてある。しきい値を書かない 3D 計測は再現できない、ということでもある。 使用 op: voxel_to_mesh, mesh_area。

↑ 管に沿って切る ―― 軸に直交しないと内径が 1.13 倍に太る ―― 28° 傾いた合成管(中央に狭窄)を 49 断面ぶん送る。軸に直交する断面で測った短径は真の内径をほぼそのまま返す(平均誤差 0.0206 mm)のに、素朴に z 方向へ切った断面の長径は 1/cos θ = 1.133 倍に伸びて平均 0.5776 mm ずれる。狭窄部では真値 2.801 mm が素朴断面では 3.217 mm ―― 狭窄が浅く見えてしまう。 使用 op: vol_rotate。
↑ 重ねると雑音は sqrt(N) で減る ―― 合成星野なので真値が分かっており、雑音は残差そのもので測れる。1 枚の残差 RMS は 16.507 e-(空 200 + 読み出し 8 e- から予測される 16.248)で、64 枚まで倍々に重ねると改善は sqrt(N) から最大 1.1 % しか外れない。下段の右 2 枚は残差そのものを同じ尺度で塗ったもので、1 枚では画面いっぱいに散っていたものが 64 枚では見えなくなる ―― 星の位置には何も残っていない(発散配色。赤緑の対は使っていない)。使用 op: synth_frame_series, sigma_clip_stack, noise_sigma。
↑ lucky imaging —— 品質点で並べ替える ―― 大気が良い瞬間ほど、同じ総フラックスが少ない画素に集まる。だから選別基準は「基準星のピーク割合 x 真円度」で、これは露出やゲインを変えても動かない。16 枚を点の高い順に並べたのが上位 8 枚で、点と FWHM の相関は-0.964(FWHM 3.29 〜 6.21 px)。青が採用、灰が不採用。使用 op: synth_frame_series, frame_quality, lucky_select。

↑ 上位何 % を採るか —— 鋭さと雑音の取引 ―― 全部(16 枚)から上位 12 %(2 枚)まで絞ると、合成後の FWHM は 4.319 -> 3.294 px と 23.7 % 良くなる。ただし枚数が 8 分の 1 になるので背景の雑音 σ は 3.517 -> 8.675 e- と 2.47 倍に増える(sqrt(16/2) = 2.83 倍という予測とほぼ一致)。lucky imaging は「改善」ではなく取引であり、その両側を同じ図に出すのが正直な出し方。なお雑音の指標には「真値との残差 RMS」を使っていない —— この実験はわざとフレームごとに FWHM を変えているので、残差には PSF のずれまで入ってしまい、増えたのが雑音のせいか像が変わったせいか区別できない。使用 op: lucky_select, sigma_clip_stack, frame_quality。
↑ 宇宙線の消え方 —— 尖りで見分ける / 枚数で見分ける ―― 宇宙線は光学系を通っていないので星より尖る。ラプラシアンを 2 倍標本化して微細構造と比べると、植えた 44 画素に対し 39 画素を検出して適合率 0.949 / 再現率 0.841 ―― 星の中心を 1 つも拾わないことが要点。合成なので「宇宙線だけ無い同じ観測」を作れて、正解からのずれそのものを測れる: 100 e- 以上ずれた画素は 44 -> 9、ずれの総量は 84 % 除去される。ここでフレームの最大値を指標にしてはいけない —— それは一番明るい星の値で、除去の前後で 7000 -> 7000 e- と動かない(再現率が 1 未満である限り、見逃した 1 画素が最大値を押さえ続ける)。枚数がある場合はもっと簡単で、8 枚を素直に平均しても宇宙線は 1/8 に薄まって残り正解から 1750 e- ずれるのに対し、κ-σ 合成は検出も置換もせずに 45 e-、フレーム間比較で先に除去すれば 7 e- になる。使用 op: synth_starfield, cosmic_ray_reject, cosmic_ray_reject_stack, sigma_clip_stack, star_detect。
↑ drizzle は面積を保存する ―― 入力画素を一回り縮めた「しずく」として出力格子へ面積比で撒くので、しずくが格子の内側にある限り総和は動かない。pixfrac 1.0 / 0.7 / 0.4 x 倍率 x1〜x4 の 12 通りすべてで相対誤差は最大 6.3e-15 ―― これは「ほぼ保存」ではなく倍精度の丸めそのもの。被覆マップ wht の平均が pixfrac の 2 乗にきっちり一致するのも、撒き方が面積で定義されていることの裏取りになる。入力の総和は 306035.5635 e-。使用 op: synth_frame_series, drizzle_resample。

↑ drizzle —— しずくを小さくすると像が立ち上がる ―― 真の FWHM 1.15 画素、つまりナイキストを破った星野を 24 枚、1.5 画素のディザで撮る。1 枚では FWHM 1.357 画素にしか見えず、そのまま平均すると 1.991 画素とかえって鈍る(ずれを平均するから)。同じずれを drizzle に渡すと pixfrac 1.0 / 0.6 / 0.3 で 1.574 / 1.450 / 1.399 入力画素まで立ち上がり、そのあいだ総フラックスは縁から出た 0.76 % 以外一切動かない。しずくを小さくするほど鋭くなる代わりに覆われない出力画素が出る(被覆 wht の最小が 0.041 まで下がる)—— これが drizzle の唯一の調整点。使用 op: synth_frame_series, drizzle_resample, sigma_clip_stack, frame_quality。
↑ 間隔 1.6 画素の二重星 ―― sigma 0.55 画素の星を 2 つ、1.6 画素だけ離して 24 枚ディザ撮影する。平均合成では 1 個しか立たないのに、同じ生データを drizzle x3 (pixfrac 0.4)に通すと 2 個に分かれる。解像度は「上げた」のではなく、ディザという形で既に撮れていた情報を捨てずに拾っただけ。「分かれた」を主観にしないため、対を横切る行の谷の深さも測ってある: 平均合成 0.0 %(谷が無い)に対し drizzle は 5.9 %。4 枚目は同じ drizzle の生の sci(被覆で割っていない像)で、そこに検出をかけると被覆の格子が 200 個の偽の星になる ―― 総フラックスを保存する像と、目で見る像は別の量である。使用 op: drizzle_resample, sigma_clip_stack, star_detect。

↑ σ クリップの破綻 —— 折れ目はちょうど 50 % ―― 20 枚のうち先頭 k 枚に +900 e- の汚染を入れ、割合を 0 から 60 % まで上げていく。45 % までは誤差 -0.080 e- と、汚染ゼロのとき(-0.034 e-)と変わらない答えを返す。ところが ちょうど 50 % で誤差は +450.0 e-(汚染量のちょうど半分)、55 % で +900.0 e-(汚染量そのもの)に跳ぶ。これは実装の不具合ではなく中央値の破綻点そのもので、半数を超えた時点で中央値が汚染側の母集団に乗り、クリップは正しいフレームの方を捨てる(棄却率は 47.4 % のまま働いているのに、捨てる側が入れ替わっている)。最後のコマの折れ線がその証拠で、中央値そのものも同じ 50 % で折れる(55 % で +883.6 e-)一方、単純平均は最初から汚染に比例してずれ続ける(+495.0 e-)。直せない限界は、直せるふりをせずそのまま展示する。使用 op: synth_frame_series, sigma_clip_stack。
↑ 位置合わせ —— 星は互いに見分けがつかない ―― 星野に記述子マッチングは効かない。星は全部同じ形なので Lowe の比検定がほとんど全部を捨ててしまう。代わりに使うのは配置の幾何 ―― 全ペアの差ベクトルを投票させ、最頻値を粗い平行移動とし、既存の 2-D 点対応 RANSAC で誤対応を落として Umeyama で当てはめる。9 枚・最大 6.0 画素のディザで、ずれの推定誤差は中央値 0.0359 画素(内点 中央値 33 対応、残差 RMS 0.112 画素)。位置合わせせずに平均すると FWHM 5.310 px、合わせてから平均すると 3.077 px。使用 op: star_detect, frame_align, align_frames, sigma_clip_stack, frame_quality。
↑ 既知フラックスを測り返す ―― 合成星の総フラックスは 10000 e- とこちらが決めた値で、erf による画素の厳密積分で描いてあるので画像の総和もそれに一致する。半径 8 sigma の開口で測ると 4 つの尺度すべてで誤差 0.0000 % ―― 文字どおり測り返す。半径 3 sigma に絞ると -0.968 % 〜 -0.095 % の負のずれが残るが、これはバグではなく画素化である: 開口の縁の画素を「画素平均 x 面積比」で代表すると、円の内側ほど明るいぶん必ず少なく出る。ずれが sigma の2 乗で消える(sigma 1.0 -> 3.0 で 10.1 倍小さくなる)ことがその証拠。使用 op: synth_starfield, aperture_photometry。

↑ 投影からボクセルまで、CT の一本道 ―― ファントム → 投影 → サイノグラム → 再構成 → 窓 → 分離 → ボクセル → メッシュ の 8 工程。体積が閉形式で分かる部品(真値 16839 mm³)を 128 本の投影から作り直すと 16896 mm³(+0.3%)になった。再構成 nRMS 0.0177、メッシュ 67744 面、境界点群 27696 点。使用 op: radon_volume, fbp_volume, vol_window_level, vol_label, vol_region_props, marching_cubes, vol_boundary_points。

↑ 投影数を増やすと像が立ち上がる、が体積はそれを教えない ―― 同じ被写体を 8 / 16 / 32 / 64 / 128 本で撮り直す。16 本以降、再構成の nRMS は 0.2341 → 0.0334 と 7.0 倍良くなるのに、体積は +0.38% → +0.34% と 0.04% しか動かない ―― ストリークは物体のまわりに正負が対称に出るので、体積という 1 つの積分量では相殺して消えてしまう。8 本だけは別で、そこは体積 +3.4% も含めて指標そのものが信用できない領域(同じ部品を面内 128 画素で測り直すと -0.0% になり再現しない)。壊れを教えるのは体積ではなく連結成分の数(175 個 対 1 個)。使用 op: projection_angles, ellipse_sinogram, filtered_backprojection。
↑ 同じものをタイルでも ―― 左上が真値、以下が 8 / 16 / 32 / 64 / 128 本。ラベルは再構成 nRMS と体積誤差。8 本ではストリークで頭蓋の内側がまったく読めず、16 本でもまだ縞が残る。ところが体積誤差のほうは 16 本ですでに +0.38% で、128 本の +0.34% と見分けがつかない ―― 絵が良くなっていく過程が、体積という 1 つの数字には現れない。使用 op: ellipse_phantom, ellipse_sinogram, filtered_backprojection。

↑ 回転中心が半画素ずれると、もう二重像になる ―― 0 / 0.5 / 1 / 2 画素。再構成の nRMS は 0.0250 → 0.0537 → 0.1016 → 0.1630。半画素で誤差が 2.1 倍になるが、見た目は「少し眠い画像」で、間違いには見えない。sinogram_center_of_rotation は重心の恒等式からこれを 0.0029 px の誤差で当てる。使用 op: sinogram_center_shift, sinogram_center_of_rotation。
↑ 角度範囲が足りないと、特定の向きの輪郭だけが消える ―― 180 / 120 / 90 / 60 度。中心スライス定理どおり、撮らなかった角度の帯だけが空になる。30 度ごとの周波数保持率で見ると、90 度スキャンでは撮った側が 0.96 を保つのに撮らなかった側は 0.07 まで落ちる。全体がぼけるのではなく方向が消えるので、残った方向は鋭いままで、それが説得力を持ってしまう。使用 op: ellipse_sinogram, filtered_backprojection。
↑ ビームハードニング ―― 一様な円板の中心がへこむ ―― 実際の X 線は単色ではないので、厚い経路を通った線ほどビームが硬くなり、線積分が経路長に比例しなくなる。一様な円板の中心/縁の比が 1.0006 → 0.9335 に沈み、beam_hardening_correct が 1.0006 に戻す。差分図(青=減った / 橙=増えた)が、沈んだのが中心だけであることを示す。使用 op: beam_hardening_apply, beam_hardening_correct。
↑ リング偽像 ―― 検出器 1 画素の狂いが 1 本の円になる ―― ゲインが g の検出器は対数を取ったあと どの角度でも同じ定数だけずれる。定数の列を逆投影すると回転軸まわりの完全な円になる。ゲインばらつき 2 % で nRMS が 0.0250 → 0.0643(2.6 倍)、ring_artifact_remove で 0.0358(被害の 72% を回復)。使用 op: ring_artifact_apply, ring_artifact_remove。
↑ 体積の答え合わせ ―― 何が効いて、何が効かないか ―― 真値 16839 mm³(閉形式)、この格子で二値化しただけの天井が 16863 mm³。左は投影数 16→128 で振れ幅 8 mm³(8 本を含めると 522 mm³ になるが、その点は格子を変えると再現しない)、右は二値化しきい値 0.30→0.70 で振れ幅 533 mm³。しきい値の任意性のほうが 71 倍効くので、体積を報告するときに書くべきなのは「何本で撮ったか」より「どのしきい値で切ったか」。使用 op: radon_volume, fbp_volume, vol_label, vol_region_props。
生成元: tools/gen_wingconv_gallery.py(py -3.11 tools/gen_wingconv_gallery.py)。画像はすべて fullseye の op
(reprconv / imagedraw)と numpy 合成で描いており(matplotlib 不使用)、図に焼いた数値は
1 つ残らずその場で op を呼んで得た実測値である。乱数は seed 固定・幾何も固定なので
再生成でバイト列が一致する(--verify で検査)。
このウィングの主張は 1 つ ―― 変換の嘘は往復で露見する。 変換 op は「入口の型」と「出口の型」の両方を主張するので、嘘をつく面が 2 つある。 だから主役は「A → B → A’ を並べ、最後のコマに残差と誤差の数値を焼いた GIF」で、 可逆なものは残差が真っ黒 = 誤差 0、不可逆なものは何がどれだけ落ちるかを数字で出す。
![可逆な変換 ―― 法線 ⇄ 方位・仰角[度]](https://raw.githubusercontent.com/furuse-kazufumi/fullseye/master/docs/articles/assets/media/wingconv_roundtrip_normals.gif)
*↑ 可逆な変換 ―― 法線 ⇄ 方位・仰角[度] ―― 袋小路だった normals に出口を作った。方位 az と仰角 el(どちらも度)へ変換し、そこから組み直すと 9216 本の法線が **max |
Δ | = 2.289e-12(角度差 1.207e-06 度)で戻る。最後のコマの残差が真っ黒なのは「絵が暗い」のではなく **0..1 の固定スケールで 0 だからで、自動スケールにすると倍精度の丸めが模様に見えて可逆なのに壊れて見える。* |
docs/articles/assets/media/wingconv_roundtrip_normals.gif (4 frame(s), 792x532 px, 0.14 MB)docs/articles/assets/thumbs/wingconv_roundtrip_normals_thumb.jpg596e13795efe1cb08b5cd3ece7a414e76b261dc2d94ad62cf28f79ffac4580f4
| *↑ 可逆な変換 ―― 主曲率 ⇄ 形状指数(臍点を含めて厳密) ―― 球・鞍・円柱・平面の 4 パッチ(9216 点。うち臍点・平面 4608 点)を形状指数 S と曲がり C へ移し、戻して **max | Δ | = 2.220e-16*。教科書の atan((k1+k2)/(k1-k2)) は臍点で 0 除算になるが、atan2 形で書けば球 S=+1・鞍 S=0・円柱 S=+0.5 が閉形式のまま全域で厳密に往復する。 |
docs/articles/assets/media/wingconv_roundtrip_curvature.gif (4 frame(s), 792x532 px, 0.26 MB)docs/articles/assets/thumbs/wingconv_roundtrip_curvature_thumb.jpg49783cc6f12b4829dcf731f0e771082a3629a2b7564c9fa1c97afbdb55d0d7c7
↑ 不可逆な変換 ―― keypoints ⇄ 画素格子(落ちる量を測る) ―― 4 px 間隔に置いた 900 点を計数画像へ焼いて拾い直すと、軸あたり RMS 0.2925 px(一様量子化の理論 1/√12 = 0.2887)、2-D 距離 RMS 0.4136 px(理論 √(2/12) = 0.4082)。ランダム配置なら 120 → 111 点に融合する ―― 量子化(ずれる)と融合(消える)は別の損失で、混ぜて 1 つの RMS にするとどちらがどれだけ効いたか言えなくなる。
docs/articles/assets/media/wingconv_roundtrip_keypoints.gif (5 frame(s), 792x532 px, 0.14 MB)docs/articles/assets/thumbs/wingconv_roundtrip_keypoints_thumb.jpg945237fc3c62ab0cf43d0830dc6992ac56ed353dd6fa0ca6b5b12a17bbc589ff
*↑ 不可逆な変換 ―― 点群 → ガウシアン → 体積(質量で測る) ―― 産む op が 1 つも無かった gaussians に入口を作った。中心 mu は往復 max |
Δ | = 0.000e+00 で bit 一致し、sigma と w は往復で消える「追加された情報」。体積へ焼くと 3σ の箱打ち切りで99.192% が理論値 —— 最初これを 3σ の球 97.07% と書いたが、刻みを 1.0 → 0.125 と細かくすると箱の値へ収束して球へは近づかず、反証できた。* |
docs/articles/assets/media/wingconv_roundtrip_gaussians.gif (4 frame(s), 792x532 px, 0.10 MB)docs/articles/assets/thumbs/wingconv_roundtrip_gaussians_thumb.jpg9e19ef2fa00ecb2688237735f958c2ba8e22c477ebb4334c81e81fc97d79319d
↑ 表現をまたいで一周 ―― 何が残り、何が消えるか ―― voxel → mesh → points → gaussians → voxel。体積 5444 voxel の立体は mesh の段で中身を失い(3268 頂点 / 6584 面、表面積 2461.8)、points で接続と法線を失う。内部の充填率は100.0% → 38.2% で、戻ってきたのは立体ではなく殻。一方で重心は 1.2925 voxel しか動かない ―― 一致する指標と一致しない指標を両方出すのが正直な報告で、重心だけ見せると「一周して戻った」という嘘になる。★この主張は最大値投影では言えない(MIP は薄い殻でも中が詰まって見える。実際に一度そう描きかけた)ので、中心断面と内部の充填率で示している。
docs/articles/assets/media/wingconv_cross_loop.gif (5 frame(s), 792x532 px, 0.12 MB)docs/articles/assets/thumbs/wingconv_cross_loop_thumb.jpgfdefdaff55bb3f304a665ed94a74476b979ec3d54d64af23cdf7623273fd7d8aflow が「見える」ようになった↑ 死んだ型 flow が「見える」ようになった ―― flow は単入力で産む op も食う op も無い完全な孤島だった。密なシーンフロー [3, 24, 96, 96] を大きさ(voxel)と色相環(rgbimage)へ出す 2 つの出口を作り、色の意味の凡例を同じ図に焼いた。この repo の flow は (3,D,H,W) の密フローと (N,3) の散在フローが同じ型名で同居しているので、密用 [‘flow_magnitude’, ‘flow_to_rgbimage’] と散在用 [‘flow_speed’, ‘flow_apply’] でop を分け、相手の形は fail-closed にしてある。
docs/articles/assets/wingconv_flow_colorwheel.png (1 frame(s), 676x820 px, 0.08 MB)docs/articles/assets/wingconv_flow_colorwheel_thumb.jpg91311ab72227bd1007a04eb9053b33823dacd2d3bbe5eb3913935c1465729b98↑ 軸・単位・spacing の取り違えは例外を出さずに通る ―― (u,v) を (v,u) と読むと重心が 39.5 px ずれて 元図形との重なりは 0.0% まで落ち、spacing を既定のままにするとピークが [4, 5, 6] でなく[10, 12, 14] に立ち、π/6 rad を「度」として渡すと0.5236 度だけ回る。積算窓を 1 ms でなく 1 s と読めば計数は 1000 倍になる。どれも例外は出ず、有限で、もっともらしい絵が返る ―― だから op 名に軸を書き、単位を引数にした。
docs/articles/assets/wingconv_axis_unit_traps.png (1 frame(s), 636x1126 px, 0.03 MB)docs/articles/assets/wingconv_axis_unit_traps_thumb.jpg1a8a74cd5671f2ea3baf3509509f198334d266dc3e94d16de3d28a6672411d61↑ 死んだ語彙 ―― 産む op はあるのに、そこから先へ行けない型 ―― 台帳 707 op を「単入力かつ in 型 ≠ out 型 = 変換」で機械集計すると、他型へ一歩も出られない型が 15 個あった。reprconv の 42 op で 0 型に出口ができ、変換ペアは184 → 184 種、袋小路は 15 → 15 個。残した 9 型は埋めない理由を台帳に書いてある ―― 埋めないことも判断である。
docs/articles/assets/wingconv_dead_vocabulary.png (1 frame(s), 1180x720 px, 0.06 MB)docs/articles/assets/wingconv_dead_vocabulary_thumb.jpgbf69ffebffa729b39bfee9c97190f25010dfd8f557e90d59eaa80b9006848822生成元: tools/gen_wingstudio_gallery.py(再実行で全点を再生成)。
Studio 画面はすべて studio.build_window() が組み立てた実 UI の widget.grab()(オフスクリーン)で、モックアップはありません。
3D 展示は fullseye の op と numpy 合成だけで描いています(matplotlib 不使用、文字のみ Pillow)。数字はすべて実測値です。
このファイルは納品原稿です。記事 md への転記は手動で行ってください(記事本体は意図的に編集していません)。英語版は wingstudio.en.md。

↑ CT を回す —— 面と粒、同じ角度で —— 同梱の骨格 CT (20×97×28 voxel)を等値面 (mean+std = 0.5108) で三角形 9,710 枚 / 頂点 4,866 のメッシュにしたものと、同じ閾値の境界シェル 2,759 voxel を、同じ yaw・同じ仰角で並べて回しています。左は面、右は粒。同じ形が同じ向きに回ることが、軸を取り違えていない何よりの証拠になります(36 フレーム)。 使用 op / 機能: marching_cubes, phong_shade, vol_boundary, render_points_frame。
wingstudio_volume_turntable.gif — 36 フレーム / 12 fps / 996×431 px / 1.12 MB / SHA-256 1cb0def25c830444

↑ z スライスを 1 枚ずつ送る —— 同じ CT を z = 0 から 19 まで 1 枚ずつ送ります(全 20 フレーム、下のバーが現在位置)。右は全 z を潰した MIP。左の 1 枚には毎フレーム実測した骨占有率・最小/最大/平均を出しているので、端の 1 枚が欠けている/ 重複しているといった off-by-one はここで必ず露見します。拡大は最近傍 ×6(補間しない —— 画素の粗さ自体が情報)。 使用 op / 機能: vol_mip, apply_cmap, 最近傍整数拡大。
wingstudio_zslices.gif — 20 フレーム / 5 fps / 896×726 px / 1.30 MB / SHA-256 1241579b9480c167

↑ 点群を合わせる —— 初期ずれから収束まで —— 実データ(イトカワ表面 3,000 点)に既知の剛体ずれ 22 度 + 並進 42.451 と等方ノイズ σ = 1.2160 を入れ、trimmed ICP を 1 反復ずつ 48 回実行した実測の収束です。対応づけ前の素の点間距離平均 74.763 → 1 反復目 22.770 → 最終 1.754(13.0 倍改善)で、注入ノイズの σ にほぼ張り付いて止まります。曲線が下がりきっても橙が青に乗っていなければ「収束したのに合っていない」—— 数字だけでは見えない失敗が、絵にすると一目で分かります。 使用 op / 機能: registration.icp(trimmed), render_points_frame, imagedraw.draw_polyline。
wingstudio_registration.gif — 48 フレーム / 6 fps / 972×500 px / 0.52 MB / SHA-256 995ef59ea259ded0
↑ 法線の色 —— 3D デバッグで最初に見る絵 —— itokawa_f0049152.stl (JAXA はやぶさ Gaskell 形状モデル)(三角形 49,152 枚 / 頂点 24,578、表面積 0.399)を表と裏 180 度から撮り、陰影と world 法線をそのまま RGB にした絵を並べました。world 法線は「色 = 向き」なので、面が滑らかに繋がっていれば色も滑らかに繋がります。ごま塩状にまだらなら巻き方向(向き付け)が壊れている合図。実測では外向き面 48,639 / 49,152 = 98.96 %(残り 1 % は非凸の小惑星に「重心から外向きか」という判定を当てたことによる取りこぼし)。被覆画素は表 38,540 px / 裏 39,686 px。 使用 op / 機能: render_mesh, phong_shade, world 法線の RGB 化。
wingstudio_normals.png — 1840×600 px / 339 kB / SHA-256 155b586afb9f5615

↑ ライトフィールドの視点移動 —— 49 個のカメラで撮る —— 7×7 = 49 視点 × 128×128 画素の合成ライトフィールドで、アパーチャの周を1 周(全 24 フレーム)します。近いものほど大きく動く —— 中央視点との差がそのまま「どこが手前か」の絵になります。実測の最大視差は 21.33 px、EPI(行 y = 64)の線の傾きがそれに対応します。再合焦の分散は slope = 0 で 0.00682、slope = 3 で 0.01487。 使用 op / 機能: lf_synthesize, lf_subaperture, lf_epi, lf_refocus, lf_stats。
wingstudio_lightfield.gif — 24 フレーム / 8 fps / 864×484 px / 2.33 MB / SHA-256 bcca4f45d63d9d65

↑ 深度マップを持ち上げて 3D にする —— itokawa_f0049152.stl を 200×200 px の深度画像にし、有効画素 9,715(24.3 %)だけを逆投影して立体に起こす過程です。深度は 0.7363〜0.8827。ここで効くのが 画素中心の規約 です —— render3d も camera.depth_to_points も cadmap も画素中心を整数添字に揃えたので、逆投影した点を投影し直すと残差 rms は 1.31e-14 px(= 丸め誤差)に収まります。うっかり +0.5 を足すと雲全体が 0.00229 world 単位、全点が同じ側へ系統的にずれます。 使用 op / 機能: render_mesh, camera.backproject, render_points_frame。
wingstudio_depth3d.gif — 30 フレーム / 10 fps / 812×620 px / 0.68 MB / SHA-256 6ed4d91ac7009986

↑ 欠陥を CAD 面へ逆写像し、見えていない面を数える —— SDF から作った段付き部品(三角形 1,400 枚、表面積 8856.6)を 240×240 px の検査カメラで撮り、①見え方 ②画素 → CAD 面 ID ③画像上の欠陥ラベル 4 件の逆写像 ④見えた面(緑)/ 見えない面(赤)を並べました。命中画素 15,980(27.7 %)。カメラを向いている面積は 48.3 % ですが、塔が自分の台座を隠すため 実際に見えたのは 46.8 %(面数では 608 / 1,400 = 43.4 %)。表面点 26,000 でも可視 41.3 % / 遮蔽 58.7 % と一致します。欠陥 #3 #4 は CAD の外(命中 0)なので実面積 0 のまま残る —— 黙って消えないのが大事なところです。 使用 op / 機能: cad_pixel_to_surface, cad_defect_to_cad, cad_visible_faces, cad_surface_to_pixel。
wingstudio_cadmap.gif — 24 フレーム / 10 fps / 1200×518 px / 0.50 MB / SHA-256 eda5aa159d5dd0c4

↑ 3D の処理領域 —— 切り出して、処理して、貼り戻す —— 20×97×28 の CT から y ∈ [20, 56) を margin 2 で切り出すと 20×40×28(offset (z,y,x) = (0, 18, 0))になります。その中だけ勾配を計算し、元の座標系へ貼り戻すまでを 4 段で 3D 表示しました(右は元の全体を灰色で重ねたもの)。往復の実測は 箱の外の最大値 0(厳密に 0)/ 箱の中の元との最大差 0(ビット一致)。貼り戻しで 1 voxel ずれても 2D の表では気づけませんが、重ねて回せば一発です。 使用 op / 機能: vol_crop_domain, vol_gradient_magnitude, vol_uncrop, vol_boundary。
wingstudio_crop3d.gif — 36 フレーム / 8 fps / 976×491 px / 0.46 MB / SHA-256 3902cbec3f013592

↑ F キーで 3D データの中を歩く(実 Studio 画面) —— 本物の Fullseye Studio(1280×800 px、オフスクリーン)にイトカワの実形状モデル(頂点 24,578 / 三角形 49,152、スプラット 73,730 点)を開き、実際の QKeyEvent で F → W で前進 → ドラッグで見回し → +/- で視野角 → A で左へ → R で入口 → F で軌道カメラへ、と操作した 24 フレームです。透視投影なので近づくほど手前が大きくなり、視野角を変えると遠近感そのものが変わります。1 タップ = 半径/50 = 0.00592 の 1 歩(既定 FOV 70 度、可変域 40〜100 度)。下端の細い帯はこの GIF の進行バーで、UI ではありません。 使用 op / 機能: Studio 3D ビューアの一人称モード(render_points_frame_fp)、viewer3d_project_persp。
wingstudio_studio_walk.gif — 24 フレーム / 4 fps / 1280×800 px / 2.93 MB / SHA-256 bec27bc1ab57984b

↑ 軌道カメラで回す —— ボリュームをそのまま 3D ビューアで開く —— 同梱の骨格 CT(20×97×28)を Studio が「ボリュームファイル」として開く経路そのままです。Otsu 閾値 0.5389 で前景を取り、その 境界シェルだけ を 2,733 点の物理座標に落として(間引き 1/1)表示しています。回しているのは合成ではなく、実際の左ドラッグ(1 回 = yaw +12 度)を 30 回送った結果で、最終 yaw は 35 度。 使用 op / 機能: volume_to_shell_points(Otsu → 境界シェル)、Studio 3D ビューアの軌道カメラ。
wingstudio_studio_turntable.gif — 30 フレーム / 10 fps / 1280×800 px / 0.92 MB / SHA-256 02c1ff44094868fe

↑ 新しい族の op ヘルプを Studio の中で開く —— ライトフィールド → FMCW レンジドップラ → 四元数モノジェニック → 光子計数(SPAD)→ 音響ビームフォーミング → 干渉(角スペクトル伝搬)→ 3D の ICP・主曲率、と 8 ページを実際に開き、各ページを上から下までスクロールした 24 フレームです。ヘルプ本文は docs/ops/**/*.md から自動生成された実ファイル(2D 907 枚 / 3D 310 枚)。族別ディレクトリには合計 351 枚が生成済みで、そのうち Studio から開けるのは tb_* 型付き op 経由の 53 枚、残り 298 枚はまだ画面から辿れません(干渉は 9 枚中 0 枚)。 使用 op / 機能: Studio のヘルプダイアログ(op_help_html / op_help_html_3d)、tools/opdocs.py 生成の HTML。
wingstudio_studio_help.gif — 24 フレーム / 3 fps / 1000×720 px / 0.53 MB / SHA-256 49fc9ab4fffe092c

↑ 書いて、F5 で走らせて、結果が出るまで —— タブエディタに 18 行のコードを打ち込み、F5 で実行して出力コンソールを読み下すまでの 24 フレームです(1060×740 px のダイアログ)。実行はモックではなく本物の子プロセスで、ステータスは「PASS ✓ (exit 0)」。出力 6 行の末尾は foreground fraction = 0.2995 / objects = 21 / area min/median/max = 1118 / 1494 / 3084 —— コインの分割結果です。 使用 op / 機能: Studio の Python エディタ(タブ + F5 実行)、fullseye.apply, fullseye.segment_objects。
wingstudio_studio_editor.gif — 24 フレーム / 6 fps / 1060×740 px / 0.36 MB / SHA-256 ce1154f194aeb759

↑ 900 超の op から目的の 1 個へ —— 検索欄に 1 文字ずつ「watershed」と打つと、917 個の一覧が 4 件まで絞れます(実測の内訳: (空):917 → w:80 → wa:11 → wat:4 → wate:4 → water:4 → waters:4 → watersh:4 → watershe:4 → watershed:4)。選ぶと in_sort → out_sort のシグネチャが右下に出る —— 型が見えるので、次に何を繋げるかがその場で分かります。最後に「cad」で引くと 0 件。 使用 op / 機能: Studio の演算子検索(名前 / HALCON 別名 / 分類 / docstring を横断)。
wingstudio_studio_opsearch.gif — 17 フレーム / 4 fps / 1280×800 px / 0.54 MB / SHA-256 7c1af28cc7a99e86

↑ パイプラインを組む —— 型が合わないと Problems に出る —— coins サンプルに gaussian → otsu → opening_circle → sk_clear_border を1 段ずつ足していき、⑤でわざと region を受け取れない circularity_xld(contour 入力)を足します。すると Problems に 「stage 4 (sk_clear_border) outputs ‘region’ but circularity_xld expects ‘contour’」と出る —— Fullseye は繋いだ後に落ちるのではなく、繋いだ瞬間に型の不一致を言います。⑥で外すと「no problems」に戻ります(全 24 フレーム)。 使用 op / 機能: Studio の Program パネル(HDevelop 風)+ Problems、engine.diagnose_stages。
wingstudio_studio_pipeline.gif — 24 フレーム / 4 fps / 1280×800 px / 0.54 MB / SHA-256 e395b77263a3e87a
可視化はバグ発見の道具でもある、という前提で作りました。ここに出す数字はすべて 実測です。報告した 8 件のうち 5 件は本体側で修正済み、2 件は未解決、 1 件は仕様どおりでした。修正済みは「こうだった → こう直った」の形で残します (消してしまうと、なぜ今の形なのかが分からなくなるため)。
こうだった —— video.write_video の GIF 経路(Pillow)は完全に同一の連続フレームを
結合するので、静止の「間」を作るために同じ grab を並べると 18 枚書いて 6 枚しか
戻らない。書き出し後に読み戻して枚数を突き合わせない限り気づけませんでした。
こう直った —— GIF は video._write_gif_all_frames が Pillow を直接駆動し、
重複フレームも 1 枚ずつ保存します(代償はファイルサイズ)。同じ再現で実測:
seq = [base] * 6 + [other] * 6 + [base] * 6 # 18 枚(連続同一の塊が 3 つ)
video.write_video(path, seq, fps=6)
# 実測: wrote 18 frames -> read back 18
本スクリプトの save_gif は、直ったあとも毎回読み戻して枚数を照合します
(検算を外す理由が無いため)。
こうだった —— studio.volume_to_shell_points が (z, y, x) 順の点を返す一方、
消費側(render_points_frame / viewer3d_project)は 3 番目の成分を world の
上方向として扱うため、スライス方向が画面の左右に寝ていました。既定の viridis
高さランプも同じ理由で x 添字を色にしていました。
こう直った —— この関数が「voxel の並び順 → ビューアの world」の境界になり、
world (x, y, z) を返します。spacing((sz, sy, sx))も添字と一緒に反転されます。
v = np.zeros((40, 8, 8)); v[:, 3:5, 3:5] = 1.0 # z 方向に伸びた棒
P, C, info = studio.volume_to_shell_points(v)
P.max(0) - P.min(0) # 実測 [1.0, 1.0, 39.0](3 番目 = 上 が長い)
info["axis_order"] # 実測 "xyz"(規約を表明する印)
studio.volume_to_shell_points(v, spacing=(2.0, 1.0, 1.0)) # 実測 [1.0, 1.0, 78.0]
展示「軌道カメラで回す」はこの経路そのものなので、図の向きも直っています。
こうだった —— render3d.render_mesh は「添字 + 0.5」を画素中心としてレイを
飛ばし、camera.depth_to_points は整数添字を中心として逆投影していたので、
素直に繋ぐと雲全体が半画素ぶん、しかも全点が同じ側へずれました。
こう直った —— render3d / camera / cadmap が 整数添字という 1 つの規約に
揃い(主点も (w - 1) * 0.5)、逆投影 → 再投影が閉じます。この展示での実測:
| 測ったもの | 実測 |
|---|---|
| 逆投影 → 再投影の残差 rms | 1.31e-14 px(= 丸め誤差) |
| うっかり +0.5 を足したときの雲のずれ | 0.00229 world 単位(= 半画素、fx = 241.42) |
cadmap が「内向きに巻かれた閉メッシュ」を黙って受けていたこうだった —— cull_backfaces=True(既定)だと本来の遮蔽面がカリングされて
光線が突き抜け、可視率が 0.857 と過大に出ました。「カメラを向いている面積」
0.517 を上回った時点で物理的にありえません(遮蔽は減らすことしかできない)—— それが
気づきの糸口でした。
こう直った —— 巻き方向を検める箇所が 1 つにまとまり、閉じているのに符号つき体積が
負なら 直したうえで winding_fixed で申告します。cad_visible_faces は既定で拒否、
strict=True なら 3 つとも ValueError。段付き部品(1,400 面、符号つき体積 ±37290.4)
で実測:
| 呼び方 | 内向きメッシュ | 外向きメッシュ |
|---|---|---|
cad_surface_to_pixel の可視率 |
0.4129(winding_fixed=True) |
0.4129(winding_fixed=False) |
cad_surface_to_pixel(strict=True) |
ValueError |
0.4129 |
cad_visible_faces(既定) |
ValueError |
608 面 |
ただし 呼ぶ側の注意は消えていません。(z,y,x) -> (x,y,z) の V[:, ::-1] は軸の
入れ替えではなく鏡映(行列式 -1)なので、座標だけ反転すると全三角形の巻きが
裏返ります。本スクリプトの voxel_mesh_to_world は面の巻きも同時に反転して
打ち消しています。
Vz, F = render3d.marching_cubes(vol, 0.0) # 内側ボクセル 35,746
signed_volume(Vz, F) # 実測 +37294.7
signed_volume(Vz[:, ::-1], F) # 実測 -37294.7 ← 内向きになった
signed_volume(Vz[:, ::-1], F[:, ::-1]) # 実測 +37294.7 ← 打ち消した
こうだった —— engine.diagnose_stages のメッセージは 0 起点、Studio の Problems の
見出しは 1 起点。同じ 1 行に別の番号体系が並び、読者を違う段へ案内していました。
! stage 5 (circularity_xld): stage 3 (sk_clear_border) outputs 'region' but ...
(sk_clear_border は Program パネルでも Problems の見出しでも 4 段目)
こう直った —— message は人が読む散文として 1 起点に統一され、機械が使う
index / prev_index(0 起点、行の選択にそのまま使える)と prev_op が別に載ります。
展示⑤の実測はこうなります:
! stage 5 (circularity_xld): stage 4 (sk_clear_border) outputs 'region' but circularity_xld expects 'contour'
studio_assets/op_help/<族>/ に tools/opdocs.py が生成した HTML が 155 枚あるのに、
Studio のヘルプ検索は 2D 名 + 3D 名しか引かないため、tb_* 型付き op として
登録された 45 枚しか開けません(今回の再生成でも同じ内訳です)。
| 族 | 生成済み | tb_* 経由で開ける |
開けない |
|---|---|---|---|
| acoustics | 19 | 3 | 16 |
| interferometry | 9 | 0 | 9 |
| lightfield | 17 | 8 | 9 |
| math | 26 | 6 | 20 |
| motionmag | 9 | 2 | 7 |
| optics | 18 | 1 | 17 |
| photon | 17 | 6 | 11 |
| quat | 19 | 12 | 7 |
| rangedoppler | 8 | 4 | 4 |
| specular | 13 | 3 | 10 |
| 合計 | 155 | 45 | 110 |
あわせて、開ける 45 枚も「実行できる例」が空で、「同カテゴリ」欄は typed op が 1 カテゴリに同居しているため無関係な op が並びます —— 展示の図でそのまま見えます。
vol_mip の正規化が ops.py 本体には書かれていないops.RT["vol_mip"] は表示向けに [0,1] へ正規化した像を返すので、累積 MIP の
到達率の分母に使うと 100 % を超えます。同梱の骨格 CT(20×97×28、生の値域は
最大 1.2264)で実測:
| 分母に使ったもの | 完全な累積 MIP の到達率 |
|---|---|
ops.RT["vol_mip"](vol, 0.0, 0.0) |
122.64 % |
vol.max(axis=0)(生の投影) |
100.00 % |
volops.py と volio.py の module docstring には注記が入りましたが、
ops.py の _vol_mip 本体と登録表には何も書かれていないので、ops.py だけを
読む人には見えません。op の挙動自体は「表示用なら正規化が正しい」ので、
これはバグではなく使い分けの明記漏れです。
14 点中 11 点は SHA-256 まで一致し、3 点は一致しません。内訳:
| 展示 | 何が揺れるか | 実測 |
|---|---|---|
studio_editor |
Studio が実行に使う一時ファイル名 scratch_<pid>.py が出力コンソールに出る |
1 フレームの 8×27 px 領域だけが最大 191 階調ぶん変わる |
studio_pipeline |
Pipeline パネルの段ごとの実測 ms(壁時計)が写り込む | 一覧の枠内 444 px が変わる |
studio_opsearch |
描画タイミングのゆらぎ(局所的な文字の差は無し) | 1,741 万画素中 13,317 px、最大 29 階調 |
残りの差は GIF のパレット再量子化(中央値 1〜2 階調)で、絵の内容は同一です。
studio_pipeline は今回 Problems パネルを前面に出したので、以前は写っていなかった
実測 ms が入り、bit 再現しなくなりました —— 主役(型不一致の 1 行)が見えることを
優先しています。
再生成: py -3.11 tools/gen_wingopt_gallery.py(展示単位なら --exhibits <name,...>)。
図に焼かれた数字はすべて optics / visiondesign / defectgen / visionlab を実際に呼んだ実測値で、決定的です(--verify で SHA-256 一致を確認できます)。

↑ 設計から判定までの一本道 ―― 「設計 → 限界 → 仮想の部品 → 撮像 → 検査 → 判定」の 6 工程を、1 コマずつ止めて読めるコマ送りにしました。系が決まると 16.264 µm/画素が確定し、そこから光学限界 32.53 µm(sampling 律速)が出て、120 µm の傷は 7.38 画素になり、最後に IoU 0.4228 で 検出と判定される —— 正解マスクは撮像でぼけても動かないので、この採点が成立します(判定は marginal)。 使用 op: system_geometry, resolving_power, system_feasibility, surface_texture, defect_scratch, composite_defect, defect_stats, image_formation, draw_polyline, draw_circle。
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_pipeline_flow_thumb.jpg)。6 フレーム / 700 ms/コマ / 940×514 px / 0.30 MB。
↑ 欠陥ジェネレータの見本帳 ―― 欠陥 5 種(scratch / pits / crack / blob / composite)を同じ系(16.264 µm/画素)で撮り、左列が撮れる画像、右列が画素完全な正解マスクです。マスクは撮像前の幾何から作るので、撮像でぼけても正解は動かず、注釈作業が存在しません —— 各行のマスク面積は実測で 682 / 949 / 441 / 2318 / 1749 画素、光学限界は 32.53 µm(sampling 律速)です。 使用 op: defect_scratch, defect_pits, defect_crack, defect_blob, surface_texture, composite_defect, defect_stats, image_formation。
クリックで原寸 (998×882 px / 146 kB)。

↑ 律速の入れ替わり ―― 作動距離を 120 → 320 mm と掃くと、回折律速と標本化律速が入れ替わります。閉形式で解いた交点は WD 157.64 mm、そこでは 2 本の限界がどちらも 24.18 µm で一致します(倍率 0.28539)。記事本文の 44 段掃引が入れ替わりを最初に報告するのは 160.5 mm —— その差は物理ではなく格子の粗さです。 使用 op: system_geometry, resolving_power, thin_lens, draw_polyline, draw_line。
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_limit_crossover_thumb.jpg)。42 フレーム / 10 fps / 1000×474 px / 0.46 MB。

↑ cos⁴ 則の周辺光量落ち ―― 焦点距離を 42 → 8 mm と短くすると半画角が 5.91° → 33.45° へ広がり、視野の角の明るさが 0.9789 → 0.4846(中心比)まで落ちます。右の曲線は relative_illumination の出力そのもので、左のマップは同じ cos⁴ をセンサ座標で評価したもの —— 独立な 2 経路の角の値が最大でも 0.0e+00 しか違いません(片方が壊れたら気付ける作りにしてあります)。 使用 op: relative_illumination, thin_lens, system_feasibility, draw_polyline。
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_cos4_falloff_thumb.jpg)。36 フレーム / 10 fps / 1000×494 px / 1.66 MB。

↑ 回折限界の MTF ―― F 値を f/1.4 から f/22.0 まで絞ると、カットオフ周波数 1/(λN) が 1299 → 83 cyc/mm へ下がります。左のバーは飾りではなく、右の曲線から読んだコントラストをそのまま振幅にして描いたもので、200 cyc/mm のバーは f/1.4 では 0.805 だったのが f/22.0 では 0.000 —— 完全に消えます。 使用 op: mtf_diffraction, draw_polyline, draw_markers。
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_mtf_thumb.jpg)。34 フレーム / 10 fps / 1000×536 px / 0.99 MB。

↑ 被写界深度と錯乱円 ―― 被写界深度はレンズの性質ではなく、許容錯乱円という「こちらの決め事」です。錯乱円を 1 画素から 10 画素へ広げると深度は 0.7435 mm → 7.4377 mm(比 10.0034)と、ほぼ厳密に比例して伸びます。記事のライトフィールドの利得表(6×6 で 6.0016 倍)はこの直線を 2 回読んだだけで、要求公差 1 mm が収まるのは錯乱円 1.345 画素からです。 使用 op: depth_of_field, draw_polyline, draw_line。
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_dof_coc_thumb.jpg)。37 フレーム / 10 fps / 1000×496 px / 0.44 MB。

↑ 横分解能 対 被写界深度 ―― 横分解能と被写界深度は独立な 2 軸です。60 µm の欠陥が解像できるのは f/7.82 まで、部品の1 mm 公差が収まるのは f/5.38 から —— 使える窓は f/5.38 〜 f/7.82 の帯だけです。これを 1 つの resolvable に畳むと「光学限界に未到達」と出てしまい、読んだ人はレンズを買いに行きます(直すべきは絞りか公差かフォーカス機構)。 使用 op: resolving_power, depth_of_field, system_geometry, draw_polyline。
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_res_vs_dof_thumb.jpg)。43 フレーム / 10 fps / 1000×548 px / 0.33 MB。

↑ Airy パターンと Rayleigh 基準 ―― 円形瞳の Airy 像で 2 点を近づけていくと、谷は崖ではなく連続に浅くなります。第 1 暗環の実測位置は 3.760 µm(理論 1.2197λN = 3.757 µm)、Rayleigh 間隔 3.758 µm での谷は実測 0.7336(教科書の 0.735)で、谷がそもそも現れ始めるのは 3.000 µm からです。 使用 op: airy_pattern, draw_polyline, draw_line。
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_airy_rayleigh_thumb.jpg)。33 フレーム / 10 fps / 1000×516 px / 2.31 MB。

↑ 偏光で金属のテカりを消す ―― 鏡面反射(完全偏光)を Jones 行列で、拡散反射(無偏光)を Mueller 行列で通し、検光子を 0° → 180° で回します。鏡面成分の透過強度は Malus 則で 1.0000 → 0.0000(厳密に 0)、拡散成分は角度に依らず 0.5 のまま —— 飽和画素が 18.14 % → 0.00 % に減り、テカりに埋もれていた傷の IoU が 0.140 → 0.787 へ回復して検出に転じます。 使用 op: jones_element, jones_apply, stokes_from_jones, mueller_element, mueller_apply, defect_scratch, surface_texture, image_formation, draw_circle。
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_polarizer_thumb.jpg)。31 フレーム / 10 fps / 1000×492 px / 2.65 MB。

↑ thin lens / ABCD 行列 ―― 物体距離を動かしながら ABCD 行列で 3 本の光線を追うと、共役面では B 要素が 0 になり、出射高さが入射角に依存しなくなります —— それが「結像している」の定義そのものです。センサは 42.424 mm に固定してあるので、物体が前後するとぼけ円が広がり、光線追跡がぼけ 1 画素以内と言う範囲 199.6〜200.4 mm は、独立な閉形式 depth_of_field の 199.629〜200.372 mm と格子の刻みぶんだけの差で一致します。 使用 op: abcd_matrix, abcd_trace, thin_lens, depth_of_field, draw_line。
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_abcd_rays_thumb.jpg)。39 フレーム / 10 fps / 1000×474 px / 0.53 MB。
↑ 検出限界マップ ―― 欠陥サイズ(横・対数)とコントラスト(縦)の平面で検出率を測ると、光学限界 32.53 µm(sampling 律速)は縦の直線として動かず、実際の検出境界(白線 = 実測 50 % 等高線)はコントラストだけで 53.2 → 27.7 µm と動きます。コントラスト 0.06 では 53 µm(限界の 1.64 倍)必要なのに、0.40 まで上げると 28 µm(0.85 倍)で足ります —— 13 段のうち 4 段は境界が限界より左に出ます(ここの検出は IoU ≥ 0.1 の当たり判定であって、2 画素に分かれて見えること = 解像ではありません)。右側はレンズの問題ではありません。 使用 op: render_part, system_geometry, resolving_power, draw_polyline, draw_line。
クリックで原寸 (1028×488 px / 40 kB)。

| *↑ 照明を変えると何が見えるか ―― 同じ幾何の 60 µm の傷を、明視野風(明るい面に暗い傷)と暗視野風(暗い場に光る傷)で並べ、コントラストを掃きます。50 % 検出に届くのは明視野風が | contrast | 0.044、暗視野風が 0.018 で、光学限界 32.53 µm は両方とも余裕で超えています —— 差はレンズではなく見せ方です(これは defectgen の appearance モデル = 符号と露光であって、リング照明の光輸送計算ではありません)。 使用 op: render_part, defect_scratch, image_formation, draw_polyline。* |
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_illumination_thumb.jpg)。33 フレーム / 10 fps / 1000×502 px / 0.30 MB。
![]()
↑ 画素ピッチとサンプリング ―― 130 µm の傷を固定して画素ピッチだけを粗くすると、欠陥が 2 画素を割るのはピッチ 13.79 µm (Nyquist の境界)で、実測の 50 % 検出が保つのはピッチ 15.02 µm までです。拡大は最近傍なので見えている四角は本物の画素で、滑らかに見せるための補間は入れていません。 使用 op: render_part, system_geometry, resolving_power, draw_polyline。
静止フレームでも読めます(静止サムネ: wingopt_pixel_pitch_thumb.jpg)。40 フレーム / 10 fps / 1000×502 px / 0.58 MB。
| 展示 | 形式 | 画素 | フレーム | サイズ | SHA-256(先頭 16) |
|---|---|---|---|---|---|
| 設計から判定までの一本道 | GIF | 940×514 | 6 | 303 kB | 46c1de110827b53c |
| 欠陥ジェネレータの見本帳 | PNG | 998×882 | 1 | 146 kB | c732c5100726f75c |
| 律速の入れ替わり | GIF | 1000×474 | 42 | 459 kB | 353cbabaa24686ab |
| cos⁴ 則の周辺光量落ち | GIF | 1000×494 | 36 | 1661 kB | 50142cb5931e55a0 |
| 回折限界の MTF | GIF | 1000×536 | 34 | 991 kB | b52ec1dd5cf66bd8 |
| 被写界深度と錯乱円 | GIF | 1000×496 | 37 | 439 kB | 0f2b9c69b1bb6dc5 |
| 横分解能 対 被写界深度 | GIF | 1000×548 | 43 | 327 kB | b89bed20b13b8978 |
| Airy パターンと Rayleigh 基準 | GIF | 1000×516 | 33 | 2312 kB | 5d8a032aef0b8560 |
| 偏光で金属のテカりを消す | GIF | 1000×492 | 31 | 2651 kB | 7201c5f510b43e36 |
| thin lens / ABCD 行列 | GIF | 1000×474 | 39 | 533 kB | 9b69c483a02265f2 |
| 検出限界マップ | PNG | 1028×488 | 1 | 40 kB | 81b870b0b2bbbd90 |
| 照明を変えると何が見えるか | GIF | 1000×502 | 33 | 297 kB | 9de5ff51d03720e0 |
| 画素ピッチとサンプリング | GIF | 1000×502 | 40 | 577 kB | 54e2158fdb88a94a |
生成元: tools/gen_wing1d_gallery.py(py -3.11 tools/gen_wing1d_gallery.py)。
画像はすべて Fullseye の imagedraw op と numpy 合成で描いており(matplotlib 不使用)、
図に焼いた数値は 1 つ残らずその場で op を呼んで得た実測値である。乱数は seed 固定、
掃引格子も固定なので再生成でバイト列が一致する(--verify で検査)。
束ね方は tools/exhibit_tile.py の 3 種に従う ―― コマ送り GIF(flipbook、
掃引と工程。各コマに工程名と i/N の進捗バーが焼いてあるので止めても意味が分かる)、
タイル(contact_sheet、同じ軸にパラメータ違いを当てた小さなプロットを束ねる)、
原寸 1 枚(主張そのもの・軸と数値が読めないと意味が無い図)。静止画の Markdown は
すべて サムネイル表示 + クリックで原寸 の形で出してある。
↑ 欠陥周波数は生スペクトルに無い ―― 共振 3000 Hz を欠陥率 107 Hz で振幅変調した軸受信号(25600 Hz × 1 s、変調度 0.5)。上の生スペクトルは 107 Hz に 4.292e-16 しか無く、エネルギーは搬送波 1.000000 と側帯波 0.250000 / 0.250000(= m/2 ちょうど)に居る。下の包絡線スペクトルは同じ記録から 107.000000 Hz に振幅 0.499677 = 変調度そのものを返す(band_fraction 0.999853)。 使用 op: synthesize_bearing_signal, spectrum, envelope_spectrum。
docs/articles/assets/wing1d_defect_not_in_raw.png (1120x800 px, 57 kB)docs/articles/assets/wing1d_defect_not_in_raw_thumb.jpg (41 kB)7767132cd2edab83b38d3bca9e247c2cacd471e3fac0ca424971b1f6a93b2990
↑ スペクトルカートシスが復調帯域を選ぶ ―― 共振の位置を人が知らないとき、どの帯域で復調するかを機械に決めさせる。STFT 平面(129 bin × 199 内側フレーム、全 203 フレームのうち)にスペクトル尖度を重ね、幅 800 Hz の復調帯域を掃引した。SK の最大は 3.1037 @ 2400 Hz(窓 64 = 2.50 ms、bin 400 Hz、推定器の標準偏差 0.1001)で、その帯域の band_fraction は 0.4495。帯域選びが効いていることが数で出ている: 掃引した 24 帯域のうち欠陥率を返すのは 9 本だけで、残り 15 本は 6〜428 Hz のもっともらしい別の数を返す(例外も NaN も出ない)。ピーク周波数だけでは区別できず、分けるのは band_fraction である ―― 当たりは 0.1732〜0.6830、外れは 0.1473〜0.1645。 使用 op: synthesize_bearing_signal, stft, spectral_kurtosis, envelope_spectrum。
docs/articles/assets/media/wing1d_kurtosis_band.gif (24 コマ, 1000x668 px, 2.00 MB, 220 ms/コマ・最終コマ 1400 ms)docs/articles/assets/thumbs/wing1d_kurtosis_band_thumb.jpgbdec35e49e13c06403e481762ebaa9056965efa0d086294372587df681d11144
↑ 窓長を間違えると負の尖度が出る ―― 衝撃が 9.346 ms ごとに来る軸受信号(真の共振 3000 Hz)で窓長を 16 から 512 まで掃引した。窓が衝撃の間隔より長くなるとどのフレームにも衝撃が 1 個ずつ入り、その帯域は構成上「定常」に見える。窓 256(10.00 ms)で最大 SK は -0.1269 ―― 負の値を、共振から 9200 Hz 離れた 12200 Hz で報告する。例外は出ない。窓を掃引することはこの op の使い方の一部であって最適化ではない。 使用 op: synthesize_bearing_signal, spectral_kurtosis。
docs/articles/assets/media/wing1d_window_sweep.gif (22 コマ, 1000x668 px, 0.69 MB, 380 ms/コマ・最終コマ 1800 ms)docs/articles/assets/thumbs/wing1d_window_sweep_thumb.jpg3aba9675419b0a0c316a29575868e7913ddf552e21f0db4f5e69a8d445993713![]()
↑ 次数比分析 — 角度領域で立場が逆転する ―― 600 → 1800 rpm の走行記録(4 s、5000 Hz、次数 1.0 と 3.5、固定共振 400 Hz、計 79.9940 回転)を 1.2 s の窓で滑らせる。素朴なスペクトルでは次数 3.5 が 0.070203(真値 1.0 の 7 %)まで潰れ、−3 dB 幅は 66.50 Hz に広がる。角度領域に置き直すと同じ成分が 0.999371、幅 0 bin (0.00000 次数)。逆に 400 Hz の固定共振は次数軸では平均回転数で次数 20.00 へ散る(振幅 0.025386)。この逆転が診断そのもの。 使用 op: synthesize_speed_ramp, spectrum, angular_resample, order_spectrum。
docs/articles/assets/media/wing1d_order_tracking.gif (30 コマ, 1000x668 px, 1.08 MB, 220 ms/コマ・最終コマ 1400 ms)docs/articles/assets/thumbs/wing1d_order_tracking_thumb.jpg94ed62dd8cc62b6aea2b0e6a32e2eb5250a108c73777340166390ea10da71932
↑ 軸受の幾何から欠陥周波数 ―― 1800 rpm、ピッチ径 40 mm の軸受で、転動体数 → 接触角 → 転動体径の順に掃引した(36 フレーム)。BPFO は 84.0000 → 177.8261 Hz、BPFI は 126.0000 → 270.3260 Hz まで動く。全フレームで BPFO + BPFI − N·f_r の最大絶対値は 0.000e+00、BPFO − N·FTF は 0.000e+00 ―― float64 で厳密にゼロで、これは d と D を取り違えると即座に壊れる恒等式である。数表からではなく幾何から再導出しているので、こう書ける。 使用 op: bearing_defect_frequencies。
docs/articles/assets/media/wing1d_bearing_geometry.gif (36 コマ, 1000x668 px, 1.40 MB, 200 ms/コマ・最終コマ 1400 ms)docs/articles/assets/thumbs/wing1d_bearing_geometry_thumb.jpgd103e560a0874ab32633502199f072429b0e212941bcfd62da99b5403ed4e8c3
↑ A 特性・C 特性の重み付け ―― 1 kHz は構成上ちょうど 0 dB ―― 重み付け曲線は公表オフセット定数を足すのではなく自身の 1 kHz 値で割って作ってあるので、A(1000) も C(1000) も丸めではなく Python の float として厳密に 0.0 になる(実測 == 0.0 は True / True)。純音を 34 点掃引して equivalent_level の重み付き差 L_A − L_Z を曲線値 A(f) と突き合わせると、最大差は 7.11e-15 dB(C 特性は 4.88e-15 dB)。振幅 1 の正弦の L_eq(Z) は閉形式 10log10(A²/2) = -3.010300 dB で、実測もその値。ただしこれは音が bin 中心(記録に整数周期入る)にある場合の話で、同じ音を 1 Hz ずらすと同じ差が 21.0 Hz で 2.86 dB まで開く(図の下段、赤い曲線)。矩形窓の漏れ込みが 1 kHz 付近では 0 dB で重み付けされるため、A 特性が急峻な低域ほど実際より大きい値が返る。例外も NaN も出ない。 使用 op: weighting_response, apply_weighting, equivalent_level。
docs/articles/assets/media/wing1d_weighting_ac.gif (34 コマ, 1000x668 px, 1.42 MB, 220 ms/コマ・最終コマ 1400 ms)docs/articles/assets/thumbs/wing1d_weighting_ac_thumb.jpg4a0d21838a07ff9682b8a19d68bc658780b48ef1cc35a660f07b7d1a5ad96872↑ funct1d の解析真値 ―― 答えが先に分かっている入力だけで組んだ 1 枚。derivate_funct_1d(sin)/dx と cos の最大差は 1.008e-04(格子 dx = 0.024592、中心差分は 2 次なので残差は dx² で効く)。zero_crossings_funct_1d が返す 3 個の交差は、線形内挿すると 1.000000π, 2.000000π, 3.000000π ―― 整数倍からの最大ずれ 7.397e-08。減衰振動からは周期 0.199500 s(真値 0.200000)、半周期 0.100000 s(真値 0.100000)、時定数 0.406307 s(真値 0.4)、遅延 25 サンプル(真値 25、微分で白色化してから照合)が戻る。 使用 op: derivate_funct_1d, integrate_funct_1d, zero_crossings_funct_1d, local_min_max_funct_1d, smooth_funct_1d_gauss, abs_funct_1d, get_pair_funct_1d, distance_funct_1d, match_funct_1d_trans, create_funct_1d_array。
docs/articles/assets/wing1d_funct1d_truth.png (1160x786 px, 78 kB)docs/articles/assets/wing1d_funct1d_truth_thumb.jpg (60 kB)99ae8b3fff2af82965dbdb1341b2b9673d1f5a40917c214da746e2f2d26d0a27
↑ 平滑化のトレードオフ ―― 減衰 5 Hz 振動 + N(0, 0.06) にガウス平滑を掛け、σ を 31 段掃引した。生の信号は真値 6 個の極大に対して 196 個を報告する(local_min_max_funct_1d は狭義不等式で、雑音モデルを持たない)。RMS 誤差は σ = 3.219 で最小の 0.021952(生の 2.73 倍良い)になり、そのときピーク高さは真値から -2.77 %。掛けすぎると σ = 40.0 で RMS 誤差が 0.249561 まで悪化し、ピークは -59.56 % なまる。雑音は減るが極値はなまる ―― 最小点はあるが、無料ではない。 使用 op: smooth_funct_1d_gauss, local_min_max_funct_1d。
docs/articles/assets/media/wing1d_smoothing_tradeoff.gif (32 コマ, 1000x668 px, 1.06 MB, 220 ms/コマ・最終コマ 1600 ms)docs/articles/assets/thumbs/wing1d_smoothing_tradeoff_thumb.jpg98a6eaff19a41a10f97d71410a577d5c54de58fd2574f66dc729f0aa38cd03da
| *↑ サンプリングとエイリアシング ―― 300 Hz の純音は一度も変えず、サンプリング周波数だけを 1300 Hz から 340 Hz へ 31 段下げた(0.5 s 記録、bin 2 Hz)。fs = 596 Hz(Nyquist 298 Hz)から折り返しが始まり、最後は fs = 340 Hz で 40.00 Hz に振幅 1.000000 の線が立つ ―― 高さは満額のまま、周波数だけが嘘。全 31 段で実測ピークと折り返しの予測 | f − fs·k | の差は最大 0.000 Hz。Nyquist の線から右は、この記録に原理的に存在し得ない領域として焼いてある。 使用 op: spectrum。* |
docs/articles/assets/media/wing1d_aliasing.gif (31 コマ, 1000x668 px, 1.14 MB, 260 ms/コマ・最終コマ 1800 ms)docs/articles/assets/thumbs/wing1d_aliasing_thumb.jpg221239e2f9d4e21e0f353b38e8621bf18b7c046d8d8b24f15bd0aa8c46d38176↑ 1D プロファイルはどこから来るか ―― 2D 画像の測定線(実写真 coins、373 サンプル、最強エッジは添字 220.0)、3D ボリュームのプローブ(92 サンプル、壁厚 14.00 / 17.00 / 14.00 voxel)、センサー時系列(500 サンプル、rms 0.2687、スペクトル重心 387.0 Hz)。3 本とも素の 1-D float64 で届くので、funct1d はアダプタ無しでそのまま食える。1D ウィングに専用の型を作らなかったのはこのためで ―― 任意の実数 1-D はどの計器から来ても本当に正当なプロファイルであり、型を切ると接続を失うだけ。 使用 op: line_profile, profile_stats, vol_profile_line, vol_wall_thickness, signal_features, create_funct_1d_array, num_points_funct_1d, x_range_funct_1d, y_range_funct_1d, zero_crossings_funct_1d, local_min_max_funct_1d。
docs/articles/assets/wing1d_profile_sources.png (1200x980 px, 176 kB)docs/articles/assets/wing1d_profile_sources_thumb.jpg (85 kB)63ede6fea12f329925659543e61d942c94e337a620dc99ed0e22d1d8b852f328
↑ 極値検出と照合 ―― 既知の 4 点(60, 150, 245, 330)に立てたガウスピークへ雑音を σ = 0 から 0.42 まで 30 段加えた。local_min_max_funct_1d は狭義不等式なので、生の波形では極大が 4 個から 132 個へ暴発する。σ = 3 のガウス平滑と高さ 0.45 の門を通すと最後まで 6 個([58, 149, 243, 254, 329, 337])に落ち着く。match_funct_1d_trans は同じ長さの窓とテンプレートを突き合わせるかぎり、30 段のうち 12 段(σ 0.159 まで)で 4 点すべて lag = 0 を厳密に返す。 使用 op: smooth_funct_1d_gauss, local_min_max_funct_1d, match_funct_1d_trans。
docs/articles/assets/media/wing1d_peak_match.gif (30 コマ, 1000x668 px, 1.45 MB, 240 ms/コマ・最終コマ 1600 ms)docs/articles/assets/thumbs/wing1d_peak_match_thumb.jpgd14889843693fa5a0da90e3affd43d08409e16fb91c4990499b22e06b9238139
↑ 包絡線の端が切れると 76 % 間違う ―― 12 µm の走査(241 plane × 0.05 µm)の中で、表面を中央 6.0 µm から端の 0.30 µm まで 32 段歩かせた。中央では誤差 2.2e-14 µm。表面が 0.500 µm にあると csi_peak_position は 0.1190 µm を返す ―― 有限で、もっともらしく、76 % 間違っている。しかも包絡線の argmax は 241 plane 中の 2 番目、つまり内部なので「端に張り付いたら拒否」という素直な検査は発動しない(掃引の最悪点は 0.30 µm の 84 % で、そこでも argmax は plane 1)。中央値基準の端レベルが 0.0539 を超えた表面 2.69 µm から op は拒否に転じる(図の値は max_edge_envelope=1.0 で強制的に取り出したもの)。 使用 op: csi_signal_simulate, csi_envelope, csi_peak_position。
docs/articles/assets/media/wing1d_envelope_truncation.gif (32 コマ, 1000x668 px, 1.43 MB, 240 ms/コマ・最終コマ 2000 ms)docs/articles/assets/thumbs/wing1d_envelope_truncation_thumb.jpgce035df03e06ff0c2e1b5ce485f16e45782ef8613f1475b1371d1d93c74e3612
↑ 欠陥周波数が出てくるまで(工程) ―― 幾何から出した外輪通過周波数 BPFO = 108.0000 Hz でわざと鳴らした軸受記録を、7 工程で診断まで持っていく。生スペクトルでは欠陥率の振幅は 1.19e-02 しか無く、目立つのは 3024 Hz の構造共振(0.1175)。スペクトル尖度(窓 64、最大 4.5956 @ 2000 Hz)が復調帯域 1600–2400 Hz を選び(真の共振 3000 Hz より 1000 Hz 低い ―― SK が返すのは帯域であって線ではない)、帯域通過 → 包絡線 → 変換で 108.0000 Hz。それが幾何の BPFO 108.0000 Hz と 0.0000 % で一致する。正直な内訳: この帯域の band_fraction は 0.2250 で、同じ帯域に通した白色雑音の 0.2348 と区別がつかない。分けるのは突出度のほうで、30582 対 2666 である(共振をまたぐ 2600–3400 Hz を人が選べば band_fraction は 0.8368 まで上がる)。dsp.bandpass + dsp.envelope + rfft で手組みした結果と op の返りは 0.0e+00 で一致した(作り直していない証拠)。 使用 op: bearing_defect_frequencies, synthesize_bearing_signal, spectrum, spectral_kurtosis, bandpass, envelope, envelope_spectrum。
docs/articles/assets/media/wing1d_envelope_flow.gif (7 コマ, 940x522 px, 0.18 MB, 1500 ms/コマ・最終コマ 3000 ms)docs/articles/assets/thumbs/wing1d_envelope_flow_thumb.jpgb437cde7351aeaac59a4aed6f0a757a0cdd6f5d019d1a97f7ab392e2c141dc04↑ 分数オクターブ帯域 ―― 偶数分数には 1 kHz 帯域が無い ―― 振幅 0.7 の 1000 Hz 純音を、1/1・1/2・1/3・1/6・1/12・1/24 オクターブで測った 6 枚。帯域レベルはどの分数でも閉形式 10log10(A²/2) = -6.108339 dB を返す(最大差 0.0e+00 dB)。違うのはどの帯域がそれを報告するかで、fraction が奇数 [1, 3] では 1000.000 Hz ちょうどを中心とする帯域があるが、偶数 [2, 6, 12, 24] では指数のオフセットにより 1000 Hz が帯域端になり、同じエネルギーが 1188.50 Hz, 944.06 Hz, 971.63 Hz, 1014.50 Hz を中心とする半端な帯域から報告される。定義であって不具合ではないが、「1 kHz でのレベル」を引用するときに知っていないと嘘になる。空の帯域は −inf ではなく床(−200 dB)に落ちる。 使用 op: octave_bands, octave_spectrum。
docs/articles/assets/wing1d_octave_family.png (1458x868 px, 54 kB, 6 パネル / 3 列)docs/articles/assets/wing1d_octave_family_thumb.jpg (47 kB)986bd447a3a01fe7fb0ead8a50aea99bec869fb81a57752a74916f0ae4c83c72生成元: tools/gen_wingvox_gallery.py(py -3.11 tools/gen_wingvox_gallery.py)。
画像はすべて fullseye の op(volcolor / volops / render3d)と numpy 合成で
描いており(matplotlib 不使用)、図に焼いた数値は 1 つ残らずその場で op を呼んで
得た実測値である。乱数は seed 固定・幾何も固定なので再生成でバイト列が一致する
(--verify で検査)。
このウィングの主張は 1 つ ―― 3-D のラベルは、切る前に色を付けなければならない。 断面ごとに色を付けるとラベル番号が断面ごとに振り直され、同じ部品が層ごとに 別の色になる。展示 2 がその差を本数で示す。
束ね方は tools/exhibit_tile.py の 3 種に従う。静止画の Markdown は
すべて サムネイル表示 + クリックで原寸 の形で出してある。

↑ 色分けしたボクセルの断面送り ―― 16 粒子を 26 連結でラベリングし、ボリュームのまま色を付けてから 24 枚の断面へ切り出した。1 つの粒子は最初から最後まで 1 色 (実測: 全 16 成分の色数が 1)。spacing (0.50, 0.20, 0.20) mm で 総体積 62.560 mm3。 使用 op: vol_label, vol_colorize_labels, vol_label_slice_rgb, vol_label_shape_stats, vol_label_palette。
docs/articles/assets/media/wingvox_slice_flow.gif (24 コマ, 432x616 px, 0.33 MB)docs/articles/assets/thumbs/wingvox_slice_flow_thumb.jpg769ad42caa6786932daf625bafa14a34686fc299dc96b23a11404564b9343228
↑ ちらつきの対比 ―― 違うのは色を付ける順序だけ ―― 左は断面ごとに 2-D ラベリングして色を付けたもの。断面が変わるたびに番号が振り直されるので、20 / 24 断面で少なくとも 1 粒子の色が変わる ((粒子, 断面) の変化 62 / 108 組 = 57.4 %、16 粒子すべてが一度は変わる)。右はボリュームで色を付けてから切ったもので、変化は 0 断面 / 0 組。同じパレット・同じ seed で、違うのは順序だけである。 使用 op: vol_label, vol_label_color_flicker, vol_colorize_labels, vol_label_slice_rgb, colorize_labels。
docs/articles/assets/media/wingvox_flicker.gif (24 コマ, 596x468 px, 0.37 MB)docs/articles/assets/thumbs/wingvox_flicker_thumb.jpgb22e88054154f9ce33e1504ed9e4b109955e2e7f86d24227cdff77f8fd732a41↑ 6 / 18 / 26 連結 ―― 近傍の定義が成分数を決める ―― 同じ 2 つの立方体でも、頂点 1 点だけで接している場合は 6 連結 2 成分 / 18 連結 2 成分 / 26 連結 1 成分、稜線で接している場合は 2 / 1 / 1 となる。色数は成分数にそのまま連動する ―― 融合すれば色が 1 つ減る。 使用 op: vol_label, vol_label_volume_render, vol_label_palette。
docs/articles/assets/wingvox_connectivity.png (774x692 px, 31 kB, 6 パネル / 3 列)docs/articles/assets/wingvox_connectivity_thumb.jpg (57 kB)1e71d481fec54a3b648163520a0c954e2077d102f7859d1b9da06e36196a01d6
↑ 体積でふるいにかけても、残った粒子の色は動かない ―― min_volume を 0 から 9.320 mm3 まで 17 段で上げ、粒子を 1 つずつ落としていく。落ちた粒子は背景になるが、残った粒子の色は 1 画素も変わらない(全 17 コマで実測・確認)。番号を振り直さない (relabel=False)からで、振り直すとパレットの行が動いて色は総取り替えになる。 使用 op: vol_label, vol_label_shape_stats, vol_select_labels, vol_label_volume_render, vol_colorize_labels。
docs/articles/assets/media/wingvox_sieve.gif (17 コマ, 432x616 px, 0.30 MB)docs/articles/assets/thumbs/wingvox_sieve_thumb.jpged2622bdcb2dbbd98d792fb9c4e15c65ef20c0c688f4e3f272345affcfc97bd6
↑ 元の CT に色ラベルを重ねる ―― α を掃引する ―― 断面 z=8 で alpha を 0 から 1 へ往復させる。前景の平均変化は 0.0000 → 0.0262 と alpha に直線で比例し、背景の変化は alpha に依らず 0.0000(色はラベルの上にしか乗らない)。輪郭だけ塗る mode='boundary' なら前景 3128 ボクセルのうち 1648(52.7 %)しか塗らないので、下の構造が完全に見える。 使用 op: vol_label, vol_label_overlay, vol_label_slice_rgb。
docs/articles/assets/media/wingvox_overlay_alpha.gif (20 コマ, 432x616 px, 0.99 MB)docs/articles/assets/thumbs/wingvox_overlay_alpha_thumb.jpgfcb879348b2dcf66cdf37bc2aad03a7cc786499ee3c358d304a6d6f6636c1ca7
↑ 色付きメッシュのターンテーブル ―― 16 個の成分それぞれの bbox 部分体に marching cubes をかけ、三角形 7088 枚のメッシュ 16 個にした。頂点は spacing (0.50, 0.20, 0.20) mm を掛けた物理座標で、render3d.render_mesh の z バッファで合成している。粒が縦に伸びて見えるのはそのほうが正しいからで、z の刻みが面内の 2.5 倍あるためである(展示 4 と同じ話)。色は断面図とまったく同じパレットの同じ行なので、切った絵と回した絵で同じ粒子を目で追える。 使用 op: vol_label, vol_labels_to_meshes, look_at, intrinsics_from_fov, render_mesh。
docs/articles/assets/media/wingvox_mesh_turntable.gif (24 コマ, 380x538 px, 0.45 MB)docs/articles/assets/thumbs/wingvox_mesh_turntable_thumb.jpg4a2ba556d6751c838b4b68264026913f89e33a444e67eb73fc2606ec9d344240↑ 凡例つきの計測表 ―― どの色がどの粒子か ―― 色分けした図は、凡例が無ければ「きれいなだけ」で終わる。16 粒子の色見本・体積 mm3・全体比・等価直径・球形度・伸長度・視野端への接触を並べた。総体積 62.5600 mm3、比率の合計 1.000000。1 ボクセル = 0.020000 mm3。最大は #2ddc8a の 9.3200 mm3、最小は #15d4c9 の 0.5600 mm3。 使用 op: vol_label, vol_region_props, vol_label_shape_stats, vol_label_legend, vol_label_palette。
docs/articles/assets/wingvox_legend.png (900x626 px, 104 kB)docs/articles/assets/wingvox_legend_thumb.jpg (79 kB)996d79e05286f61b29e5add295e2a5519b6e7b87a2eede1d8e5fdec023a2e504Fullseye が「ただの関数の寄せ集め」にならないための背骨です。
fs.stereo.SGM(num_disparities=128).compute(l, r) のような、補完が効いて読める書き味を目指しています(機械的な文字列ディスパッチは裏に隠す)。これは私が特にこだわった点です。4本柱と書きましたが、実際にはこれは4本が独立に立っているわけではなく、1本の背骨から4方向に枝が伸びているという感覚に近いです。もう少し掘っておきます。
「正直さを構造に」は、本記事のほぼ全ての節に顔を出す一番太い幹です。層②の hold-out 規律、HALCON カバレッジの章別開示、公開前夜の CI 章、バグ①〜⑥の追試ノート――どれも根っこは同じで、「良い数字だけを見せると、いずれ自分自身も騙される」という警戒心です。これは技術的な選択というより、開発を長く続けるための生活習慣に近いと思っています。1回だけ良い数字を出すのは簡単ですが、同じ規律を100回繰り返すのは、構造として強制しない限り続きません。
「統一インターフェース」にこだわったのは、Fullseye が最終的にAI の道具箱として使われることを狙っているからです。中身が自作 numpy なのか OpenCV のラッパなのかで呼び方が変わるライブラリは、人間にとっても AI にとっても覚えることが増える。呼び方が1つに揃っていれば、AI は「この処理をしたい」という意図から、迷わず正しい呼び出しに辿り着けます。fs.stereo.SGM(num_disparities=128).compute(l, r) のような書き味にこだわったのは、Python の補完機能がそのままドキュメントとして機能してほしいという考えからです。IDE が型を教えてくれるなら、それ自体がミニマルなオンボーディングになります。
「重い依存はぜんぶオプション」は、地味に見えて実は一番 honest disclosure と近い場所にある柱です。「torch が無いと動かない」と正直に言うのではなく、「torch が無くても numpy 経路で動く。torch があればもっと速い経路が使える」という段階的な正直さを選んでいます。これは「公開前夜」の章で語った CI のバグの多くが、この柱の運用の甘さ(optional 依存のガード漏れ)から生まれたことの裏返しでもあります。柱として掲げるのは簡単ですが、掲げた柱を実際に守れているかを検証するのは、また別の仕事だということを、あの CI の一件で思い知らされました。
↑ この柱を絵にした依存マップ ―― 必須依存は numpy + scipy の 2 つだけで、OpenCV / scikit-image / torch / GUI / 点群 I/O / 産業 I/O はすべて opt-in の extras。pyproject.toml の実定義から機械生成しています(extras が増えたのに図が古いままなら生成スクリプトが fail する作り)。
「公開知識からの再実装」は、一番地味ですが一番譲れない一線です。産業用の商用ソフトウェアからコードを持ってくれば、表面的にはもっと早く”追いつく”ことができたかもしれません。それをしないのは、倫理的な一線であると同時に、長期的に見て自分の理解が深まる道でもあるからです。論文を読み、アルゴリズムを自分の手で書き直すという工程を飛ばさないことで、「なぜこの op がこの結果を返すのか」を本当に説明できる状態を保っています。
Status: PoC ―― RAG セットアップ自体は同梱・動作確認済み。AI に op を選ばせて自律実行させる運用はまだ実験段階です。
これは Fullseye の隠れた優位点です。前述の通り、約1000個の op はそれぞれ Markdown ノート(使い方・型契約・関連 op・参考文献つき)を持ち、しかも中身が説明できる古典アルゴリズムです。この2つがそろうと、AI コーディングアシスタント(Claude Code など)の RAG(Retrieval-Augmented Generation、検索拡張生成)知識ベースとしてそのまま機能します。
3段階でかみくだくと:
「AI が Fullseye の op ドキュメントを引く」というのは、掛け声だけでは動きません。実際にどう固定しているかを書きます。
pip install fullseye した環境で fullseye-rag を実行すると、同梱スキル skills/fullseye-ops が ~/.claude/skills/fullseye-ops にコピーされます。このとき、スキル本体の SKILL.md にある FULLSEYE_REPO = という1行が、実行環境に応じたコーパスの場所に自動で書き換わります。これが何を意味するか――AI(Claude Code)は、どのプロジェクトフォルダで作業していても、「Fullseye の op コーパスはここにある」と迷わず分かるようになります。パスが固定されていなければ、AI は毎回リポジトリの場所を探し回ることになり、探せなければ何も引けません。1行のパス固定が、RAG が実用として機能するかどうかを分けています。
もう1つの fail-closed な工夫が、コーパスの実体(docs/ops または OP_CATALOG.md)が見つからない場合はインストール自体を拒否することです。既存のスキルがあれば上書き前にタイムスタンプ付きで退避してから更新するので、再インストール(=更新)が手編集を黙って消すこともありません。「一応入れておくけど中身が空」という中途半端な状態を作らない――入れるなら動く状態で入れる、動かないなら入れない、という規律です。
fullseye-rag(実体は fullseye/rag_setup.py)は、インストールのされ方を見て、コーパスの中身を自動で変えます。
pip install -e . した環境では、パッケージの隣に docs/ops/INDEX.md が実在します。この場合は docs/ops のフルコーパス(per-op ノート約1000枚)がそのままピン留めされます。pip install fullseye しただけの環境では、docs/ops は同梱されません(コーパスはリポジトリの中身であって、wheel の中身ではないからです)。この場合は、パッケージに同梱された OP_CATALOG.md(AI 向けの全 op 一枚カタログ)がピン留めされ、SKILL.md には「フルの per-op ノートが欲しければリポジトリを clone してください」という案内が明示的に書き込まれます。どちらのモードでコーパスの実体(docs/ops/INDEX.md または OP_CATALOG.md)が見つからなくても、インストールはその場で拒否されます――空のスキルを入れて後で「動かない」と困らせない、fail-closed の徹底です。
具体的な使用感を、実際の質問例で書いておきます。pip install fullseye してから fullseye-rag を1回叩いておけば、以降はどのディレクトリで Claude Code を開いていても、次のようなやり取りが成立します。
人間:「この基板画像から欠陥っぽい傷を検出したい」
AI(
fullseye-opsスキル経由):docs/opsを検索し、in:/out:の型が「画像 → 画像(強調)→ 領域(二値)→ 輪郭(計測)」と繋がる op を選定。例えば「ノイズ抑制にbilateralかgaussian、エッジ強調にsobel_ampかdog(Difference of Gaussians)、二値化にotsuか適応的しきい値、輪郭抽出にedges_sub_pix→select_contours」といった候補を、各 op の型契約と HALCON 別名を根拠に提示し、fullseye.run_pipeline(img, [...])のコードをその場で書いて実行する。
もう1つ、工業寄りの例も挙げておきます。
人間:「この部品、決まった向きで置かれていないので、掴む前にまず位置と向きを知りたい」
AI(
fullseye-opsスキル経由):docs/opsのmatchingカテゴリを引き、shape_locate(HALCONfind_shape_model相当、輪郭ベースの形状マッチング)かncc_locate(HALCONfind_ncc_model相当、テンプレートマッチング)を候補として提示。型がimage → matchと繋がることを確認した上で、位置・角度を返すコードを書いて実行する。
どちらの例でも、AI が根拠にしているのは同じコーパス(docs/ops)と同じ型契約です。「検査ラインの欠陥検出」も「ロボットの位置決め」も、AI から見れば同じ RAG が答える同じ種類の質問でしかない――層①で紹介した op 体系が、Physical AI と産業ビジョンの両方に効いてくるのは、この RAG の仕組みのおかげでもあります。
この応答の裏でAIがやっているのは、ベクタ検索でも埋め込み類似度計算でもありません。docs/ops を grep で引き、各ノートの in:/out: 記載を読んで型を繋げているだけです(SKILL.md の「Retrieval recipes」がそのまま手順書)。だからこそ特別なベクタ DB や埋め込みサービスが要らず、grep できる環境ならそのまま RAG として機能するわけです。checkout 環境なら約1000枚の per-op ノートから、wheel 環境なら OP_CATALOG.md の一覧から、それぞれ根拠を引いてきます。提案されたコードを鵜呑みにする必要もありません。全 op に ground-truth 付きの worked example が付属しているので、AI 自身が py -3.11 examples/<id>.py を実行して「PASS」を確認してから返答する、という自己検証のループも組み込めます。
↑ RAG コーパスの実物 ―― docs/ops/2d/smoothing/bilateral.md の frontmatter(型契約 in:/out:、HALCON 別名、著者・ライセンス・版)と「型が繋がる次の op」リンク。右は AI がやっている 3 ステップで、③の PASS 行はこの図の生成時に worked example を実行して得た実出力。
もし AI が型の繋がらない op を誤って選んでしまったらどうなるか、も書いておきます。答えは「層①の型契約」の節に書いた通り単純です。run_pipeline が実行時に明示的に落ちます。AI にとってこれは、人間に対する不親切なエラーではなく、「ここで型が繋がっていない」という機械可読なフィードバックそのものです。AI はそのエラーメッセージを読んで、繋がる型の op に選び直す――という訂正のループが、人間が介入しなくても回ることがあります。深層学習の1関数が「なんとなく違う答えを返す」のと違い、型契約は間違いを黙って飲み込まず、その場で顕在化させるので、AI にとっても人間にとっても、どこで迷子になったかが追いやすくなっています。
RAG まわりの設計にも、本記事で繰り返し出てくる fail-closed の哲学が貫かれています。コーパスの実体が見つからない環境ではインストールを拒否する。更新スクリプト(tools/update_fullseye.py)は、未コミットの変更があれば拒否し、--ff-only(fast-forward のみ)でしか進めず、RAG スキルはバックアップを取ってから更新し、Studio の設定には一切触れません。「AI 用の下地を強くするための更新が、人間の作業環境を壊す」という事故を、構造として起こさないようにしてあります。
つまり Fullseye は「人間が使うライブラリ」であると同時に、「AI に画像処理を自由にさせるための下地」でもある。説明できる古典ビジョンをスキルとして揃えたことが、そのまま AI との相性の良さに直結しています。
そして 推奨する運用はこの RAG 型です。その上で Studio を組み合わせると、AI エージェント(Claude Code など)が組んだパイプラインの結果を画像ウィンドウや 3D 表示画面として人間の目の前に出せる ―― コードと会話だけで閉じず、「AI が見ているもの」を人間が同じ画面で検査できる。狙っている位置づけは、Physical AI(ロボット知覚)の統合環境です。
具体的な絵で言うとこうです。Studio を横に開いた Claude Code に「このビンの中の部品を数えて、つまめる姿勢まで出して」と頼む → AI が op ノートを引いてセグメンテーション→3D 姿勢推定のパイプラインを書いて実行 → 結果が Studio の画像ウィンドウと 3D 表示に出る → 人間は画面を見て、おかしければ日本語でやり直しを頼む。会話と画面だけで画像処理が回る、という運用を狙って作ってあります(部品は全部この記事で紹介したもの ―― 約1000 op×型契約×機械可読ノート×Studio の描画層)。
ちなみにこの開発自体も、設計判断と方向決めは私が握りつつ、実装の相棒として Claude Code と組んで進めています。試してみたい方は作者の紹介リンクから始めてもらえると、この開発の継続にちょっと貢献できます(正直な開示:紹介リンクです)。
もうひとつ意識しているのが学術利用です。全 op が参考文献つきの機械可読ノート(md=SoT)を持ち、版が fingerprint で code に固定され、評価は hold-out で正直 ―― つまり引用でき、追試できる形を最初から作ってあります。リポジトリには CITATION.cff を置き、文献は実在する古典(DOI を捏造しない)だけを引いています。研究の道具として使われ、参照される ―― そうなったら嬉しい、という設計です。
学術利用と RAG 運用は、実は相性が良い組み合わせです。研究で新しい前処理パイプラインを試すとき、既存手法との比較に時間を取られがちですが、Fullseye なら AI に「この論文の手法に近い前処理を組んで」と頼めば、引用元が明記された opから候補を出してくれる。出てきたコードは worked example で検証済みの部品の組み合わせなので、「このベースラインは本当に正しく実装されているか」という不安を、ゼロから確かめ直す手間が減ります。研究の再現性という観点でも、md=SoT の構造がそのまま効いてくる場面です。
この開発では honest gate(正直ゲート)という考え方を随所に置いています。「期待挙動を数値で検証してから採用する」関門です。そして本当に効いているかは、バグを捕まえた実績で判断すべきです。
この総集編を準備する一連の作業だけで、品質チェックが確定バグを6件見つけました。 隠さず載せます。前半2件はテストのすり抜け方が、後半4件は「AI に敵対的レビューをさせ、その指摘を人手で一次検証する」という発見経路が、それぞれ教訓になっています。
地形の凸凹を「山・谷・尾根・鞍点」に分類する op で、ヘッセ行列(Hessian)の交差項を np.gradient の間違った軸から取っていました。np.gradient は [∂/∂y, ∂/∂x] の順で返すのに、交差項 ∂²/∂x∂y のつもりで ∂²/∂y²(別の項の重複)を拾っていたのです。
この「確かめ方」の選び方自体が、honest gate の考え方をよく表していると思います。ヘッセ行列の交差項が正しく計算できているかを直接検算するのは、数式を目で追うだけでは骨が折れます。それよりも、「正しければ絶対に成り立つはずの対称性」を1つ見つけて、それが崩れていないかを機械的に確認する方が、遥かに再現性のあるテストになります。軸を斜めに取り違えていれば転置対称性が崩れる、というのは、この op の数学的な性質から演繹的に導ける検算方法であり、単に「動いたから正しい」と判断するテストとは別物です。
2D と 3D をまたいで op ヘルプを引けるようにした際、内部で (次元, 名前) のタプルを、表示関数(名前, 次元) にそのまま展開して渡していた(引数が逆)。両方とも文字列なのでエラーにならず、どの op を選んでも空のカードが出る、というユーザーに見える不具合でした。
この1件は、①(数式の軸の取り違え)とは種類が違う教訓を残しています。①は計算の中身が間違っていたバグでしたが、②は計算自体は正しく、GUI の配線(どの値をどの順番で渡すか)が間違っていたバグでした。しかも (次元, 名前) も (名前, 次元) もどちらも文字列のペアなので、Python は型エラーを一切出しません。「型としては合っているが、意味としては入れ替わっている」という壊れ方は、層①で紹介した型契約(image/region/feature などの sort)では検出できない領域です。ユニットテストが関数を直接呼ぶだけでなく、実際の GUI 操作の経路(シグナル→スロット)を通すところまで踏み込まないと、この種の配線ミスは見つからない、という教訓です。
点群の主軸を合わせて姿勢(回転)を推定する op で、固有ベクトル分解(eigh)が返す枠の掌性(右手系か左手系か)を考慮していませんでした。数学的には、符号候補を作る行列の行列式が恒等的に +1 になってしまう構成で、左手系の枠を引くと4つの候補が全部棄却され、エラーも警告もなく恒等回転(=何もしない)にフォールバックしていたのです。
曲面の曲がり具合(curvedness)を出す op が、利得 32 の勾配フィルタ(意図的な規約で、他の消費側は明示的に 32 で割って補正済み)と正規化済みのヘッセ行列を混ぜていました。曲面の形の分類(shape index)は比なので正しく出る一方、絶対値だけが 1/32 ―― 「半径 R の球なら曲率 1/R」のはずが 1/(32R) になっていた。
↑ 修正後の検証を本図のために再実測したもの。半径 R の合成球(2000 点)へ curvedness を実行すると、実測中央値が理論値 1/R の線に乗る(中央値×R = 1.009)。破線は修正前の系統誤差 1/(32R) ―― 比率だけ合って絶対値が 1/32 だった場所。
バグ③④の発見経路は①②と違い、AI に敵対的なコードレビューをさせ、その指摘を鵜呑みにせず人手で一次検証(数値再現)してから直す、という流れです。AI レビューの指摘は外れることも多いので、「指摘→自分で再現→初めて採用」の関門を必ず挟みます。
同じ流れの公開前の総ざらい(第2ラウンド)では、さらに2件の確定バグを捕まえて直しました。⑤点群法線の視点符号が逆(単一視点スキャン ―― まさに viewpoint 引数の本来の用途 ―― で全点の法線が裏返っていた。既存テストは絶対値 abs() で符号を吸収していて、③と同型の「コイン投げを隠すテスト」だった)。⑥メッシュ簡略化の境界保存が高圧縮比で自壊(悪条件になった二次形式の解が数エッジ長も飛んだ位置に置かれ、「境界を保つ」はずのリムが崩れていた。外れ位置ガードを強化し、崩れる条件そのものを回帰テストに固定)。どちらも「たまたま通るテスト」ではなく「符号つき・絶対値・壊れる条件」を検証するテストに置き換えたのが本質です。
バグ⑤・⑥も、①〜④と同じ粒度で「確かめ方」を残しておきます。
点群の法線ベクトルは、本来「センサー(視点)から見て外向き」に揃っているべきものです。単一視点スキャン ―― 実世界なら1台のカメラや LiDAR で片面だけを見た点群 ―― では、viewpoint 引数がまさにこの「外向きを揃える」ために存在します。バグは、この符号合わせのロジックが逆を向いていたというもので、全点の法線が視点と反対側を向くという、見た目には気づきにくい壊れ方をしていました。
abs())だけを見ていました。法線が正しい向きでも逆向きでも、成分の絶対値は変わらないので、符号が反転していてもテストは緑のまま――バグ③(PCA の掌性)と全く同型の「コイン投げの片面しか見ていないテスト」でした。viewpoint からの符号を明示的に検証する回帰テストに置き換え、符号そのものをテスト対象にしました。絶対値で丸めてしまうと、多くの幾何演算で「向き」の情報がそっくり消えてしまう ―― これは③のときに得た教訓が、別の op でもう一度そのまま再現した形です。QEM(Quadric Error Metric)edge-collapse は、メッシュの三角形を間引きながら形状をなるべく保つ簡略化アルゴリズムです。各辺を潰す(collapse する)ときに、「潰した後の頂点をどこに置けば誤差が一番小さいか」を、二次形式(quadric)の最小化として解きます。バグは、高圧縮比(大幅に間引く設定)で、この二次形式の解が悪条件(ill-conditioned)になり、本来の位置から数エッジ長も離れた場所に頂点が飛んでしまう、というものでした。結果として、「境界(メッシュの縁)を保つ」はずのリム部分が、圧縮率を上げるほど崩れていく。
mesh_decimate.png(「3D をここまで自作している話」の節で紹介した画像)がまさに舞台で、素朴なランダム間引き・既存の decimate_qem・境界保存版の decimate_qem_manifold を並べて比較しています。高圧縮比の条件を敵対的レビューで疑い、実際に境界の崩れを確認したのが発見の起点でした。⑤も⑥も、「たまたま通っていたテストの前提」を疑い、符号・絶対値・悪条件という具体的な壊れ方に置き換えて検証し直した、というのが本質です。
この6件は、「良い結果だけ見せる」記事なら絶対に載らない話です。でも私は、品質保証が本当に動いている証拠として、こういう話こそ残す価値があると思っています。
ここまで読んで、「この人はずいぶん自信満々に語るな」と思われたかもしれません。ここからは正反対の話です。この総集編を仕上げていた同じセッションで、PyPI 公開に向けて GitHub Actions の CI を初めて本格的に回したところ、フルスイートで大量のテストが落ちました。最終的にはゼロまで潰しましたが、その過程で見つけた地雷の多くは、「ローカルでは何の問題も起きていなかった」種類のものでした。honest disclosure の家訓に従い、祝祭的にではなく、淡々と面白く、実際に何が起きたかを記録しておきます。CI の失敗は恥ではなく、品質ゲートが実際に働いた証拠です。
なぜ今まで CI を本気で回していなかったのか、を先に正直に書いておきます。個人開発では、ローカルのフルスイートが通っていれば十分という誘惑が常にあります。自分の PC は自分が一番よく知っている環境で、依存関係も GPU もいつも同じ状態で揃っている。CI を整備する手間は、機能を1つ増やす手間と比べて地味で後回しにしやすい。しかし PyPI に公開するということは、自分がまったく知らない環境で、自分が想定していない組み合わせのまま動くことを約束するのと同じです。ローカルという1点だけで検証された安心感は、公開の瞬間に何の保証にもならない――今回の一連の出来事は、そのギャップを身をもって埋める作業でした。
最初にぶつかったのは、初回 CI(GitHub Actions、ubuntu、torch 無し環境)でフルスイートが大量に失敗するという壁でした。原因を辿ると、feat_harris / feat_spin / feat_shot / feat_fpfh といった 3D 特徴記述子のモジュールが、ファイル冒頭で torch を無条件に import していました。torch がインストールされていない環境では、この import 文の時点でエラーになり、import ops3d ―― 3D レジストリ全体の読み込み ―― が即死します。1個のモジュールの不注意が、3D op 265個ぶんの読み込みを道連れにしていたわけです。
私の開発機には torch が常駐しているので、この問題はローカルでは一度も表面化しませんでした。ここで得た教訓を言葉にすると――「ローカルに常在する optional 依存は、CI が初めて剥がしてくれる」。自分の PC で「動く」ことと、「動く前提が正しい」ことは別物です。修正は、torch の import をガードした上で、実際に使おうとした瞬間に「fullseye[gpu] を入れてください」と明確な ImportError を出すようにする、というものでした。1点だけ例外を作っています。is_tensor という判定関数だけは、torch が無い環境でも素直に False を返すようにしてあります。これは numpy 経路の入力ガード(「これは torch tensor か? 違うなら numpy として扱う」という分岐)に使われているためで、ここで例外を投げてしまうと numpy だけの環境でまともに動くものまで壊れてしまうからです。
第1波を片付けても、まだ9件が残りました。ここからは1件ずつ、性質の違う壊れ方です。
(a) numpy 2.x で np.cross の2Dベクトル対応が削除された。 numpy のメジャーバージョンアップで、2次元ベクトル同士の外積(np.cross、本来3次元用だが2次元でも動くようになっていた挙動)が非サポートになりました。実際に2次元ベクトルを渡していた箇所を洗い出すと、全体で約180箇所ある np.cross 呼び出しのうち、該当したのはわずか2箇所――どちらも輪郭の Douglas-Peucker(線分近似)系のコードでした。修正は、その2箇所だけを明示的なスカラー外積 z = ax·by − ay·bx に置き換える、という局所的なものです。この1件は、依存ライブラリ側の破壊的変更(breaking change)がテストで検出できた例で、「自分のコードは変えていないのに CI が落ちる」という、原因の所在が一見分かりにくいタイプの壊れ方でもありました。180箇所のうち2箇所だけを洗い出せたのは、エラーメッセージが指す該当行から辿ったからで、全箇所を目視で総ざらいしたわけではありません。
(b) fit_plane_3d が CI 上でだけ nan を返す。 完全に平らな点群に対して平面フィッティングを行うと、点群の共分散行列の最小固有値が理論上ゼロになります。ここで、固有値からある量の平方根を取る計算があり、ローカルの BLAS(基本線形代数ライブラリ)実装ではその固有値が +ε(ごく小さな正の値)側に丸められる一方、CI のランナーが使う BLAS 実装では −1e-16 側(ごく小さな負の値)に丸まることがある。負の数の平方根は nan になります。同じ数式・同じ入力でも、丸め誤差の”向き”は実行環境の BLAS 実装に依存する――これは完全にローカルでは再現しない類の壊れ方でした。修正は max(w, 0) で固有値を非負にクランプする、シンプルだが効くガードです。この1件は、開発機とCIランナーとでBLASの実装そのものが違うことに起因していたため、ローカルでどれだけ同じテストを回しても再現しません。「理論上ゼロになるべき値」をコードの中で扱うときは、実際には厳密にゼロにはならないという前提でガードを書いておく必要がある、という一般則がここから導けます。
(c) カメラの縮退判定(純回転ペアの拒否)が Python 3.12 でだけすり抜ける。 2台のカメラで三角測量する際、もしカメラが並進(位置の移動)せず回転しかしていない(縮退したステレオペア)なら、三角測量した点は理論上無限遠に飛ぶはずです。ところが調べていくと、無限遠に飛んだ点は再投影(3D点をもう一度2D画像に射影し直す計算)をすると、なぜか元の画素にぴったり一致してしまうことが分かりました。つまり「再投影誤差」という、一見自然に見える指標では、この縮退ケースを検出できないのです。最終的な修正は、視差(disparity、両カメラの見ている向きのズレ)の存在そのものを検定するという方法でした。両画像の視線ベクトル(カメラから見た方向)の集合を、単一の回転(Kabsch アルゴリズムによる最適回転合わせ)でぴったり重ね合わせようとし、その残差の中央値を見る。縮退している(純回転)場合はこの残差が 3.5×10⁻¹⁶、健全な場合は 1.8×10⁻²――実に14桁のマージンで判定できることが分かりました。再投影誤差という一見もっともらしい指標が実は使えず、視差の存在検定という別の切り口に変えて初めて確実に判定できた、という点で、この1件は個人的に一番面白かったデバッグです。
なぜ「再投影誤差」が縮退を見抜けないのかを、3段階でかみくだいておきます。①ひとことで:無限遠にある点は、どの角度から撮っても同じ画素に写ります。②もう少し:三角測量が失敗して点が無限遠に飛んでも、その”間違った”点をもう一度カメラに再投影すると、無限遠点特有の性質のせいで、偶然にも元の画素とぴったり一致してしまう。つまり「入力と出力を一周させて誤差を測る」という、多くの場面で有効な検証手段が、この状況に限っては測るべきものを測れていないのです。③なぜ視差の検定なら見抜けるか:視差とは「両カメラが同じ点を別の角度から見ている」ということそのものの証拠です。カメラが純粋に回転しかしていなければ、両カメラの視線ベクトルは単一の回転だけで完全に重なり合うはずで、そこにズレ(視差)が残らない。再投影誤差が「答え合わせ」だとすれば、視差の存在検定は「そもそも問題が成立しているか」を先に確かめる、一段手前のチェックだった、という言い方もできます。
↑ 視差の存在検定を本図のために再実測したもの。縮退ペア(純回転)の Kabsch 残差中央値は 4.9×10⁻¹⁶、健全ペアは 1.5×10⁻² ―― 約 13.5 桁のマージンで、本文の 3.5×10⁻¹⁶ / 1.8×10⁻² と同オーダー。しきい値 1e-9 はどちらからも遠い。
(d) zig/GCC の UBSan が、float→int キャストの溢れを見逃す。 C コード生成のテストで使っている UBSan(Undefined Behavior Sanitizer、未定義動作を検出するツール)には、コンパイラによって検出できる項目に差があることが分かりました。GCC の -fsanitize=undefined は、float から int へのキャストで値が溢れるケース(float-cast-overflow)を含んでいません(clang は含む)。さらに厄介なことに、GCC は no-recover(1件目のエラーで即座に止める指定)も無視する挙動を見せました。この差は WSL 上の実 GCC 13.3 で再現し、明示的に -fsanitize=float-cast-overflow -fsanitize-trap=... というフラグを足すことで修正しました。「サニタイザを使っている」だけでは足りず、そのサニタイザがコンパイラ・バージョンによって何を検出し、何を検出しないかまで確認しないと、抜け穴が残るという教訓です。これは Fullseye の C コード生成(op の c_stmt から実際に C コードを吐いて、Python 版と bit-compare する仕組み)を支えるテストの一部で、「生成した C コードが未定義動作を踏んでいないか」を機械的に確認する層です。サニタイザという道具そのものを信頼するのではなく、その道具の守備範囲まで含めて検証する必要がある、という一段抽象度の高い教訓でもあります。
(e) 共有 CI ランナーでは、疎行列ソルバが密行列より遅い。 性能を上げるはずの疎行列(sparse matrix)ソルバが、共有 CI ランナー上では密行列(dense)より遅いという逆転が実測されました(実測 1.8〜3.2秒 vs 0.2〜0.3秒)。これはバグではなく、CI の共有マシンではハードウェアや負荷が専用機と違うという当たり前の事実です。ここから、「性能の主張は専用機でだけ検証する」という規律を再確認しました。本記事の「性能の正直な話(GPU)」の節と同じ精神です。共有ランナーは他の無数のジョブと物理マシンを取り合っているため、キャッシュのヒット率もメモリ帯域も、専用機とは別物になります。これ自体は直すべきバグではなく、「CI 上のタイミング測定を性能の主張に使わない」という運用ルール側で対処する種類の話です。テストの合否判定にタイミングを使わない(別途、専用機のベンチマークで別管理する)という設計判断も、この一件から得ています。
第2波まで潰して CI 全 green になり、PyPI に v0.1.0 を公開しました。ここで安心して終わりにしても良さそうなものですが、公開した直後にもう一段の検証――クリーンな venv(まっさらな Python 仮想環境)に pip install fullseye して動かしてみる――を行いました。これが最後のバグを捕まえました。
recon3d(3D 再構成のモジュール)が、scikit-image を無条件に import していたのです。scikit-image は extras 側の依存で、素の pip install fullseye(numpy + scipy だけ)では入りません。結果、import ops3d が、素のインストールでは即死する――第1波の torch のときと全く同じ形のバグが、今度は torch でなく scikit-image で、しかもCI では検出されず、公開後の手動検証で初めて見つかったという点が重要です。CI のフルスイートは opencv/skimage などの extras を入れた環境で回っていたため、このクラスのバグを CI 自体が見逃していました。修正して v0.1.1 を即日公開し、今度はクリーン venv で全スモークテストを実行して確認しました――0.1.1、numpy 2.4.6、502 op、パイプライン実行、ops3d 265 op、console scripts のすべてが揃って PASS。
「テストが全部通っても、pip install した素の環境で動くかどうかは別の検証」――これが最終波で刻まれた教訓です。
見逃した理由は単純で、CI のフルスイートは extras 込み環境(scikit-image が常在)で回っていたため、この無条件 import は一度も失敗しようがなかったからです。素のインストールを検証する core-minimal ジョブの対象を v0.1.1 で広げ、このクラスは以後 CI 自身が捕まえます。
↑ 失敗テスト数の推移(約80 → 9 → 1 → 0)。第1波=torch の無条件 import、第2波=絶対値と符号で捕まる9件、最終波=クリーン venv 検証で見つけた scikit-image の無条件 import。数値は本文記載の実績値。
失敗テスト数の推移は、約80 → 9 → 1 → 0 という3波(+最終確認1件)でした。フルスイートはローカルで 6224 passed。CI 自体は Python 3.10 / 3.11 / 3.12 のマトリクスに加えて、「numpy + scipy だけで動く」という主張を毎回実際に実行して確かめる最小構成のジョブを独立に持っています(このジョブこそが、最終波の scikit-image バグと同じクラスの事故を、次からは CI 自身が捕まえられるようにする、という意味を持ちます)。
この一連の出来事から、言葉にしておきたい教訓が4つあります。
面白いのは、①と④が同じ形の事故だということです。torch を無条件 import していたバグ(第1波)と、scikit-image を無条件 import していたバグ(最終波)は、原因もコードの場所も違うのに、「optional のはずの依存が、うっかり必須になっている」という骨格は完全に同じでした。1回目で得た教訓(ガードする・明確なエラーを出す)を全箇所に横展開したつもりでも、新しいモジュールを1つ足せば、同じ穴がまた開きうる。これは本記事の随所で触れている「バグ1件見つけたら同じクラスのバグが兄弟コードに眠っていないか疑う」という家訓を、CI というスケールの大きな舞台でもう一度学び直した、という言い方もできます。1つの修正で終わりにせず、同じ形の穴を塞ぐ仕組み(このケースでは「numpy+scipy だけで動く」ことを毎回実行して確かめる最小構成ジョブ)を CI 自体に埋め込むところまでやって、ようやく再発防止と呼べます。
こうした話は、正直に言えば「格好悪い」と感じる人もいるかもしれません。それでも私は、CI が実際に地雷を掘り当てたという記録そのものが、品質ゲートが本当に機能している証拠だと思っています。良い数字だけを見せる記事なら、この章は存在しません。
Status: Verified(RTX 5090 実測) ―― ただし対応 op のカバレッジは途上です(次章参照)。
「速い」も正直に言います。既定の1枚ずつの経路は scipy / OpenCV。バッチ化した torch の速い経路(--device cuda)は、重い・ベクトル化できる op を加速します。
「全部速くなる」とは書きません。どこで速く(実測つき)、どこがまだ CPU かまで書くのが honest disclosure です。
Status: Roadmap / Design proposal ―― ここから先は現状の限界と、実装前の構想を含みます。
それぞれについて、もう少し正直に補足しておきます。
HALCON カバレッジの 42.5% は、「HALCON カバレッジの物語」の節に書いた通り意図して絞った分母の上での数字ですが、それでも Filtering / Morphology / Regions / Segmentation の芯を厚くする作業自体は、まだ終わりが見えているわけではありません。特に Matching(テンプレート・変形マッチング)や 3D Reconstruction のような、単一の fn(v, a, b) では表現しづらい machinery 寄りの章は、型契約をどう拡張するかという設計判断が絡むため、単純に op を足せば伸びる、という性質のものではありません。
統一 API の移行については、正直に言うと歴史的な経緯の後始末という側面が大きいです。imgevolve 時代の命名規則と、Physical AI 知覚スタックを育てる過程で足した facade の命名規則が、完全には揃っていません。設計思想の節に書いた「補完が効いて読める書き味」を全域で実現するには、既存の呼び出し側コードを壊さずに段階的に寄せていく必要があり、これは機能追加よりも地道な作業です。
GPU 化については、使える部分は既にあって実測も速い(「性能の正直な話(GPU)」の節の RTX 5090 実測参照)、ただ約1000 op の全体にはまだ対応しきれていない、というのが正確な現状です。GPU 対応 op は「CPU 実装と interior 誤差 5e-3 未満で一致するものだけ載せる」という忠実性ゲートを通しており、速くなる代わりに答えが変わる、という事故を作らないことを優先しています。カバレッジを実際に使われる op の頻度順で広げていくのがこれからの仕事です。
やることは山積みですが、土台(型付き op・正直な評価・md=真実源のドキュメント・10982 テスト)は据わりました。ここから網羅と自然 API を伸ばしていきます。
ここからは、公開後に足した 8 族 111 op の話です。どれも「新しいから足した」のではなく、既存のやり方がどこで壊れるかを同じ土俵で測ってから足しています。型付きカタログは 511 op、進化レジストリは 847 op になりました(pip install -U fullseye)。
| 族 | できること | 入口の関数 |
|---|---|---|
| コヒーレンス走査干渉 | 段差・表面粗さを、位相の巻き戻しに頼らず測る | csi_stack_simulate / csi_height_map |
| 音響・振動診断 | 回転機械の欠陥周波数を、共振に埋もれた状態から取り出す | envelope_spectrum / order_spectrum |
| ライトフィールド | 1 回の露光から、後でピント面と視点を変える | lf_from_mla / lf_refocus / lf_depth_from_focus |
| 光子計数・時間分解 | 光を粒として数える。距離・蛍光寿命・Poisson 誤差棒 | tcspc_simulate / dtof_depth / photon_uncertainty |
| 四元数画像 | 色空間の 3 次元回転(チャンネル毎のゲインでは書けない操作) | rgb_to_quaternion / quat_color_rotate |
| FMCW レンジ-ドップラー | 距離・速度・到来角を 1 つの立方体から同時に出す | fmcw_beat_simulate / range_doppler_map |
| 鏡面反射の分離 | テカりを落とす。多灯の遮蔽に耐える法線復元 | specular_diffuse_split / photometric_stereo_robust |
| モーション増幅 | 肉眼で見えない 0.2 画素の振動を測る・見せる | displacement_series / motion_magnify |
以下、族ごとに「何が見えるか」と「どこで壊れるか」を並べます。壊れる場所の方が、たいてい役に立ちます。引数の一覧と単位は Studio の op ヘルプと docs/ops/<族>/guides/ の 24 本のガイドにあるので、ここでは入口の 1〜2 行だけ置きます。
白色光の干渉は、縞の位相ではなく包絡線のピーク位置で高さを決めます。位相シフト法(既存の主流)と同じ入力で比べると、破綻点が閉形式どおりに出ます。
| 真の段差 | 位相シフト法 | コヒーレンス法 |
|---|---|---|
| 0.15 µm | 誤差 0.0000 | 誤差 0.0000 |
| 0.20 µm | −0.1000 を返す(−λ/2) | 誤差 0.0000 |
| 0.30 µm | −0.0000 を返す(−λ/2) | 誤差 0.0000 |
| 1.00 µm | +0.1000 を返す(−3λ/2) | 誤差 0.0000 |
壊れ始めは λ/4 = 0.15 µm ちょうど。誤差は常に λ/2 の整数倍です ―― 縞の次数が飛ぶので、例外も NaN も警告も出ない、構造を持った嘘になります。λ を 0.8 µm に変えると破綻点も 0.20 µm へ移動します。λ/4 を越える段差があるなら、位相シフト法は使えません。
h = fs.csi_height_map(stack, z_step_um=0.05, wavelength_um=0.6, mode="gaussian")
単位はすべて µm、z_step_um は走査の実ステップと一致していることが前提です(ここがずれると高さが比例してずれ、やはり例外は出ません)。買う前の限界は csi_design、走査したくない場合は chromatic_confocal_height がスペクトルのピーク波長だけから高さを返します。
転がり軸受の外輪剥離は、欠陥周波数で鳴りません。数 kHz の構造共振が、200 Hz 以下の欠陥周波数で振幅変調されて届きます。だから生のスペクトルをいくら眺めても出てきません。
| 見る場所 | 107 Hz の振幅 |
|---|---|
| 生スペクトル | 4.3e-16 ← 成分として存在しない |
| 包絡線スペクトル | 0.499677(ピーク位置 107.000000 Hz) |
(生スペクトルの値は dsp.spectrum(...)[1] * 2/N = 片側振幅に直した後の数。生の返りは 5.493328e-12(同じ系で搬送波 12800 / 側帯波 3200)で、比は同じ。訂正(2026-09-02): 初出版はこの × 2/N を書き落としていました。)
sk = fs.spectral_kurtosis(x, 25600.0) # 復調帯域を機械に選ばせる
env = fs.envelope_spectrum(x, 25600.0, sk["band_lo"], sk["band_hi"])
print(env["peak_freq"], env["band_fraction"]) # 107.0 と ~1.0 = 本物
幾何から出した特徴周波数(bearing_defect_frequencies(1800.0, 9, 8.0, 40.0) → 外輪 108.0 Hz / 内輪 162.0 Hz)と突き合わせれば、どの部位かまで決まります。回転速度が変わる信号では、素朴なスペクトルは 7 % に潰れて 66.5 Hz に広がります。角度領域へ移す order_spectrum なら 0.999371 / 幅 0 bin です。
この族で一番危ないのは配列ではなくスカラです。 同じ録音を rate=48000 として読むと、欠陥は 107 Hz ではなく 200.625 Hz と報告されます。やはり例外は出ません。だから防御は rate の側に置いてあります ―― 任意の実 1 次元配列は本当に妥当な音響信号なので、型を分けても守るものが無いからです。
ライトフィールドは 4 次元 (視点 V, 視点 U, 高さ H, 幅 W) を扱います。既存のステレオ(2 眼)やフォーカススタック(実カメラの合焦)とは入力が違うので、型で分けてあります。
sharp = fs.lf_refocus(lf, slope=2.0) # 後からピント面を選ぶ
slope, conf = fs.lf_depth_from_focus(lf, np.linspace(-4.0, 4.0, 81))
z = fs.lf_disparity_to_depth(slope, focal_px=..., baseline=...) # mm へ
生の MLA 画像からの復号(lf_from_mla / lf_to_mla)は往復がビット一致、視差ゼロ(無限遠)は無言の inf ではなく ValueError、カメラの設計は lf_plenoptic_design です。
得るものと失うものが同じ計算から出ます。 リフォーカスによる被写界深度の利得は、角度分解能にぴたりと一致します。
| 角度分解能 | 被写界深度(画素基準) | 被写界深度(リフォーカス後) | 比 |
|---|---|---|---|
| 6×6 | 1.656 mm | 9.939 mm | 6.0016 |
| 8×8 | 1.656 mm | 13.254 mm | 8.0038 |
| 10×10 | 1.656 mm | 16.573 mm | 10.0075 |
比はハードコードではなく、許容錯乱円を変えて depth_of_field を 2 回呼んだ結果です(6.0016 の 0.0016 はその 2 回の差)。代償は同じ表の裏側で、空間分解能は 2048×2448 が 341×408 / 256×306 / 204×244 に落ちます。買う前に、この 2 列を並べて見てください。
光子計数は、光が連続した明るさではなく数えられる粒になる領域です。ここでは Poisson 分布が「分散 = 平均」なので、誤差棒が校正なしで出ます。既存の aug_read_noise(加法ガウスの読み出し雑音)とは雑音モデルが違い、両者が出会うのは Anscombe の一般化形だけです。
clean = fs.tcspc_background_subtract(hist, "median") # 屋外の日射を引く
print(fs.dtof_depth(clean, bin_ps=100.0, mode="gaussian")) # ≈ 3.0 m
sigma = fs.photon_uncertainty(counts) # sqrt(N) ― 校正不要の誤差棒
photon_statistics(counts)["fano_factor"] が 1.0 付近なら、本当に Poisson です。SPAD のデッドタイム補正は教科書式 m = n/(1+nτ) とビット単位で一致し、逆変換の往復誤差は 1.7e-16。dToF の距離推定は 1.5 m を注文して 1.5000003 m が返ります。
壊れ方が 1 つあります。 デッドタイムは検出器のレート流(Hz)に効くもので、時間 bin ヒストグラム(カウント)に bin ごとに掛かるものではありません。ヒストグラムを spad_deadtime_correct に渡すと、例外も出ず、恒等写像に限りなく近い値が返ります(相対変化 1.1e-4)。本物の計数レート(1e3〜1e7 Hz)なら 33.3 % 変わるところです。飽和も fail-closed も一度も踏まれない。 だから型を分けました ―― 分けないと、この「もっともらしい通過」は永久に検出されません。
面白いことはできます。ただし理由は 1 つだけです。
複素数の画素は 2 次元値で、回転軸が 1 本しかありません。四元数の純虚部 (0,R,G,B) は 3 次元ベクトルで、q·x·q* は色空間の 3 次元回転になります。純赤を青軸まわりに 90 度回して緑にする操作は、どんなチャンネルごとのゲインでも作れません(最良の対角近似でも ‖P−diag(P)‖₂ = 0.6667 ずれる)。ここが唯一の本物の能力差です。
import fullseye as fs
q = fs.rgb_to_quaternion(rgb)
turned = fs.quaternion_to_rgb(fs.quat_color_rotate(q, (0.0, 0.0, 1.0), 1.57))
chroma = fs.quat_color_filter(q, (1.0, 1.0, 1.0), "remove") # 灰色軸を落とす
spec = fs.qft2(q, "left"); back = fs.iqft2(spec, "left") # side は必須・往復は同じ side で
それ以外は売り込めませんでした。
使い分けはこうです: 狭帯域の被写体なら riesz_displacement_series、広帯域なら次節の motion_magnify。色空間の回転が要るなら四元数以外に選択肢はありません。
FMCW レンジ-ドップラー(8 op) は距離・速度・到来角を 1 つのビート立方体から出します。窓関数の効果が実測に出ます ―― −45 dB の標的は矩形窓では −24.57 dB の漏れに埋没し、hann で −43.56 dB に復活します。
rdmap = fs.range_doppler_map(fs.fmcw_window_apply(cube, "hann"), normalize=True)
peaks = fs.range_doppler_peaks(rdmap, dr, dv, n_peaks=2)["peaks"] # dr, dv = bin 幅
dr, dv を渡さないと、返り値の range_m は「メートル」ではなく「ビン番号」です(3.0 と 3.5131928671875)。単位の落とし穴はここ 1 箇所に集約してあります。
鏡面反射の分離(13 op) は、テカりを色で落とす(1 材質・白色光源)か、多灯で法線を復元します。
破綻するのはハイライト汚染で、遮蔽ではありません。 正の外れ値 +3.0 を 8 灯中 4 灯に足すと ransac 65.4 度 / median 7.4 度(1〜3 灯なら 0.0001 度)。中央値の破綻点がちょうど 50 % なので、4/8 で崩れるのは理論どおりです。
一方遮蔽は解けます。measured 0 は n·L ≤ 0 という不等式なのに線形解法が等式として読むのが原因で、しかも「アルベド 0」の退化解は潰れた全フレームを厳密に再現するため、遮蔽灯の集合が無矛盾な仮説として真の解を上回れてしまいます。判定を「当てはめが許容差内で説明でき、かつ測定値自身が同じ許容差より 0 から離れている」に変えると:
| 遮蔽灯 | 修正前 | 修正後 |
|---|---|---|
| 0〜3 灯 | 0.0001 度 | 0.0001 度 |
| 4 灯 | 70.5 度(なお「8/8 全部を信じた」と報告) | 0.000115 度 |
| 6 灯(生きた灯 2 本) | 8.99 度(答えを返す) | 全画素 NaN(解けないと言う) |
最後の行が要点です。生きた灯 2 本は未知数 3・式 2 の劣決定で、原理的に解けません。
訂正(2026-09-02): 初出版はここを「破綻点は 4 灯の遮蔽」と書いていました。数字(70.5 度)は本物でしたが、原因はモデルの読み違いで、直したら遮蔽は解けるようになりました。
モーション増幅(9 op) は、0.2 画素の振動を測り、見せます。崖の位置が閉形式で決まるのがこの族の要点です ―― 位相基準は c·J₀(k·A) に従うので、第一零点 2.4048/k = 3.0619 画素を越える振幅では測定が反転します。
print(abs(fs.displacement_series(clip, 3.0, 5.0, 32.0)[:, 0]).max()) # 0.2003 px(真値 0.2)
r = fs.motion_magnify(clip, alpha=8.0, f_lo=3.0, f_hi=5.0, fps=32.0) # 帯域 [Hz], fps
print(r["motion_snr_change_db"], r["band_power_ratio"]) # -2.18 dB, 0.629
増幅の代償は同じ返り値の中にあります。SNR は必ず下がります(上がることはありません)。band_power_ratio が 1 から離れるほど、線形の仮定から外れています。
512³ の CT を全部 RAM に載せるのは、たいていの場合ただの無駄です。「どこを計算するか」「何を保持するか」「一度に載せる量」の 3 つを別々の道具で削ります。
part, offset = fs.vol_crop_domain(vol, mask) # ① どこを計算するか
back = fs.vol_uncrop(heavy_3d_op(part), offset, vol.shape) # 元の座標系へ厳密に戻す
pts = fs.vol_boundary_points(mask, spacing=(0.5, 0.2, 0.2)) # ② 殻だけ、(z,y,x) mm/voxel
print(fs.vol_rle_volume(fs.vol_rle_encode(mask))) # ③ dense を作らず voxel 数
実測は、96³ の合成 CT から球だけ切り出してメモリ 1/34、中実の球を殻だけにして 19 %、384³ の部品マスクを RLE にして dense の 1/145。RLE のまま体積とバウンディングボックスを出すと 300〜1000 倍速、和・積・差の集合演算は 192³ 同士で 3.1 ms です。
殻にすると半径がわずかに小さく出るのは正しい挙動です。 痩せた点群のまま球フィットを閉じると中心誤差 0.000 mm、半径は 4.33 / 4.5 mm ―― 内側境界のボクセル中心は表面より半ボクセル内側にいるからです。この系統誤差は例の中に明記してあります。「小さく出た」を精度の問題だと思って追いかけないでください。
3D 側にはこの期間で CT windowing(軟部窓では骨が飽和し、骨窓では軟部が背景と同化する、を機械検証)、幾何変換、virtual probe(プローブ 1 本でパイプ壁厚 2.042 mm / 真値 2.000 mm)、3D FFT フィルタ、Richardson–Lucy デコンボリューションも入りました。RL については docstring に書いた「10 反復で RMSE 半減」が実測 0.81x だったので、半減しない理由(残差は縁の階段が支配し、RL はそこをゆっくりしか直せない)ごと書き直し、代わりに RL が本当に最適化している量 ―― 推定を再ぼかすと観測に 0.021x で一致する「前方一貫性」―― を主張として固定しました。docstring の数字は、実測してから書いてください。
見るほうも変わりました。 Studio の 3D ビューアは F キーで一人称モードに入ります ―― WASD で歩き、ドラッグで見回し、ホイールで歩く速さを変え、R で入口に戻る。臨場感の核は透視投影(近いものは大きく、遠いものは小さく)で、この投影は自作のソフトウェア描画なので、ピンホールカメラの解析式と 10⁻¹³ の精度で一致することを独立に検証してあります。CT の中を歩いて欠陥を探す、点群の遺跡スキャンの中を歩く ―― 「データを見る」が「データの中に立つ」に変わると、気づくものが違います。
骨格(スケルトン)は fs.apply(mask, "em_skeleton")(Eckhardt–Maderlechner 法 1993 のクリーンルーム実装)で細線化し、junctions_skeleton / r2_endpoints_skeleton で分岐点と端点を、3D 側は skeleton_junctions3d / skeleton_endpoints3d / skeleton_prune3d / skeleton_branches3d でノード・枝・端点を返します。太いボリュームを渡すと Lee 法(1994)で細線化してから読みます。voxel 骨格のグラフ化は血管・多孔質・根系のネットワーク解析向けで、2D と 3D が同じ語彙になっています。
実装の検証は、文献が公表している EM93 の実行結果との画素単位の突き合わせです(検定形状 1 = 724/724 画素で差分ゼロ、残る 2 形状も公表画素数 2434/3895 と一致)。この突き合わせはそのまま回帰テストに焼き込んであります。HALCON 実機との直接照合だけは未実施です(手元にライセンスがないため)。
↑ 粘菌の管ネットワークから骨格グラフを取り出す ―― 粘菌(モジホコリ)の数理モデル(流量の多い管が太り、使われない管が退化する適応ネットワーク)を育て、em_skeleton(シアン)と junctions_skeleton(白 = 分岐点)で読んだもの。左は探索中の網目、右は収束後 ―― 最短路 1 本だけが残る。使用 op: binary_threshold, em_skeleton, junctions_skeleton, dilation_circle。この粘菌シミュレーションは別に進めている「進化する脳」研究の実験データそのもので、そちらはいずれ別の記事で書きます。
1D 側は「足りない」のではなく「繋がっていなかった」という状態でした。1D 関数の平滑化・微分・極値・照合(23 関数)に対応する実装がリポジトリの中で完全な孤児になっていて ―― どこからも import されず、パッケージ登録もテストもカタログもなし ―― しかも facade の対応表は既にそのモジュールを参照していました。つまり PyPI からインストールした版では該当 23 op が ModuleNotFoundError で全滅していたわけです(出荷バグとして修正済み)。
いまは信号処理 16 関数と合わせて 1D 統一目録 37 op。解析真値のテスト 41 件(sin の微分 ≈ cos、ゼロ交差 = kπ、減衰振動から周期・時定数・遅延を真値どおり復元)で固定してあります。2D の measure1d・3D の probe・センサー系列は、どれも「プロファイル (x,y) を取り出す」で合流し、その後段がこの目録です。
ギャップ監査の規律: 「無い op」を探すだけでは足りません。「あるのに世界に接続されていない op」―― 実装されテストに値するのに、目録・パッケージ・facade のどこかで鎖が切れているもの ―― を探してください。これで 23+16 個の関数が息を吹き返しました。
検査装置の設計で最初に決まるのは「この構成で、何 µm の欠陥から見えるのか」です。カタログの数字を眺めていても出てきません。ここでは画像ではなく限界を返す層を作りました。

左が仮想の部品を撮った画像、右が検査器の答えと正解マスクの重ね合わせです。欠陥を 20 µm から 400 µm まで 48 段階で大きくしていくと、あるところで急に検出が始まります。画面の数字は全部その場で計算した実測値です。
この系(f=35 mm・作動距離 200 mm・f/4・画素ピッチ 3.45 µm・2448×2048)の答えはこうです。
| 量 | 値 | 出どころ |
|---|---|---|
| 物体側の画素サイズ | 16.264 µm/画素 | ガウス結像式からの倍率 0.21212 |
| 標本化の限界(Nyquist) | 32.53 µm | 画素ピッチの 2 倍を物体側へ |
| 回折の限界(Airy 基準) | 30.67 µm | 2.44λN(1+m)、実効 F 値 4.848 |
| 光学限界(律速は標本化) | 32.53 µm | 上の 2 つのうち大きい方 |
| 実測の検出開始 | 45.80 µm(2.82 画素) | 5 seed × 48 サイズの掃引 |
光学限界の 1.41 倍が要る、というのがこの構成の答えです。この比が読み方の全てです ―― 大きければアルゴリズムか照明の問題、1 倍に近ければレンズの問題。切り分けがここで決まります。

もう 1 本は逆向きの掃引です。欠陥を 100 µm に固定して、作動距離だけを 120 mm から 700 mm へ動かす。画素サイズが 8.38 → 65.55 µm に膨らみ、光学限界が 18.40 → 131.13 µm へ悪化します。見どころが 3 つ ―― 律速が途中で入れ替わる(160.5 mm を境に回折律速から標本化律速へ)、光学限界が 100 µm を追い越すのが約 551.6 mm(ここから先は原理的に解けない帯)、そして実際に検出が保つのは約 403.3 mm まで。原理の限界より 150 mm ほど手前で、実力の限界が先に来ます。
import numpy as np, fullseye as fs
system = fs.VisionSystem(focal_mm=35.0, working_distance_mm=200.0,
pixel_pitch_um=3.45, width_px=2448, height_px=2048,
f_number=4.0, depth_tolerance_mm=1.0)
sweep = fs.inspection_sweep(system, np.linspace(20.0, 400.0, 48),
kind="scratch", seeds=5, contrast=-0.25)
print(fs.detection_report(sweep))
defect_um_grid は µm、depth_tolerance_mm は「部品がフォーカス面からどれだけ外れうるか」の mm です。detector= に自分の検査関数を渡せば、自分のアルゴリズムの検出開始点が同じ土俵で出ます。kind は scratch / pits / crack などで、欠陥は確率幾何(傷はランダムウォーク、孔食は点過程、割れは分岐する経路)で生成されます ―― この見方の利点は絵が綺麗なことではなく、画素完全な正解マスクが定義から無料で出てくることです。注釈作業が存在しません。
層は 3 つで、visiondesign が閉形式の光学(ガウス結像式・Nyquist・Airy 基準・錯乱円・cos⁴ 則)、defectgen が欠陥生成、visionlab が「設計 → 限界 → 部品を作る → 撮る → 検査する → 判定」を一本に繋ぎます。レンダラを持たないという制約が設計を決めました ―― モンテカルロ光輸送は依存方針にも計算方針にも合いません。分解能・被写界深度・周辺光量・コントラスト伝達はどれも数十年前から教科書にある閉形式なので、実装はそれらの配置にすぎません。
この層で見つけた最悪のバグは、レポートが「光学限界に未到達」と書いていたのに、レンズはちゃんと解像していたというものでした。resolvable という 1 つの判定に、横分解能と被写界深度という独立な 2 軸を畳んでいたのが原因です。
ある構成では横分解能の限界が 30.7 µm で 60 µm の欠陥は余裕で解像できているのに、被写界深度 0.52 mm が要求公差 1.00 mm に足りないせいで、どのサイズも resolvable に格上げされない。そして見出しには「光学限界に未到達」と出る。これを読んだ人はレンズを買いに行きますが、直すべきは絞りか公差かフォーカス機構です。
いまは必ず分けて出ます。
optical limit : 30.7 um (diffraction-limited)
detection limit: 60.0 um
depth of field : 0.52 mm < 1.00 mm required — resolvable laterally, but the part drifts out of focus
-> nothing is rated "resolvable" for that reason alone; the lens is not the thing to change.
同じ性質の不具合がもう 1 つありました。掃引の集計で、1 画素未満で描けなかったものと外から渡された検査器が例外を投げたものを、検出率 0 % に混ぜていたのです。いまは unrenderable と detector_failed を別々に数え、評価できた試行が 0 なら検出率は 0% ではなく None を返します。
規律: 「できなかった」を集計するときは、できなかった理由を混ぜない。混ぜると、設計やアルゴリズムが不当に責められます。閉形式で必ず数値が出る量を「未到達」と書ける場所はありません。
新しい op のネタ元として、産業ビジョンの展示会とアワードを一次情報で読む手順書(docs/INDUSTRY_SIGNALS.md)を用意しました。論文コーパスとは判定軸が違うのが理由です。査読者が見るのは「学術的に新規か」、審査員が見るのは「今まさに産業が金を払う価値があると判断したか」。後者は仕様が確定していて検証すべき数値があるという意味になります。
在庫確認の罠も手順に書いてあります。キーワード 1 つで「0 件」と結論してはいけません ―― hyperspect と spectral で引いて「ハイパースペクトルは無い」と書きかけましたが、実体は spec_ 接頭辞の 14 op でした。結局「有る / 無い」の 2 値ではなく「有るが未登録」「有るが規約外」を含む 4 状態で記録することにしています。
そして却下したものを 13 件、理由つきで保存してあります。カメラの伝送インターフェースは「op ではなく転送層」で恒久的に対象外、エッジ AI プロセッサはハードウェア、学習ベースの欠陥分類は重い依存が方針違反でかつ閉形式の真値が作れない、光輸送レンダラは正直に「できない」。この記録が無いと、次回また同じ往復をします。
単体テストと敵対的検証の次に、op を繋いだときだけ現れるバグを探す層を置きました。そして、その層自体が嘘をつくことを知りました。この節は、同じ仕組みを自分のライブラリに置く人向けの手順です。
型付きプール + ランダム連鎖 + 署名収束。 各 op の宣言(in 型 → out 型)に従ってプールから引数を引き、ランダムに op を連鎖させ(拡散)、産物をプールに戻す。例外や異常はすべて (種別, op, 例外, メッセージ) の署名に潰して数える(収束)。
署名の分類が心臓部です。
| 種別 | 意味 |
|---|---|
| CONTRACT | 文書化された ValueError = 白 |
| SUSPECT | 生の TypeError / IndexError = 契約の穴 |
| TYPEMISS | 宣言と違う型を返した = 型の嘘 |
| NONFINITE | NaN / Inf の無言戻り |
| GROWTH | 産物がプール上限を超えた(黙って捨てずに記録する) |
py -3.11 tools/chain_fuzz.py --chains 1500 --length 6 --seed 7001 \
--coverage-out coverage.json --explore 0.3
py -3.11 tools/chain_fuzz.py --minimize findings.jsonl --only fit_zernike # 最小再現へ削る
py -3.11 tools/chain_fuzz.py --replay 7001 --script "op_a,op_b,op_c" # 再現の確認
--coverage-out が本節の主役です。--explore は「まだプールに無い型を産む op を優先する確率」で、0 が一様(旧挙動)。
ファザー自身も現場で 2 回鍛えられました。 初走行は拡大系 op の連鎖でプールの体積が指数増殖し、34 GB の voxel に半径 1 のモルフォロジーが 20 分貼り付く「ハングもどき」で停止。次は 4 万制御点の TPS フィットが内部で 12 GB の密行列を確保して停止 ―― こちらはプール上限では防げません。入力は小さいのに内部割当だけが巨大になる、というのは敵対的検証の独立した家系です。同じパターンで PSF 生成(σ に桁違いの値が紛れると 64 GB)、CPD 対応行列も一掃し、op 側に fail-closed の上限を置き、TPS 変形はチャンク化してビット一致のまま有界メモリにしました。
成果の代表を 1 つ。fit_zernike が稀に全係数 NaN を返す件は、単体では再現せず 3 波にわたって「グレー」のまま持ち越していました。連鎖トレースで条件が判明します ―― float64 では有限な 1e39 級の値(増幅系連鎖の産物)が、torch 経路の float32 キャストで inf に化ける。すると grid_sample と lstsq が NaN を無言で返す。修正は「キャスト後の有限性を検証する」ヘルパ 1 個ですが、同じキャストは 20 箇所あるので、1e39 を実際に流し込んで確認し、無言 NaN を出した 4 op だけを直しました(sobel3d などは実測で無事だったので触っていません)。
もう 1 つは「inf はバグではなく、契約かどうか」という整理です。 sdf_subtract の inf 出力は、出所が esdf の「全部自由空間なら +inf」という文書化された契約で、min/max 代数がそれを数学的に正確に伝播していただけ ―― 無実です。ところが同じ family の sdf_smooth_union だけは内部が算術(inf−inf、inf×0)なので inf 入力で全 NaN ―― こちらは本物のバグでした(ブレンド帯 |
a−b | <k が inf で退化することを使い、厳密に min へ退化させて修正)。「非有限を出した op」を責めるのではなく「非有限の出所と契約」を追ってください。 |
この節がこの記事で一番、他のプロジェクトにそのまま移せる部分です。 ファザーの「発見ゼロ」は、次の 4 つの形で未実行を頑健さに偽装します。同じ形は 1 つのプロジェクトで 4 回踏みました。
1. 既定値つきの引数を一切上書きできない。 既定値がプールの寸法と噛み合わない op は毎回 ValueError で弾かれ、一度も実行されないまま「発見ゼロ」に数えられます。実例: lf_from_mla の既定 angular=(5,5) は 32×32 を割り切れず、1200 連鎖で一度も走っていませんでした。
→ 検出: op 名で狙い撃ちするヒントだけ既定値も上書きできるようにする(名前レベルのヒントを既定値に効かせると既存 op の挙動が一斉に変わるので、そちらは据え置き)。
2. カバレッジが数しか出ない。 「304/417」では、残る 113 が頑健だから発見が無いのかそもそも到達不能なのかが分かりません。
→ 検出: 族ごとの内訳を出す。出した瞬間、光子計数族が 10/17 ―― fail-closed が効きすぎて 7 op が一度も実行されていないと分かりました(汎用 signal プールは負値を持つ正弦波で、光子カウントは非負が契約なので毎回きれいに拒否されていた)。守りが完璧に働いた結果、その守りの奥が一度も試されない。
3. 署名がメッセージ中の数値で分裂する。 良いエラーメッセージほど「負の bin が 127 個、最小 −1.176」のようなその実行固有の数を含みます。素の文字列で同一視すると、同じ 1 件が毎回別署名になる。署名が 99 → 238 に膨れた増分のほぼ全部がこれでした。 → 検出: 署名を作る前に数値を伏せる。238 → 40 に収束します。
4. 必須引数を束縛できず、記録も残さずスキップ。 3D 族が 1500 連鎖で 310 中 204 しか実行されていない理由を掘ったら、op が頑健だったのではなくファザーが黙って飛ばしていました。
必須引数を束縛できず黙ってスキップ 70
入力型がプールに無い(連鎖で作る必要) 21
束縛は通る(単に引かれなかった) 9
足りなかったのはカメラ内部行列、姿勢、RANSAC の閾値、voxel 化の範囲と解像度といった、ごく普通の引数でした。ヒントを足して経路を開いた瞬間、これまで一度も動いていなかったところから本物の型不整合が 5 件出ます。
project_points out 宣言 image2d → 実際は (uv(160,2), depth(160,)) のタプル
alpha_shape_boundary out 宣言 points → 実際は添字 (38,) int64
segment_rigid_motions out 宣言 labels → 実際は dict{labels, motions}
pnp_ransac in 宣言 image2d → 実際の第2引数は 2-D 点 → 生 IndexError
surface 型 多項式モデルと B-spline モデルを同じ名前に畳んでいた
台帳全体の健全性検査を書いたら、同じクラスがさらに 7 件。直せなかった 3 件は理由つきで一覧に明記し、「ちょうどこの集合だけ」を検査するようにしてあります ―― 直したのに残っていても、新しい乖離が増えても落ちます。
到達不能かどうかは、推測せず不動点で解けます。 初期プールの型から始めて、入力が揃う op の出力型を足し、閉じるまで回す。実測すると 434 op 中、構造的に到達不能なのは 1 件だけでした。残りは全部「引かれなかっただけ」です。
走らせた結果はこうなります。
== 拡散 1500 連鎖 x len 6(seed 7001, 45s)
== op カバレッジ: 321/434
== 族ごとの到達: 1d 34/34 2d 12/12 3d 204/310 lightfield 17/17 math 20/26 optics 17/18 photon 17/17
== 発見(生): {'CONTRACT': 284} / 署名数 40
「同じ形だから同じ型でいい」は、静かに間違う系を作ります。判断基準は 1 つです。
混ぜたときに例外が出るなら、同じ型でいい。もっともらしく間違った数字が返るなら、分ける。
いちばん強い例は偏光でした。偏光子の掃引と多灯のライトスタックは、どちらも (N,H,W) の非負配列で構造的に区別がつきません。 そして混ぜると両方向とも黙って間違います。
(0,0,1) の平らな面に対して 34 度ずれた法線を残差 21 % で返す。同じ op が本物の測光データなら 0.000115 度です。差は 296,000 倍(独立に測り直して 35.15 度 対 0.000000 度)。例外も NaN も出ない、自信を持った嘘です。同じ判断を、時間軸が先頭の動画 (T,H,W) と空間ボクセル、到達時刻立方体 (H,W,T)、色の四元数とモノジェニック信号、複素のビート立方体と実の光子ヒストグラム、z 走査スタックでも行いました ―― 実測で 6 回。
逆に分けなかった例が音響信号です。任意の実 1 次元配列は本当に妥当な音響信号なので、型を宣言しても嘘にならない代わりに守るものが無い。危険は配列ではなくスカラの側にあったので、防御をそちらへ置きました。
分けるときの落とし穴が 1 つあります ―― 入口の op と消費側の op は、必ず同じモードへ一緒に置いてください。 消費側だけ足すと、誰もその型を産まないので永久に到達不能な死んだ語彙が増えるだけです(ファザーで踏んだのと同じ罠)。
Status: PoC ―― 4 課題での実証です。汎用の自動設計はここでも主張しません。
層② の続きです。語彙を 511 op に広げても、それを使う仕事が無ければ空回りします。 ここはその実測です。
カタログに 34 op 足した直後、進化探索の語彙は 1 つも増えていませんでした。 橋渡し op が 0 件。理由は 2 段階でした。
まず、新しい型に対応する進化側の型が無い。これは足せば済みます。ところが足しても足りなくて、その族の入口(画像 → ライトフィールド、深度 → 到達時刻立方体)が既存の画像型を入力に取る。既定語彙に入れると既存型の候補リストが動き、ゲノムから op への写像が変わって過去のチャンピオンが黙って書き換わります。
結論は前節と同じ「入口と消費側を必ず一緒に、同じモードへ置く」。既定語彙は 801 op のまま 1 つも動かさず(写像の不変性を保つ)、広い語彙(opt-in)側で 873 → 890 op、新族の橋は 5 → 22 本にしました。この不変量はテストで固定してあります ――「その型を産む op が語彙に無いのに、食う op だけある」状態を検出したら落ちます。
進化ループを回すと、落選理由の筆頭がこれでした。
落選 5 課題が受け付けない入力型(histcube)
落選 4 課題が受け付けない入力型(lightfield)
落選 2 課題が受け付けない入力型(counts)
課題 12 件がすべて古い型だったのです。新しい型の課題を 4 つ足しました。真値はどれも前方モデルから厳密に作れます(答えを知ったうえで入力を合成する)。
py -3.11 robust.py --problem photon_denoise --seeds 3 --gens 12 --pop 12 --isolate \
--workdir out/rb_2026_09_02_A # workdir は空であること(理由は後述)
robust.py は N seed を独立に回し、選択は必ず TRAIN 側で行い、locked holdout(champion に対して一度だけ採点する、本当に触れていない分割)を報告します。seed 間のばらつきも一緒に出ます。
| 課題 | 恒等 | 手(既存 op 単体の最良) | 進化 | 手比 | seed 間 std | 手超え |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 光子ヒストグラムのデノイズ | 0.4174 | 0.5536 | 0.7845 | +41.7 % | 0.0608 | 3/3 |
| 振動している場所の地図 | 0.0000 | 0.7163 | 0.8941 | +24.8 % | 0.0006 | 3/3 |
| ライトフィールドの視差地図 | 0.0000 | 0.5219 | 0.5465 | +4.7 % | 0.0224 | 1/3 |
| 鏡面反射の除去 | 0.4905 | 0.8343 | 0.6277 | −24.8 % | 0.1900 | 0/3 |
同じ表を観測用の分割で取ると、こうなります。
| 課題 | 恒等 | 手 | 進化 | 手比 |
|---|---|---|---|---|
| 光子ヒストグラムのデノイズ | 0.3265 | 0.4433 | 0.7944 | +79.2 % |
| 振動している場所の地図 | 0.0000 | 0.6791 | 0.8783 | +29.3 % |
| ライトフィールドの視差地図 | 0.0000 | 0.4882 | 0.5075 | +4.0 % |
| 鏡面反射の除去 | 0.4422 | 0.8730 | 0.7761 | −11.1 % |
光子の手比が +41.7 % と +79.2 % に割れます。 しかも恒等写像の値まで 0.4174 対 0.3265 と動く ―― op を 1 つも適用していないのに動くのですから、これは性能ではなく抽出そのものの揺れ(1 split 8 件)です。片側だけの表を出すと、抽出運を性能として報告することになります。
光子計数の champion は 光子族だけで閉じた合成でした。
irf_convolve → background_subtract → deadtime_correct
新しい族が「単体で使える op」ではなく、op を繋いだ手順として価値を出した最初の例です。
負けた 1 件の読み方が、この表で一番役に立ちます。 鏡面反射の除去で進化が見つけた champion は、四元数族を経由する族またぎの経路でした(色画像 → 四元数 → 色空間回転 → 色画像)。観測用の分割では 0.7761 と手の 0.8730 に迫って見えたのに、触れていない分割では 0.6277。seed 間のばらつきも標準偏差 0.190 で、3 seed のうち手を超えたものは 1 つもありません。勝った振動地図は逆に、触れていない分割のばらつきが標準偏差 0.0006 で 3/3 が手を超えました。
規律: 観測用の分割だけを見ると「惜しい」と読みます。locked holdout とばらつきを同時に出さない限り、勝ったかどうかは決まりません。
訂正(2026-09-02): この表の初出版は、1 行の中で基準線と champion を別の抽出から取っていました (基準線が cfg seed 1〜2、champion が cfg seed 0。しかも課題ごとに seed が違う)。 原因は
robust.pyが基準線ファイルの不在をnullのまま素通ししていたことで、例外は出ません。 いまは進化を始める前に自分で基準線を測り、nullが残れば abort します。 上の表は測り直した値で、成果物に残っていた進化値と 4 桁一致します。 なお workdir に基準線 JSON があるとevolve.runが初期集団を差し替えて結果が変わるので、 上のコマンドは空ディレクトリを指定しています。
前半の同名の章の続きです。ここでは規律を検査に落とした話を 3 つ。
「同じ名前で実装すると問題ないか?」という問いへの答えは、コードが独立に書かれていても、来歴は書いたものが全てです。実際、新しいモジュールの docstring に商用製品名が「このモジュールが存在する理由」として書き込まれる事故が起きました。コードは公開文献から独立に起こしたものでしたが、それでも由来の記録は汚れます。
規律を三分法に書き直しました。
| 用途 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| 自分たちのもの(モジュール名・op 名・API 名・「これが存在する理由」)に他社名を付ける | 禁止 | 実際にどう書いたかに関わらず、偽の来歴記録を作る |
| 相互運用の識別子(機材の driver を選ぶ文字列、別ツールから来た人向けの別名表) | 許可 | 向こうに実在するものの事実上の名前。消しても独立性は上がらず可用性だけ下がる |
| 出典表記つきの引用(調査記録で「どの賞が誰に出たか」を URL つきで書く) | 許可 | これは引用であり、消すと検証不能になる。帰属は盗用の反対 |
判定基準は「その名前は自分たちのものを指しているか、向こうのものを指しているか」。向こうのものを出典つきで指すのは引用で、向こうのものを自分たちに貼るのが、絶対にやってはいけないことです。
旧版の規則は「文書のどこにも書くな」でしたが、リポジトリ自身がそれを守っていませんでした。 守れない規則は監査もできません。実態に合う形へ直したうえで、機械検査を書きました ―― モジュール名・関数名・モジュール docstring・公開 docstring の 4 面を走査し、免除には理由の記述を必須にしてあります。
py -3.11 -m pytest tests/test_provenance_naming.py -q # 7 passed
GPU 加速は「CPU の正解と数値一致した op だけ載せる」という忠実性ゲートで運用しています。そのゲートに 3 つの穴がありました。同じことを自分で書く人のために、全部並べます。
1. reflect パディングは torch と scipy で別物です。 端のピクセルを複製するかしないかが違います(scipy の既定は reflect、torch の同名は反射の起点が 1 画素ずれる)。この差の修正が一部のカーネルにしか当たっておらず、直したら sobel・median など 7 op が端まで完全一致になりました。さらに「原理的に忠実化できない」と結論して除外していた DoG(差分ガウシアン)も、真犯人がこのパディングでした。移植で端が合わないときは、まずパディング規約を疑ってください。
2. ゲートが 1 パラメータ点でしか試験していませんでした。 大カーネル時に検査マージンへ端がめり込みます。5 点スイープ + カーネル半径連動マージンへ強化しました。
3. 強化版にも第二の穴。 平坦(定数)画像で、正規化が float32 の丸め雑音をフルスケールに増幅します。 派手な壊れ方をします ―― 定数入力で canny が全面前景化する。検査画像に定数画像と量子化画像を加えたところまでで、全 90 写像が一致しています。
別名 op の機械探索にも同じ罠がありました。 実装が同一で名前だけ違う op を、全未対応 op × 全 GPU カーネルの総当たりで掘ったのですが、最初にテスト画像へ塩ノイズの二値画像を使ったら「収縮すると全部消える」縮退で偽の一致が量産されました ―― 全ゼロ同士は何とでも一致します。 構造化した blob 画像に替えて再探索し、5 パラメータ点の実測で確認できた 42 件だけを採用(灰色画像で別動作をする 1 件は数値が一致していても棄却)。これで出荷レシピ 20 本の GPU カバレッジは 45 % → 79 % になりました。
同じ期間に自分と AI の誤りを 5 件記録しました。物語は要らないので、規則の形にします。
pose の検査を isinstance(np.ndarray) で書いたら 6 件挙がり、うち 4 件は自分の述語の誤りでした ―― GPU 対応の op は torch のテンソルを返すのが約束だからです。形で判定し直すと、残った 3 件は本物でした(1 つは pose を名乗りながら R も t も持っていなかった)。pose_quat の別のバグ(正規化で分母に 1e-12 を足していた)が非直交な行列を食わせていた結果です。正しくは 4.33e-14 ―― 4 桁小さく、ただの丸め誤差で、優位ではありません。四元数の在庫確認で、四元数・双対四元数の関数が 28 個実在するのに、どちらの facade からも 1 つも引けない状態だと分かりました。配線した直後、3 件の無言の誤りが出ます。
quat_normalize([0,0,0,0]) が [0,0,0,0] を返し、回転行列にすると単位行列になる ―― 「回転が定義できない」が「回転しない」に化ける。|RᵀR − I| = 4.0e-12 ―― 丸め誤差ではなく一方向の縮みで、合成を重ねるほど溜まる。原因は norm + 1e-12 で割っていたことでした。零長を fail-closed にして厳密除算に直すと、直交性のずれは 4.4e-16 になります。切り分けで分かったのは、4.0e-12 という数字は quat_to_hom_mat3d が内部で quat_normalize を呼ぶため ε が二重に効いていたからで、外側の式だけ再現しても現行コードでは出ないことでした。
同じクラスの取りこぼしは、兄弟コードごと一掃してください。 サイズ上限が float64 昇格の後に効いていて防ぐはずの確保を防げていなかった件も、2 モジュールで直しました(0 バイトの view で 0.0000 秒の拒否を確認)。
8 族あわせて、敵対的検証で見つけて直した実バグは 30 件超。すべて「例外が出る」ではなく「黙って間違った数字を返す」型です ―― 角度が正弦で折り返されて 95 度と 85 度がビット完全に同一になる、開口の無いアレイが −90 度を自信を持って返す、パッドを跨ぐフレームが最も衝撃的に見えて存在しない過渡を報告する、端で切れた包絡線が 76 % 間違った高さを返す、波長の nm/µm 取り違えが完全に無症状。どれも、走らせて測らなければ見えないものです。
pip install -U fullseye で入るものを、能力の側から並べておきます。
| 使いたいもの | 入口 | 覚えておく数字 |
|---|---|---|
| 段差・表面形状(位相の巻き戻し無し) | csi_stack_simulate / csi_height_map |
位相シフト法は λ/4 で壊れる |
| 回転機械の欠陥診断 | envelope_spectrum / order_spectrum |
欠陥周波数は生スペクトルに無い |
| 後からピント・視点を変える | lf_refocus / lf_depth_from_focus |
利得 = 角度分解能、代償は空間分解能 |
| 光子レベルの計測と誤差棒 | tcspc_simulate / dtof_depth / photon_uncertainty |
Poisson は分散 = 平均(校正不要) |
| 色空間の 3 次元回転 | rgb_to_quaternion / quat_color_rotate |
四元数固有の利得はこれだけ |
| 距離・速度・到来角 | fmcw_beat_simulate / range_doppler_map |
bin 幅を渡さないと単位はビン番号 |
| テカり除去・多灯の法線復元 | specular_diffuse_split / photometric_stereo_robust |
遮蔽は解ける。破綻点はハイライト汚染 4/8 灯 |
| 見えない振動を測る・見せる | displacement_series / motion_magnify |
崖は 3.0619 画素(J₀ 第一零点) |
| 大きい 3D を持ち歩かない | vol_crop_domain / vol_boundary / vol_rle_encode |
1/34・19 %・1/145 |
| 骨格をグラフとして読む | apply(mask, "em_skeleton") / junctions_skeleton / skeleton_branches3d |
EM93 と画素単位で一致 |
| 1D プロファイルの解析 | derivate_funct_1d / zero_crossings_funct_1d ほか 37 op |
2D measure1d・3D probe と合流 |
| 連鎖バグを掘る | tools/chain_fuzz.py --coverage-out |
カバレッジの内訳を必ず見る |
| パイプラインを進化で作る | robust.py --problem <name> |
locked holdout とばらつきを同時に |
族ごとの詳しい使い方(単位・破綻条件・既存手法との比較)は docs/ops/<族>/guides/ に 24 本のガイドがあります。テストは 8,169 件が全緑です。
この記事の初版(9/2)から 2 日で、技術の全体像がかなり伸びました。op 数は 2D 870 → 877、3D 344 → 346(レジストリ実測)ですが、増えたのは op の数より「層」です。要点だけ、実測の数字つきで:
| 何が増えたか | 中身 | 実測 |
|---|---|---|
精度ユニオン型ストレージ PrecisionUnion |
配列をタイルに切り、各タイルを局所値域が要る最小ビット深さ {0,1,2,4,8,16} で保持(真のビットパック)。N-D 対応・save/load。apply/run_pipeline がそのまま受け、ユニオン→ユニオンで閉じる op は復号せず遅延実行(点アフィン・clip・threshold・集合演算 4 種・max/min・feature 3 種) |
ラベルボリューム (64,128,128) で 15.9x 無損失、深度 f32 で 3.9x、ディスク 378x。threshold 後 616x、集合演算は dense 比 ~12x 速く結果 400〜1300x 小。自然画像では 0.98x で勝たない(正直に報告) |
| exact geometry predicates | orient2d/orient3d/incircle/insphere を Shewchuk 流 2 段適応(float フィルタ → Fraction 厳密)。stdlib+numpy のみ |
naive float は線上補間点で 約 19% 誤符号、adaptive は厳密解と完全一致。凸包を堅牢化 |
robust 幾何判定 geompred |
point-in-polygon/tetrahedron/polytope(内外 3 値)、Delaunay 検査、メッシュ向き検査 | near-edge で naive winding が 8.64% 食い違う |
| 実解剖の手骨格 | MyoSuite myo_sim(Apache-2.0)の骨メッシュ 27 個を MJCF から stdlib で組み立て | MuJoCo FK と 6e-11 m で一致、指長順は解剖学どおり(上の手骨 hero) |
| レンダラの注入口 | vertex_normals=(SDF 勾配法線)・vertex_albedo=(頂点色) |
この記事の hero と改善過程がそのもの |
| 画像点検 | 232 アセットを寸法表→実画像で点検 | hero 3 点を 1280px に、手骨を実骨格に |
| 構造化光スキャナ | absolute_phase(粗い絶対推定で 2π 次数を確定)+ triangulate_column(視線 × コラム平面、閉形式)。相補 Gray + 位相シフトの撮影合成から復号・三角測量まで op で閉じる |
静物(奥行き 102 mm)で RMSE 0.036 mm・中央値 0.017 mm、Gray 復号の誤り 0/36,011 px。零点は Gray のみ 0.073 mm・位相のみは桁違い |
読み方の変化として大事なのは 1 点だけです。「ユニオン→ユニオンで閉じる演算が勝つ」。復号して dense 配列を作る op は numpy にかないませんが、ヘッダ(定数タイル・値域)で決まる部分が大半になる演算では、メモリと速度が同時に桁で変わります。「発見ゼロ」が「未実行」でないことも、同じ日に台帳リング満杯で落ちた自分のテストを直しながら再確認しました。
次の材質拡張(鏡・ガラスのレイトレーシング、CD の回折虹、薄膜干渉、ヘアライン)は着手前です。できたら改善過程ごと、この記事に足します。
Fullseye は、説明できる古典ビジョンのアルゴリズムを「スキル」として約1000個持ち歩き、それを
を1本の型付きインターフェースの裏で選べる、numpy ネイティブの自作ライブラリです。HALCON を物差しに 42.5%(実測)、テスト 10982 件、Markdown を単一真実源にしたドキュメント体系、そして HDevelop 風の Studio。深い依存は全部オプションで、numpy + scipy だけでコアが動きます。
一番伝えたいのは、規模でも網羅率でもなく、「正直さを仕組みにする」 という姿勢です。hold-out を選択に使わない。カバレッジは実測で開示する。バグを見つけたら、それを見つけられた品質保証ごと記事に残す。派手さより、中身が説明でき、追試でき、長く保守できること ―― それを地道に積んでいます。
「公開前夜」の章に書いた CI の話も、根っこはここに繋がっています。約80件から0件まで潰す過程を隠さず載せたのは、品質保証が実際に機能している証拠を、良い数字と同じ扱いで残すという規律の実践です。
もう1つ付け加えるなら、Fullseye は産業ビジョンの系譜と Physical AI の両方に足場を持つライブラリです。「工場の検査ラインで使われてきた処理が pip 一発で」の節に書いた通り、欠陥検出・サブピクセル計測・shape matching・ブロブ解析といった検査ラインの定番は、そのまま Physical AI のロボット知覚(ばら積みピッキングの物体分離、LiDAR クラスタリング、把持点検出)にも転用できます。これは狙って両立させたというより、「型で繋がる op の体系」を1つ作った結果として、自然に両方の現場に届くようになったという言い方の方が正確です。
公開したてなので、まだ多少の不具合はあるかもしれません。それでも「まず触って、回して、確かめられる」ようには作ってあるので、気軽に使ってみてください(おかしな挙動を見つけたら Issues で教えてもらえたら喜びます)。導入は前半の「使ってみる」節から5分ほどで。いちばんおいしい使い方は Claude Code+fullseye-rag の組み合わせ(AI の道具箱化)です。Claude Code が未導入なら作者の紹介リンクからどうぞ。
次回の主役の顔見せをひとつ(クリックで動画再生):
↑ ▶ Fullseye の”お客さん第一号” evis の体そのもの ―― 700 本の腱の色を実物理再シミュレーション中の実活性(d.act)で毎フレーム更新した筋活性ヒートマップ(腕挙上→歩行追従)。これは evis 側プロジェクトの実験映像の再エンコードで、Fullseye の処理は入っていません ―― この体に「目」を供給するのが Fullseye 層③の役割です。
この記事は”地図”でした。次はこの地図の各所を歩きます。候補は:
今回、当初の予定よりだいぶ長くなりました。層①の型契約から、6つのセンサー、Studio の実務動線、AI の RAG 運用、そして CI が掘り当てた地雷まで――1本の記事に詰め込んだのは、Fullseye という1つのライブラリの中で、これらが全部同じ設計判断の上に乗っていることを、切り分けずに見せたかったからです。個々のトピックだけを見ると地味な工夫の積み重ねですが、並べてみると「正直さを構造にする」という1本の筋が通っていることが、伝わっていれば嬉しいです。
読んでくださってありがとうございました。「ここをもっと詳しく」があれば、それを次の一本にします。
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